ヒト、メディア、社会を考える

04月

Googleと20%ルール

Googleと20%ルール

書店に出向き、雑誌コーナーに行くと、平積みされた雑誌の中から、「グーグルを最強にした経済理論」というキャッチコピーが目に飛び込んできました。気になって手に取ると、ビッグデータに関する記事もあります。思わず、『2014~2015年版新しい経済の教科書』を購入してしまいました。「グーグル」と「最強にした経済理論」という二つの刺激的な言葉に反応してしまったのです。

■グーグルを最強にした経済理論?

内容は、グーグルのチーフエコノミスト、ハル・ヴァリアン氏と大阪大学准教授の安田洋祐氏との対談でした。刺激的なタイトルが付けられていたので、つい購入してしまったのですが、読んでみると、ほとんどの部分、ヴァリアン氏の来歴が語られているだけでした。

カリフォルニア州立大学の情報管理部長だったハル・ヴァリアン氏は2002年からグーグルに関わり、広告オークションの仕組み作りをしていたようです。その結果、クエリ予測モデル、広告オークション理論の構築等に関わってきたといいます。

4月20日、本日誌で、「メディアの観点から見たGoogleの決算報告」(http://katori-atsuko.com/?p=278) と題して書いたように、グーグルの2014年第1四半期の収益をみると、広告のクリック数は多いのに、それが収益につながっていませんでした。そのため発表と同時に株価が下落したぐらいです。利用者のデバイスがパソコンからスマホなどのモバイルに移ってしまっている現状で新たな課題が出てきているのです。ヴァリアン氏が理論を構築していたころとは明らかに状況が異なっています。もはや草創期に活躍したヴァリアン氏の出番はないのかもしれません。ですから、対談を読み終えても、見出しに惹かれたほどの充足感はありませんでした。

グーグルロゴ

 

■グーグルの20%ルール

むしろ、興味深かったのは、ヴァリアン氏が自分たちは20%ルールを活かしていると答えていることです。意外でした。

実は昨年、さまざまなメディアで、グーグルの20%ルールはなくなったも同然だ、というような記事が溢れていたのです。

たとえば、『WIRED』2013年8月20日号では、以下のように書かれています。

「この有名な20%ルールについて耳にすることはずっと少なくなった。「Quartz」の8月16日付の記事ではグーグルの企業文化においてこの理念は「死んだも同然」だとされている。(中略)20%ルールの本当の敵は「当たる矢が少なかった」ことだろう。同社がグーグルのサービスを何度も整理統合したり、修繕したりしているところを見ると、同社が本当に必要としているのは「焦点」なのかもしれない」

以上、詳細はこちら。http://wired.jp/2013/08/20/googles-20-percent-time-is-as-good-as-dead-because-it-doesnt-need-it-anymore/

20%ルールがグーグルを成功に導いたことは認めながらも、いまではないも同然だというわけです。このような論調の記事は多くのIT系雑誌に掲載されました。ですから、私も20%ルールはもはや機能していないのだと思っていたのです。どうやら安田氏もそのように考えていたようで、「20%ルールはなくなってきているんじゃないかという記事を読みましたが、どうでしょう」とヴァリアン氏に質問しているのです。ところが、違いました。少なくともヴァリアン氏が働くチームでは機能していたというのです。

■20%ルールはグーグルの企業文化

グーグルは20%ルールという内規を持っていました。それは、勤務時間の20%は本来の業務とは別に、自分独自のプロジェクトに使わなくてはならないというルールがあります。二村高史は著書『グーグルのすごい考え方』(2006年9月刊、三笠書房)の中で、「ここで重要なポイントは、「使ってもいい」のではなく、「使わなくてはならない」という点だ」と指摘しています。

彼は、「ある意味、これは非常に遠大な使命といっていい。考えようによっては、仕事の制約がほとんどない世界だ。あらゆることがらが仕事の対象になってしまう」と、20%ルールの背後にあるヒトを動かす仕組みに驚いています。このようなシステムの下ではヒトは突拍子もないことを考え、それを研究対象にすることができます。誰にもはばかることなく自由に発想できる環境こそがイノベーションを生み出していくのでしょう。実際、グーグルがそうです。ですから、まさに20%ルールは、自己管理、自主性を第一に考えるグーグルの企業文化の象徴だったのです。

■「Quartz」発の情報

先ほど紹介した「WIRED」の情報の元ネタは「Quartz」でした。その「Quartz」に情報提供したのはグーグル元社員だといいます。ブロガーの島田範正氏は、追随してこの件を追ったFast Company誌の記事に基づき、「会社が決めたプロジェクトだけに勤務時間の100%を使っている社員の方が評価も高く、昇給もしやすいのだとか」と書いています。

詳細はこちら。http://www.fastcompany.com/3015877/fast-feed/why-google-axed-its-20-policy

こうしてみると、グーグルの企業文化にも変化が生じている可能性が考えられます。つまり、創業時とは異なり、いまや社員53861人(2012年末)の多国籍企業です。優秀な人材を集めているとはいえ、これだけの社員を抱え、自由な企業風土を維持し続けるのは難しいのではないか、というのが浅はかな素人の見方です。グーグルが急速に発展し、さまざまな領域に進出するに伴い、社員数が激増し、いまや量が質を駆逐する域に達している可能性もないではないでしょう・・・。と思うのは、浅はかな素人の見解でしょうか。

いずれにしろ、昨年報道された「20%ルールの消滅」報道について、ヴァリアン氏は「自分のところはそうではない」と否定しました。ですから、これについての真相はわかりません。元社員がそういったからといって、真に受ける必要がないのかもしれません。元社員はグーグルで不遇だったからこそ辞職したのでしょうから。

一方、グーグルは次々と新領域を開拓し、いまやグーグル帝国ともいえるほどの力を見せつけています。20%ルールをはじめ、グーグルの企業文化がそれを支えてきたことは確かでしょう。「Quartz」のような記事が出てきたからには、内部でなんらかの変化があるのかもしれません。ですから、今後も維持できるかどうかはわかりませんが、これまでのところ、グーグルの企業文化がイノベーションを次々と生んできたといっていいでしょう。

■Googleの企業文化

グーグルには、一般常識では考えられないさまざまな企業文化があるといわれます。元はといえば、自由度が高く、研究志向の強い学生が起業した企業です。普通の企業ではないことは確かでしょう。いつの間にか、情報を軸に以下のような事業を展開しています。

グーグルがしていること

情報検索から、メール、SNS、マップ、等々、世界中のヒトが日常的にグーグルの情報サービスを利用しています。まさに、「世界中の情報を整理してみんながアクセスし便利に使えるようにする」というグーグルのミッションの成果といえます。

このようにグーグルが使命感に基づいてさまざまな事業展開を行い、次々と成功を収めていく中で、実はグーグルが意図しない巨大なパワーの保持者になってしまっているのかもしれません。そうなると今度はそのパワーのメカニズムに動かされていくようになります。やはり、今後もグーグルの動きを見逃せません(2014/4/30 香取淳子)

 

ネットはどこまで安全か:IEに脆弱性発見

IEに脆弱性発見

日経新聞は、マイクロソフト社のネット閲覧ソフト「インターネット・エクスプローラー(IE)」のバージョン6から最新版までのものに未修整の欠陥が見つかったとし、米国土安全保障省が28日、IEの使用を中止するよう警告したと報じています(日経新聞、2014年4月29日)。

IE

 

すでに米セキュリティ会社FireEyeが、この脆弱性を利用した攻撃を発見しているといいます。脆弱性自体はIE6~11に影響があるとされていますが、同社が確認している標的型攻撃ではIE9~11をターゲットにしているというのです(Internet Watch, 2014/4/28)。新しいバージョンが狙われていることがわかります。

私は日常的にIEを使って情報検索をしていますので、このニュースを知ってさっそく、Google Chromeに切り替えました。とはいえ、うっかりするとすぐIEのアイコンに手を伸ばしてしまいます。慣れているからでしょう。’お気に入り’もほとんどがIEの方に入っているので、とても不便な思いをしています。

IEはマイクロソフト社製なので、Windowsマシンには最初からこのブラウザが搭載されています。通常、搭載されているブラウザを敢えて変更することはしません。ですから、多くのヒトがこのIEを使って情報検索をしているのではないでしょうか。

■どのような攻撃なのか

いったい、どのような攻撃を受けるのでしょうか。ITメディアによると、悪用された場合、多数のユーザーが利用する正規のWebサイトを改ざんしたり、ユーザーをだましてメールなどのリンクをクリックさせたりする手口を通じて不正なコンテンツを仕込んだWebサイトを閲覧させ、リモートで任意のコードを実行される恐れがあるといいます(IT media, 2014/4/28)。

■どうすればいいのか

対策としては、IEを使うか、使わないか、選択肢は二つです。ですから、一つ目の対策としては、IE以外のブラウザ、Google ChromeやFirefoxなどを使うことになります。ただ、IEを使い続けたい場合の対策として、たとえば、以下のような方法があるようです。

①Flashプラグインを無効にする。

詳細はこちら。http://www.lifehackslite.com/hacks/2008-03/279.html

②マイクロソフトの脆弱性緩和ツールを使う。

詳細はこちら。http://news.mynavi.jp/articles/2013/11/19/emet/

ところが、サポート期間が終了したXPについては対策がないようです。以前に紹介したように、まだXPを使い続けている事業所はたくさんあります。こういうところが狙われたら、ひとたまりもありません。

マイクロソフトは5月14日に更新プログラムを提供する予定だとしていますが、それまでの期間、IEの利用者はなんらかの対策を講じなければ被害に遭う可能性が出てきています。

■ネットはどこまで安全か

インターネットの登場によって自由に時間空間を超えることができ、ヒト、モノ、情報の交流が加速しています。その一方で、何度もこのようなシステムの脆弱性をついてインターネットが悪用される案件が発生しています。その都度、更新プログラムを開発し安全性を高めていかなければなりません。ネット社会の根幹に相当するブラウザの安全が必ずしも確定してものではないことが今回の件でよくわかりました。ネットに依存した社会がどれほど不安定で、どれほどヒトを不安にさせるものであるか、改めて考えさせられました。(2014/4/29 香取淳子)

 

回転寿司とICT

おもてなしは、やはり鮨?

2014年4月23日、オバマ大統領が来日しました。安倍首相は非公式夕食会の場として、東京・銀座の鮨店「すきやばし次郎」を設定しました。日本人にとって、いざというときのおもてなしはやはり鮨なのでしょう。「すきやばし次郎」は、ミシュラン・ガイド東京版で最高の三ツ星の格付けを得ている高級鮨店です。メニューはなく、「おまかせ」で注文するシステムで、値段は一人3万円以上だそうです。

「すきやばし次郎」詳細はこちら。http://www.sushi-jiro.jp/jpn-index.html

安倍首相とオバマ大統領の約2時間半に及んだ会食は、いま懸案のTPP交渉の話題で終始したようですが、25日の共同声明では大筋合意に至りませんでした。せっかく用意した高級「鮨」の効果はなかったのでしょうか。

■回転寿司

安倍首相とオバマ大統領の鮨会食のニュースに刺激され、私も久しぶりにお鮨を食べたくなりました。とはいえ、私たち庶民にとって身近な鮨はやはり回転寿司です。たまたま神奈川県藤沢市に用事があって出かけたため、もよりの湘南台「はま寿司」に行きました。やはり家族連れが姿が目立ちましたが、土曜日だというのに客数は少なく、大丈夫かな?とちょっと不安になりました。「はま寿司」に入るのは初めてです。

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よく行く「かっぱ寿司」とは違って、注文した寿司が特急レーンで運ばれるシステムではないので、最初はまごつきました。注文した鮨もそうでない鮨も同じようにベルトコンベアに乗って流れてくるので、他人が注文した鮨を間違って取ってしまう可能性があるのです。よく見ると、注文した皿は台の上に乗っているのですが、最初はわかりません。カウンター席に座ってすぐにベルトコンベアから手に取った皿は今思えば、他人が注文した鮨だったのでしょう。大変おいしいしめさばでした。

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次に上記の注文システムを使って、おすすめの特ネタを注文しました。写真だけで判断し、なんとなくおいしそうに見えたマグロのトロを注文しました。注文した商品が届く際には、音声案内があります。同じようにベルトコンベアに乗ってきますが、注意深く確かめながら、皿を手に取りました。注文したトロですが、見ただけで時間が経っていることがわかります。表面に艶がなく乾燥しているのです。案の定、口に入れると、端の部分が乾燥して固くなっていました。吐き出しました。

これまで「かっぱ寿司」や「スシロー」などの回転寿司チェーンで何度が鮨を食べたことがありますが、一度もこのようなまずい鮨を食べたことがありませんでした。鮮度管理が徹底していたのでしょう。鮨は生ものですから、鮮度が命です。その鮮度がなく、乾燥して固くなってしまっているのですから、もはや商品とはいえません。

ですが、お店の人にクレームをつけず、そのまま他の鮨ネタに手を伸ばしました。エビ、イカ、ホタテ・・・、よく食べるネタ皿を次々と取って食べてみましたが、ホタテ以外は鮮度がよくありません。いつもは10皿は食べるのですが、お腹が空いていたので7皿は食べましたが、それ以上は食べる気がしませんでした。

支払のために会計に立ち、ふと壁側に目を向けると、以下のような表示に気づきました。

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なんと、「はま寿司のこだわり」として、ICチップを内蔵した皿を使用して鮮度管理しているというのです。だとすれば、私が注文して食べたマグロのトロは自動的にレーンから外れたものを再度、ヒトが注文皿に入れ、ベルトコンベアで流したのでしょうか。たとえICTを導入して鮮度管理をしていたとしても、ヒトがそれを戻したのではまったく意味がありません。なぜ乾燥したトロが私の席に注文皿で届いたのかわまりませんが、後味が悪く、不愉快な気分で店を出ました。

今回の件は不幸な経験でしたが、回転寿司自体はとても面白いシステムです。技術と職人技を統合しようとして日本的試みとして傑出しているのです。はたして回転寿司はどのような経過を辿って、現在の姿にまで進化してきたのでしょうか。「回転寿司の世界」vol.10から、回転寿司の歴史をざっとおさらいしてみることにしましょう。

詳細はこちら。http://www.ntt-card.com/trace_bn/vol10_201401/special/index.html

■回転寿司の黎明期

回転寿司店は、大阪の寿司職人・白石義明氏によって1958年に開設された「廻る元禄寿司1号店」が最初だといわれています。白石氏は開発の際にベルトコンベアの特許「コンベア旋回式食事台」を取得していました。ですから、当時、回転寿司市場は「元禄寿司」の独占状態だったようです。関西からやがて東日本へと発展し、仙台の屋台寿司店の江川金鐘氏が回転する中華テーブルをヒントにして回転寿司のシステムを開発していました。ところが、白石氏がすでに回転寿司の特許を取っていましたので、実用化ができず、販売契約という形を取ることになったようです。その結果、「元禄寿司」が広がっていきました。ちなみに、この「回転寿司=元禄寿司」という状況は、特許が切れる1978年まで続いたといわれています。

■大阪万博でブレイクした回転寿司

回転寿司は大阪万博で一躍、認知度を高めました。元禄寿司は万博で大阪を訪れていた多くの日本人、外国人の注目を集めました。当時、万博で出店していたのは、マクドナルド、ミスタードーナッツなどの有名外食企業でした。ところが、その中に混じって、元禄寿司はそのシステムの物珍しさから、「電気自動車」や「動く歩道」などの近未来的な展示物と同じような、未来を予感させる存在として脚光を浴びていたといわれています。ですから、万博終了後、マスコミや事業者から元禄寿司に問い合わせが殺到したそうです。

■回転寿司店の勃興

回転寿司店が次々と台頭してきたのが、1978年以降です。というのも、この年「コンベア旋回式食事台」の特許権が失効したからでした。1979年に「かっぱ寿司」、1984年に「回転寿司くら(現・くら寿司)、「すし太郎(現・スシロー)」そして、1987年に「がってん寿司」など、現在よく目にする回転寿司チェーンは実はこの時期に誕生していたのです。それぞれが起業後40年を経てもなお、事業を継続することができているのが興味深いところです。おそらく、各社それぞれ技術開発等に企業努力を怠らなかったからでしょう。

たとえば、全国的にチェーン店が増えるにつれ、寿司職人が不足するという事態が発生しました。これを契機に寿司ロボットの導入等の自動化が推進されました。安さを魅力にしている回転寿司チェーンは経費節減のため、並々ならぬ努力をしていたのです。

そればかりではありません。安全と美味しさを求め、各回転寿司店は多大な努力をしていたようです。

■回転寿司のICT戦略

いまから9年ほど前すでに酢飯はロボットが握り、仕入れや客の回転率を極限まで効率化するため、ICTが利用されていました。

スシローの場合、スシ皿にはICタグが付けられていて、センサーがそれを認識するように設定されていました。調理場で認識された後、別のセンサーで認識された際に皿がなくなっていたら、客が食べたと判断し、なくなっていなければ食べられていないことになります。いまや、スシ皿にICタグを付けるのは当たり前になっています。350メートル移動した皿は自動的に廃棄されるように設定されていたというのですが、おそらくその距離が鮮度の限界なのでしょう。

それでは、現在のスシローはどうでしょうか。

『日経情報ストラテジー』(2013年9月)によると、以下のようになっているようです。

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皿にICチップを取り付け、単品ごとに管理し、売れ筋をリアルタイムで把握し、それを需要予測に生かす。

レーンにおけるネタごとの走行距離も収集しており、ネタごとにあらかじめ決めた走行距離を過ぎれば、「鮮度が落ちた」と判断して、自動的に廃棄する仕組みも導入している。例えばまぐろであれば、350m以上が対象になる。

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7年前もこれと同様の管理が行われていました。鮮度管理の自動化は真っ先に導入しなければならないことだったからでしょう。ICタグによる管理はそのまま現在にまで引き継がれていたのです。

いまではビッグデータによってネタ毎に鮮度時間がわかっています。それに対応した機器も開発されています。ですから、以前よりも鮮度管理の仕組みが向上していることは確かです。

回転寿司はこのように技術とともに進化を遂げてきたにもかかわらず、私は乾燥しきった鮨ネタを食べる羽目になってしまいました。それは、ヒトがこの全自動技術をいっとき排除した結果だったのでしょうか、それとも、他に理由があったのでしょうか。

いずれにしても、ヒトも技術も最終的に何をしたいのかという目的が明確でなければ、この種のミスは発生しやすくなるのだという気がしました。技術が万能なのでもなく、ヒトが万能なのでもありません。ヒトが技術の支援を受けて果たそうとする目的こそが’万能’、すなわち重要なのだということを今回の件で再確認しました。(2014/4/27 香取淳子)

 

度重なるサイバー攻撃の恐れ

度重なるサイバー攻撃の恐れ

一昨日、日本企業を狙う3種類のサイバー攻撃の恐れのあることが報道されました(4月23日付日経産業新聞)。これは大変だと思っていたところ、今日(4月25日付、日経新聞)、官公庁がサイバー攻撃される恐れが出てきたと報じられています。いったい、どういうことなのでしょうか。

■企業に対する3種類の攻撃

日経産業新聞(井上英明記者)によると、日本企業は3種類のサイバー攻撃に晒されているといいます。3種類の攻撃とは、①法人向けネットバンキングから不正に送金するという攻撃、②スマートフォンを外部から操るという攻撃、③パソコンの中身を暗号化して解除の身代金をゆするという攻撃です。

法人向けのネットバンキングはIDやパスワード、電子証明書をパソコンに入力します。ウィルス「ゼウス」は取引銀行に似せた偽画面でログイン情報や電子証明書を盗み出すのだそうです。しかも、その「ゼウス」が進化してきているといいます。ウィルスに感染したコンピューターが互いにネットワーク(ボットネット)を作り、攻撃情報などを持ち合う形に進化したといわれています。

すでに日本の3万2千台のパソコンによるボットネットが確認されているのだそうです。一方、このボットネットによってスマートフォンが攻撃者に遠隔操作され、個人情報などに盗まれる可能性が出てきているといわれています。さらに、パソコンやデータをロックして身代金を要求するウィルス「ランサムウエア」日本語版が上陸しているそうです。企業の機密情報を盗み出す「標的型攻撃」を組み合わせて、企業のサーバーの機密情報を暗号化し、金銭をゆする手法が高度化していくことも考えておかなければならないのかもしれません。

この記事を担当した井上英明記者は、「姿なきサイバー攻撃者への抗戦は長期にわたり瞬発力も求められる。経営リスクとして取り組むことが欠かせない」と結んでいます。日々、便利にはなっていますが、企業も人々も目には見えない敵に日常的に怯えなければならない時代になりつつあるようです。ICTについては素人でありながら、インターネットは頻繁に使用している私など、ネットセキュリティ問題はとても深刻です。

■官公庁に対する攻撃

今日(4月25日)、報道されたのが、「ストラッツ1」にセキュリティ上の欠陥があることが判明したというものです。このソフトは、官公庁や銀行、企業などが広く利用しているもので、サポート期間は終了しているのだそうです。ですから、修正プログラムはありませんし、すでに攻撃方法がネット上で公開されているようです。ですから、早急に対策が必要だと報道されているのです。

仮に欠陥を突いてサイバー攻撃を受けた場合、サイトを動かすシステムが乗っ取られる恐れがあるのだそうです。そうなると、すべての操作ができるようになるため、情報を盗んだり、サイトを改ざん、停止したりできるようになります。ウィルスを仕掛けることで、訪問者を感染させて次の攻撃につなげることも容易になるというわけです。

ストラッツ1の欠陥による攻撃の可能性を図示すると以下のようになります。

ストラッツ1による攻撃可能性

資料:日経新聞2014年4月25日付

■指摘されていた「ストラッツ1」の欠陥

「ストラッツ1」の欠陥についての修正プログラムがないことについて、すでに2013年6月25日付日経新聞で、早急に対策を講じるよう警告が発せられていました。なぜ、それがいまごろ、改めて報道されるのでしょうか。記事をよく見ると、「攻撃の恐れ」であって、24日時点ではまだ、この欠陥を狙った不自然なアクセスは把握されていないそうです。「恐れ」があるので、警告されているのです。

■ネットユーザーはどのようにして身を守るべきか

Newsweek( April 29 & May 6, 2014)で、「ハートブリード危機に学ぶ「プログラムは穴だらけ」という記事を読みました。4月上旬に発見された暗号化プログラムの欠陥「ハートブリード」は、世界のウェブサイトの3分の2が影響を受けるとされています。深刻なセキュリティの危機が懸念されていますが、セキュリティの専門家やプログラマーは、深刻な欠陥はハートブリードだけではないと警告しているといいます。

私たちは便利で時間の節約になりますから、日常的にインターネットを使っています。ネットで買い物をし、ネットで決済をし・・、といったことを平気で行っていますが、それが実は危機に晒されているというのです。自分が被害に遭わない限り、平気でいますが、一連の記事を読む限り、薄氷の上を歩いているというのがどうやら実態のようです。ただ、私たちは専門家ではないので、どうすることもできません。たまたま被害に遭わないのはラッキーというだけなのでしょうか。

Newsweek記事の執筆者は、wifiに無防備に頼りすぎないこと、パスワードは利用するウェブサイトごとに設定し紙に書いて安全なところに保管しておく、といった注意をするだけでより安全になると書いています。とりあえずはそのような基本的なことから安全に留意するしかないのでしょう。いずれにしても、便利さと引き換えに、私たちは不安感と不信感に絶えず、さいなまれ続け、怯え続けなければならなくなるのでしょう。(2014年4月25日 香取淳子)

ICT「4つの波」の時代、到来か

2020年はICT「4つの波」の時代へ?

いつの世もメディアの開発が人々の生活に大きな変化を与え、社会を変容させてきました。ICTの進化は「ドッグイヤー」だといわれていたのが懐かしくなるほと、最近はそのスピードが速くなりました。東京五輪が開催される2020年はいったいどのような社会になっているのでしょうか。日経産業新聞(2014/4/23)は『日経コミュニケーション』2014年1月号から、2020年を予測した記事を紹介しています。

■4つのICTに席巻される市場

日経コミュニケーション編集部は、総力を結集して情報を収集し、分析した結果、2020年にはICTにおける4つの波が日本社会を大きく変容させていると結論づけています。トフラーの「第三の波」をもじったものなのでしょうか、「4つの波」とネーミングしていますが、この概念には縦断的な歴史的社会的視点が含まれていません。どうやら技術のカテゴリーを指すようですが・・・。どういうことなのか、見ていくことにしましょう。

■2020年の市場はどうなるか

日経コミュニケーション編集部は社会変革をもたらす4つのICTとして、「スマートデバイス」「スマートマシン」「ソーシャルパワー」「バーチャリゼーション」などをあげています。そして、それらのICTが2020年の市場を席巻するとしています。日経コミュニケーションが概念化した仕組みは以下のようなものになります。

図1 2020年、「スマートデバイス」「スマートマシン」「ソーシャルパワー」「バーチャリゼーション(仮想化)」の4つの波が既存マーケットを飲み込む

 

 

 

 

 

 

 

 

資料:日経新聞電子版2014年3月26日

■4つのICTとは何か

それでは、4つのICTとは具体的にどのようなものを指すのでしょうか。

①スマートデバイスは、スマートフォン、タブレット、ウェアラブル端末など。

いまでもそうですが、利用者の可処分時間を奪ってしまうほど身体密着型のメディアです。今後、注目すべきものとしては、眼鏡型端末だとされています。グーグルをはじめ多くのICT企業がこの端末の開発に取り組んでいるようです。というのも、この種の端末が利用者の視線を完全に奪ってしまえるからだそうです。

一方、センサーの集合体ともいえるスマートデバイスは、利用者の行動を予測可能あものにしる「ビッグデータ」をも生み出します。ですから、これらのビッグデータを活用したビジネスは今後、既存市場に大きな影響を与える可能性があるというのです。

ちなみに、グーグルは以下のような眼鏡型端末を開発しています。

Google Glass with frame.jpg

資料:http://www.google.com/glass/start/

いずれにしても、この種のスマートデバイスは、クラウドと大容量で低遅延のネットワークの普及、そして、半導体のさらなる小型化、省電力化などに伴い、2020年ごろにはデバイス市場で大きな存在感をしめしているのではないかと日経コミュニケーション編集部は予測しています。

②スマートマシンとは、自律的に学習し推論する機械を指すといいます。たとえば、米IBMが開発した質疑応答システムの「ワトソン」があります。これはヒトの言葉を理解し、瞬時に的確な回答を打ち出せるといいます。このマシンは2011年に米国のクイズ番組でクイズ王を破ったほど賢いといいます。すでに医療分野やコールセンターなどでの応用が始まっているといわれています。

実際、Carl Weinschenk は、「スマートマシンは、今後、ビッグデータ活用時代になると、もっと普及するだろう」と述べています。

詳細はこちら。 http://www.itbusinessedge.com/blogs/data-and-telecom/smart-machines-becoming-more-common-in-our-data-run-world.html

スマートマシンは膨大なデータから学習し、パターン認識や推論といった側面ではすでにヒトの能力をしのぎつつあるといわれています。

ですから、スマートマシンがさらに賢くなっていけば、ヒトの定型業務は奪われてしまいかねません。ますます、ヒトは今後、どうあるべきか、教育の在り方が問われていくことになりそうです。

③ソーシャルパワーとは、利用者同士の緩やかなつながりが、社会システムに大きな影響を与えるようになった社会的動きのことを指します。

たとえば、米ベンチャー企業が開発したAir bnb など、利用者同士をマッチングさせるサービスが代表例だといいます。Air bnb は2008年にサンフランシスコで起業したベンチャー企業です。使用していない不動産などをパーティや宿泊のために賃借するオンラインプラットフォームを提供しています。2012年11月までに192カ国、3万都市、25万件の目録が登録されているようです。

サービスを利用する場合、ユーザー登録、オンラインプロフィールの作成が必須で、プロフィールには過去の貸借に関するレビューも含まれるといいます。

元々、インターネットは需要と供給のマッチングサービスに適しているといわれていましたが、このサービスなどはその典型です。

詳細はこちら。https://www.airbnb.jp/

④バーチャリゼーション(仮想化)とは、一台のハード機器を仮想的に分割したり、複数の機器を統合したりできる仮想化技術のことを指すようです。そしていま、この技術がICTのあらゆる部分で利用されるようになってきているといわれています。

たとえば、グーグルは、クラウドサービスのネットワーク仮想化基盤として「Andromeda」を米国内の2つのゾーンに投入した結果、クラウドのネットワークスルートップが向上したことを報告しています。

詳細はこちら。http://googlecloudplatform.blogspot.jp/2014/04/enter-andromeda-zone-google-cloud-platforms-latest-networking-stack.html

■「4つの波」に乗れるかいなか。

こうしてみると、仮想化技術があらゆる領域に浸透していけば、利用者の利用環境はもちろんのこt、業界の構造も変容せざるをえません。

日経コミュニケーション誌の堀越功記者は、「2020年には通信インフラやデバイスを支える要素技術は、現在から一変している安納聖が高い。いち早く変化に気づき、対策を取って動き出すプレイヤーがチャンスをつかみ取れる。座して待つだけの人には、過酷な未来が待っている」と指摘しています。

昨今の急速なICTの進化を見ていると、おそらく堀越記者が指摘するような変化が2020年には訪れているのでしょう。ただ、技術は技術だけで進化はできません。利用者がいて初めて技術が進化し、ヒトの生活を変容させていくのだと思います。ですから、ICTの4つの波は先導的な役割を果たすことは確かだと思いますが、むしろ、社会変革のキーになるのは、どれほど利用者が使いやすいデバイスの開発がされるのか、サービスの開発がされるのかが重要だと思っています。

それにしても、この領域でもグーグルは最先端を走っていました。追っかけを止めるわけにはいかなくなりました。(2014/4/24 香取淳子)

 

インターネット帝国の時代?:グーグルの野望

インターネット帝国の時代?:グーグルの野望

日経産業新聞(2014年4月23日付)を読んでいて、興味深い記事を見つけました。”「次の10億人」巡り空中戦”、”グーグルvs. フェイスブック”という見出しの記事です。

日本の中だけにいるとよく見えてこないのですが、いま、ネット企業による利用者の争奪戦が展開されています。記事はグーグルとフェイスブックの戦いに焦点を当てて報告されていますが、これがなかなか面白いのです。

■グーグル vs. フェイスブック

シリコンバレーから日経産業新聞の小川義也記者は、以下のように伝えています。

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米グーグルと米フェイスブックが無人機を使って、空からインターネット接続サービスを提供する計画を相次いで打ち出した。両雄が狙うのは「ネクスト・ビリオン(次の10億人)」と呼ばれる発展途上国の中間層。ネットの覇権を懸けた巨人同士の争奪戦は、大空を舞台に新たな局面に入ろうとしている。

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フェイスブックはすでに2011年末に「その他」地域が北米、欧州、アジアを抜いています。また、グーグルは2013年、「その他」地域の売上が米国を抜きました。両社にとって「その他」地域に向けたサービスの開発は必然なのです。

ちなみに英オックスフォード大学インターネット研究所は国別にもっともよく使われているウェブサイトをマッピングした地図を公表しました。

■オックスフォード大学インターネット研究所のデータに基づく世界地図

下図は、オックスフォード大学インターネット研究所のデータに基づきマッピングした世界地図です。

A map of the most visited website, by country.

上の図は、”Age of Internet Empires: One Map With Each Country’s Favorite Website”というタイトルの記事の中で使用されていたものです。2013年10月4日付の記事で、筆者はRobinson Meyer 氏、The Atlantic誌の編集次長です。彼は英オックスフォード大学インターネット研究所が発表した世界地図を紹介し、グーグルは欧米を中心に63か国で首位、フェイスブックは中南米や中東を中心に50か国で首位だったと報告しています。

詳細はこちら。http://www.theatlantic.com/technology/archive/2013/10/age-of-internet-empires-one-map-with-each-countrys-favorite-website/280287/

私などはこの地図を見て、中国は百度(Baidu)、日本はYahooなど、ウェブサイトの利用にも国別の違いがあることに目が向いてしまいますが、世界的観点からいうと、やはり注目すべきはグーグルとフェイスブックなのでしょう。その二強が無人機を使って、通信網の整備が遅れている地域でネット接続サービスを提供するというのです。

そして、小川記者は、「グーグルとフェイスブックの空中戦の最大の舞台になりそうなのが、国内に強いプレイヤーがいないアフリカだ」と書いています。

■インターネット帝国の時代?

インターネットのウェブサイトを通し、国境を越えて情報が流通しています。おそらく、世界認識、価値観、美意識などもウェブサイトを通した情報によって形成されるようになっているのでしょう。当然、政治、経済、社会、すべてに大きな影響を与えています。

どのウェブサイトがよく利用されているのか、それが大きな意味を持つようになってきているのです。だからこそ、英オックスフォード大学インターネット研究所が研究を開始したのでしょう。すでに、利用者を巡る争奪戦がネット企業間で展開されています。まさにインターネット帝国時代の到来といっていいでしょう。

■グーグルの野望

インターネットを制覇するため、グーグルやフェイスブックなどネット企業は次世代のボリュームゾーンに向けて、食指を伸ばしています。次の主要なターゲットは発展途上国の中産階級だというわけで、彼らに向けた空からのネット接続サービスのための技術開発、関連企業の買収に動いています。

SNSを主軸にしたフェイスブックとは違って、検索エンジン、クラウド・コンピューティングを主軸に事業を拡大してきたグーグルは目に見えない力を行使するようになっていることがわかります。ますますグーグルの動きから目が離せなくなってきました。(2014/4/23 香取淳子)

 

ガルシア・マルケスと莫言

ガルシア・マルケスと莫言

今日は孔子学院で、「中国現代小説を読もう」講座がありました。授業が始まると、先生がガルシア・マルケスが亡くなりましたね、とおっしました。私も新聞を読んでそのことを知っていました。実はずいぶん前に必要があって、『物語の作り方』という本を読んだことがありました。そのガルシア・マルケスが2014年4月17日、メキシコの自宅で亡くなりました。享年87歳でした。

先生はさらに言葉を継いで、莫言はガルシア・マルケスの影響をとても受けていたのですよ、と教えてくださいました。ちょうど今、莫言の短編『拇指铐』を読んでいるところです。そこで、今日は、ガルシア・マルケスと莫言について、ちょっと考えてみたいと思います。

■莫言のスピーチ

莫言は2012年、ノーベル文学賞を受賞しました。スウェーデンアカデミーでの受賞の席で彼は「讲故事的人」(ストーリーテラー)という題のスピーチをしたそうです。このとき、彼は山東省の高密県の農村で少年時代を過ごしていますが、そこで経験した貧困、飢え、孤独などについて彼は多く語ったといいます。ですから、幼少期の経験が文学の根幹となっていることは確かなのです。

スピーチの詳細はこちら。 http://file.xdf.cn/uploads/121210/100_121210175134.pdf

実際、私がいま教室で読んでいる『拇指铐』は8歳の少年阿义が主人公の物語です。病に倒れた母を救うために薬を求めて町に出かけた少年が、親指錠をはめられてしまうという残酷な物語です。親指錠など日本では見たこともないですが、中国でもほとんど知られていないそうです。

通りすがりの人々がなんどか開錠しようと奮闘してくれるのですが、どのような方法を試みてもできず、少年は次第に疲労の極みに達してしまいます。自分ではどうすることもできない、貧しい農村の貧しい子どもだからこそ経験するような出来事なのでしょう。まさに不条理そももの、想像もできない辛い出来事が展開されていきます。意識が混濁する中で現れる幻想の世界、それこそが辛い現実を異化してくれるのでしょう・・・。

彼は故郷での経験をただ写実的に描いたのではありませんでした。いま、読んでいる短編でもそうですが、現実から空想に転化する場面が随所に描かれています。貧しさゆえに強いられる過酷な現実を幻想によって異化し、読者を奥深い精神世界に誘ってくれます。それが彼の作品を一味違うものにしているように思います。

実際、彼は幻覚現実主義の作家だといわれているようです。現実と幻想の世界を交差させて表現していくところに大きな特徴があるといわれているのです。ですから、莫言を農村作家だと強調しすぎると、そのあたりの洒脱な作風について説明がつかないのです。題材こそ幼少期の農村での経験から着想を得ていますが、その表現方法はさまざまな作品から影響を受けていたのではないでしょうか。

実は、莫言は大変な読書家で、古今東西のあらゆる小説を読んでいたといわれます。海外の作家でとくに莫言に影響を与えたのが、米国のウィリアム・フォークナーと、先日亡くなったコロンビアのガルシア・マルケスだといわれているのです。

■ガルシア・マルケスの影響

ガルシア・マルケスは1982年にノーベル文学賞を受賞しましたが、その受賞理由は、現実的なものを幻想的なものとを融合させて、豊かな表現の世界を切り開いたからだとされています。彼もやはり人口2000人ほどの寒村の生まれです。寒村での経験を想像力で補強し、豊かな作品世界を築き上げています。

代表作の『百年の孤独』は、彼の家族の話、故郷に伝わる伝承などを踏まえて構築されています。莫言も同様、幼少期の経験や故郷の話などが彼の作品世界の母体になっています。

興味深いことに、彼もまた、ノーベル賞受賞の演説で、「フォークナーが立ったのと同じ場所に立てたことはうれしい」と語っています。時代が違えば、国情も違うガルシア・マルケス(1982年受賞、コロンビア)と、莫言(2012年受賞、中国)に共通に影響を与えたのがフォークナー(1949年受賞、アメリカ)だというわけです。

時代も社会風土も異なる3人のノーベル文学賞の受賞者の共通する要素は何かといえば、農村です。フォークナーはミシシッピー州の田舎町で人生の大半を過ごし、作品の大部分はその田舎町をモデルにした架空の土地を舞台にしています。ガルシアマルケス、莫言も同様です。田舎を舞台にしているからこそ、描ける世界にこだわっているという点で共通するのです。

ちなみに、フォークナーはノーベル賞受賞に際し、次のようなスピーチをしています。

スピーチの詳細はこちら。 http://www.rjgeib.com/thoughts/faulkner/faulkner.html

ヒトとして、生きることと真摯に向き合おうとしています。

ただ、ガルシア・マルケスは、フランツ・カフカの影響も強く受けています。カフカの『変身』を読み、大きな衝撃を受けて自身の作風を確立したといわれています。ですから、莫言の、どちらかといえば素朴さの残る幻想性とはやや趣が異なるのではないかと思います。

以上、ちょっとかじっただけで、生半可なことを書いてしまいました。今日のところはこのぐらいにしておきましょう。また、気が向いたら、この領域にも踏み込んでいきたいと思います。(2014/4/22 香取淳子)

 

 

 

小保方氏ファッションが放つメッセージ

ファッションが放つメッセージ

春のサンクスフェア開催の案内ハガキが届きました。100個限定販売の指輪とペンダントが対象です。輝かしいデザインを見ていて、ふと、小保方氏の指輪を思い出しました。そこで、今日は小保方氏の論文発表時のファッションを読み解いてみたいと思います。

■当初から違和感があった「STAP細胞」案件

STAP細胞案件については発表当初から違和感がありましたので、一般紙の記事を読んだぐらいで深追いはしませんでした。割烹着、イヤリング、指輪、バッチリメーク、巻き毛の女性研究者など見たことがなかったからです。仮にこの日限りのデモンストレーション、マスコミ向けのファッションだったのだとしても、なぜ、小保方氏は同意したのでしょうか。このようなファッションで論文内容の発表をすることに抵抗を示さなかった小保方氏に研究者としての’うさんくささ’を感じていました。ですから、2月末ごろまでは興味の対象外でした。

■論文発表時の小保方氏ファッションへの違和感

正確にいうと、別の意味ではこの日のファッションには興味をそそられました。あまりにもちぐはぐでしたから、いったい誰がこのファッションを企画したのか、ということには関心が向きました。

意表を突かれた割烹着姿は、秋葉原のメイド喫茶で見受けられる「メイド服」のオジサン版ともいえます。ところが、ややカラーリングした巻き毛、バッチリメークは「メイド服」にぴったりです。そして、極めつけは、ヴィヴィアンウェストウッド(Vivienne Westwood)の指輪です。小保方氏の記者発表以来、注目を集めていますが、このファッションブランドは1970年代に前衛的な若者の間でブレークしたそうです。

■Vivienne Westwood指輪の持つ意味

このVivienne Westwoodは、1941年英ダービーシャーで生まれたヴィヴィアン・イザベル・スウィアが作ったファッション・ブランドで、前衛的なバンク好きにはカリスマ的な存在だったそうです。そして、填めていた指輪はNew Orb Poison Ring(下図)といわれるものだそうですが、その原型であるPoison Ringは、中に薬や毒を入れられるようになっている指輪で、16世紀のヨーロッパで流行し、敵に毒を盛ったり、捕虜になった際、自害するために用いたといわれています。

poison ring

 

2年前に販売終了しているこの指輪を小保方氏は填めていました。この指輪の原型であるPoison Ringには毒という名がついていますから、それなりの物語があります。専門店によると、「そのリングの中に毒を隠し持ち、もし恋人に不慮の死が訪れた際には、自分もその指輪に隠し持った毒を持ってすぐに死を選択し、恋人のもとへ旅立つ」という恋人への決意、誓いを込めて作られたという物語があるそうです。

出典:リング指輪 アンティークジュエリー専門店http://www.antique-i.net/catalog/ring/R0131V.html

■違和感の背後にある中高年男性の美意識、価値観

論文発表時の小保方氏のファッションに私は違和感を覚え、ちょっとした不快感を覚えてしまいました。おそらく、その背後に中高年男性の美意識、価値観が見え隠れしていたのを感じてしまったからだと思います。

「実験用の白衣」ではなく「割烹着」を着けた小保方氏は、「研究者」ではなく「家庭を維持する女性」を願望する男性の価値観の反映であり、バッチリメーク、カラーリングした巻き毛、ミニスカートは「セクシーな若い女性」を願望する男性の美意識の表れとみることができます。

さらに問題の指輪は、70年代のイギリスで一世風靡したファッションブランドの製品でした。3,40年ほども前の前衛的なパンクファッションの系譜を引くブランドの指輪を着用していたことからも、小保方氏のファッションには中高年男性の美意識が背後に働いていたことが推察されます。上図の形を見てもわかるように、上がとんがっており、普段は使いづらい指輪です。パーティなどで着用するにしてもよほど気をつけないと何かにひっかけてしまう恐れがあります。買っても滅多に着けることはないでしょう。ですから、若い小保方氏がはたして自分でこの指輪を購入したのかどうか疑問です。

■論文発表時のファッションが放つメッセージ

この指輪には「恋人への決意」を表すという物語がありました。そのような物語のある指輪をわざわざ論文発表時に填めていたということは、話題集め以上の大きな意味があります。この指輪を填めることが自発的なものであったにせよ、あるいは、強制されたものであったにせよ、小保方氏にとって何か問題が生じたとき、「裏切らない」「ともに死ぬ(研究者としての生命を断つ)」という決意の表明であったのでしょう。少なくともそのことを当事者たちは意識していたのではないでしょうか。

そう考えると、当事者たちは発表段階で、将来、何か問題が生じる可能性を想定していたともいえます。もっとも、そのことはこのファッションを企画したヒトだけが承知していたことなのかもしれません。何らかの事情で問題のある論文を発表せざるをえず、良心の呵責にかられてそのことを伝えようとし、敢えて研究者らしからぬファッションを小細工していたのかもしれません・・・。穿ち過ぎでしょうか。

ひょっとしたら、この奇妙なファッションは、心ある人は読み解いて欲しいという当事者からのメッセージだったのかもしれないのです。そうだとしたら、それこそ、この「STAP細胞」事件の背後で「大きな力」が働いていたと考えざるをえなくなります。・・・、また、気が向いたときに、新解釈をしてみたいと思います。(2014/4/21 香取淳子)

 

メディアの観点から見たGoogleの決算報告

Google第1四半期決算、メディアはどう伝えたか

2014年4月16日、グーグルの第1四半期決算が発表されました。興味深いことに、同じ決算内容なのにメディアによって力点の置き方が異なるのです。どう違っているのかを見てみることにしましょう。

■新聞

目についたものだけ、記事タイトルと発信者を拾ってみましょう。

●朝日新聞:「米グーグル、広告好調で過去最高益に 1-3月期決算」ニューヨーク=畑中徹

●日経新聞:「米グーグルの1~3月期、純利益3%増 ネット広告好調で」NQNニューヨーク=増永裕樹

●日経産業新聞:「グーグル、純利益3%増 1~3月 四半期で最高3520億円」シリコンバレー=小川義也

●読売新聞:「グーグル最高益更新もスマホ普及で広告単価下落」

日本のマスメディアが概してこの決算報告についてプラスの側面にウェイトを置いて報じていることがわかります。読売新聞だけが、マイナス面も追加していますが、こちらは発信者の名前がないので、通信社からの情報かもしれません。

それでは、ネットメディアはどうでしょうか。

■ネットメディア

●ITmedia:「Google、純利益は過去最高だが売上高は伸び悩み」 佐藤由紀子

●Reuter:「米グーグル第1四半期売上高は予想下回る、広告料低迷で」 ロイター

●THE WALL STREET JOURNAL:「グーグル第1四半期、増益もクリック単価低下‐時間外で株価下落」ROLFE WINKLER AND JOHN KELL

●Bloomberg:「米グーグル:1-3月期売上高は予想下回るー広告単価が低下」

ネットメディアも日本で目につくものだけを取り上げましたので、片寄りが大きいと思いますが、ロイターとブルームバーグはマイナス面に力点を置いた記事タイトルになっています。ITmediaとウォールストリートジャーナルはプラス面、マイナス面から捉えた記事タイトルでした。

いずれの記事も出典はGoogleが4月16日に発表した第1四半期の決算報告です。

Google Financial Tables balance sheet Q1 2014 の詳細はこちら。 http://investor.google.com/earnings/2014/Q1_google_earnings_tab0.html

同じソースからのニュースなのに、なぜ、このような違いが生まれたのでしょうか。

そこで、内容との関連を見ると、ポジティブな部分を強調した見出しは一般紙で見られ、内容量も少なかったのに対し、ネガティブな部分を強調した見出しは経済専門メディアで見られ、内容量も多いという特性が見受けられました。

経済専門メディアの場合、収支のバランスだけではなく、決算発表後の株価の下落なども取り上げていますから、そちらに引きずられてネガティブな見出しになった可能性があります。

■メディアの観点から見たグーグル決算発表

メディアという観点からグーグルの決算発表を報告していたのが、日経産業新聞(2014/4/18)とITmedia(2014/4/17)でした。

日経産業新聞は、株価の下落にも触れながら、モバイル向け広告がパソコン向けよりも広告単価が安いので、クリック数が増加しても収益力は相応に高まることはないという分析をしており、専門的でありながら、わかりやすかったです。しかも、最高事業責任者への電話取材で、モバイル機器には位置情報などパソコンにはない付加価値があるとし、中長期的にはモバイル広告の単価はパソコンよりも高くなるべきだという見解を引き出していたことは大変興味深く、考えさせられました。

ITmediaは、グーグルの四半期の売上高の推移をグラフ(下図)で示し、グーグルの躍進ぶりをわかりやすく表示しているのが特徴です。

 google

これを見ると、ネット広告、Google直営サイトからの収入、クラウドサービス等その他の事業、とも前期比減となっていることがわかります。2012年以降の流れとしてはすべての部門で収益を拡大させており、今後もこの傾向が続くことが予想されます。

■グーグルの多様な事業展開

検索エンジンサービスを展開してきたグーグルがいつの間にか、クラウド事業に基づく教育支援事業、OSの開発、等々、多様な事業を展開するようになっています。今期の決算ではモバイル機器のネット広告の収益性が問題になりましたが、それも、CEOがいうように、将来的には位置情報という付加価値をもつモバイル機器の広告優位性が高まってくるのかもしれません。いずれにしても、領域を超えた事業展開をするグーグルの動きには目が離せません。(2014/4/20 香取淳子)

 

Googleはイノベーションを促進するか?

Googleはイノベーションを促進するか?

安倍政権は成長戦略の一つとして、起業の開業率を現在の5%弱から倍に引き上げることを目標にしています。とはいえ、閉鎖的な日本の企業風土を見ると、それが可能なのかどうか、はなはだ心もとないといわざるをえません。これまでに何度か若手起業家が華々しくデビューしたことがありましたが、すぐに潰れてしまいました。日本には起業家を育てる風土はなく、志を持った人々にとって起業しやすい環境とはいえないのが実情です。そんな中、米グーグル出身の若手日本人が次々と起業をしているというのです。

■Google出身の若手起業家、次々と誕生

日経新聞(2014年4月18日付)は米グーグルの日本法人出身の起業家が増えていると報じていました。美容院やヨガ教室を対象に、スマホで予約を受けて管理するサービスを始めたクービック社長の倉岡寛氏、クラウド・コンピューティングを活用した会計サービスを展開するfreee CEOの佐々木大輔氏、広告関連技術のフリークアクト設立した佐藤祐介氏、ネットを通じだチケット販売・イベント管理サービスを手掛けるイベントレジストCEOの平山幸介氏、等々(下図、参照)。29歳から40歳の若手です。いったい、なぜ、グーグルはこれだけの人材を輩出することができたのでしょうか?

 

上記資料:日経新聞(2014年4月18日)より

 

■起業はGoogleの企業文化が生み出した?

この記事を書いた日経新聞の奥山和行記者は、グーグルでは起業が身近だったことに加え、グーグルの企業文化が新たな事業を興すことを後押ししたと分析しています。グーグルには、技術者が働きやすく、彼らの意欲を喚起する仕組みに大きなコストと時間を費やす企業文化があったというのです。さらに、規模の急拡大や海外対応に備えたサービスの開発がいわば前提となっているのが、グーグルの特徴だったといいます。たとえば、クービックはサービス開始直後から日本語に加え、英語と韓国語に対応していますし、イベントレジストは当初からインドネシア語を含む5か国語に対応しているようです。

■Google出身起業家の特徴

上図をみてもわかるように、グーグル出身の起業家が立ち上げているのはインターネットをベースに海外展開を目指す企業だという点に特徴があります。そもそもグーグル自体が、検索エンジンやクラウド・コンピューティング、ソフトウエア、オンライン広告などのインターネット関連のサービスや商品を提供する米の多国籍企業ですから、そこから巣立った彼らがそのような志向性を持つのも当然といえば当然のことです。そして、そのような彼らが起業したビジネスで成功を収める確率が高いということは、彼らが持つ能力や価値観、視点がいまの時代にきわめて適合的だということを示しています。

■デジタルエコノミー時代の競争

2014年3月14日、国際シンポジウム「デジタルエコノミーにおける競争政策」が開催されました。登壇者からの指摘が興味深く、考えさせられました。印象に残ったところをかいつまんで紹介することにしましょう。

たとえば、仏トゥルーズ大学のクレメール教授は「デジタルエコノミーでは起業の規模が大きくなると効率も大幅に向上する」と述べています。また、米ボストン大学のライスマン教授は「デジタル産業に移行したことで、規模の経済が働きやすくなり技術革新も激しくなった」と述べています。両者とも、デジタルエコノミーの時代には規模の経済が大きく働くようになるといっているのです。ですから、米グーグル出身の起業家たちはいずれも規模の急拡大に耐えるシステム、多言語に対応したサービスを構築したのでしょう。

クレメール教授はデジタルエコノミーでは技術革新が激しく、企業の独占はあまり長く続かないと述べ、AOLの例をあげています。私もAOLメールを使っていたことがありましたが、一時、AOLが市場を独占していたことは確かです。ところが、その後の技術革新の波に乗り切れず、独占的地位を失ってしまいました。このようにデジタルエコノミーの時代では、企業が安定して独占的な地位を占めることは難しく、競争が熾烈なものになっていくのは必至なようです。

■日本の国際競争力は?

IMD(経営開発国際研究所)の2013年世界競争力年鑑によると、日本の総合評価は24位でした。それ以前も、22位(2008年)、17位(2009年)、27位(2010年)、26位(2011年)、27位(2012年)といった具合で、予想していたよりはるかに低いものでした。(以上のデータは http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_6019129_po_074406.pdf?contentNo=1 )日本の科学技術力は世界のトップレベルだと思っていただけに、ちょっとショックでした。

ところが、研究開発投資や人材などの科学インフラの項目では日本は2位にランクされているといいます。ですから、かなり改善の余地があることは事実でしょう。とくに、企業の大学教育への評価、起業家精神などについては順位が低いといわれていますから、日本の強みを生かせるようにきめ細かく対応していく必要があるのでしょう。

■世の中のニーズとのマッチング

気になるのは、東京大学名誉教授の畑村洋太郎氏の指摘です。彼は日経新聞(2014/4/18付)で「日本には今、技術がないのに、あるかのようなイリュージョンをみんなが持っている」と指摘しています。個々の技術はあるが、世の中の要求に対応する技術がないというのです。日経新聞編集委員の賀川雅人氏は中国などの追い上げ等を踏まえ、「日本の強みを生かせないままの失速が懸念される」とし、「日本は産学連携を強化してきたが依然不十分で、一層加速する必要がある」と結論づけています。

個別にみると、日本の科学技術に優れた側面はありますが、総合的な競争力という点では評価が落ちるのです。ニーズに対応しようとする姿勢が希薄なのでしょう。その点で、米グーグル出身の起業家たちは世の中のニーズを踏まえているだけではなく、さらに、急拡大への対応、多言語への対応なども基本要素としてサービスの構築を考えています。ビジネスとして成功するのも当然だという気がします。

■世界のベンチャーに目を向けるGoogle

グーグルは自身の体質を強化するために、世界のベンチャーに目を向けているようです。イスラエルのベンチャー企業Wazeを買収しました。この企業はスマホ向け地図アプリなどを開発しています。グーグルはこの企業が開発したアプリ利用者が提供するデータに基づき、渋滞情報などを効率的に更新していく技術に自社との親和性を感じたからだといわれています。

Peter CohanはグーグルがWazeを買収した理由を四つあげています。すなわち、①Waze利用者の参加、②フェイスブックやアップルからWazeの囲い込み、③グーグルマップにはない特色がWazeにはある、④グーグルマップの代替としてWazeを利用、等々です。

 

FAIRFAX, CA - DECEMBER 13:  The Google Maps ap...

上記の写真:http://www.forbes.com/sites/petercohan/2013/06/11/four-reasons-for-google-to-buy-waze/

■グローバルな競争時代に生き残るための次世代技術

時代の潮流に乗っているグーグルは、競争力を維持するために世界に目を向けています。自社に必要な技術をもつベンチャー企業を買収するだけではなく、次世代につながる技術にまで手を伸ばそうとしているのです。なんとグーグルは2013年末にかけて8社のロボットベンチャーを買収したというのです(日刊工業新聞2014/4/18)。ロボットが次世代技術だとみなしているからでしょう。検索エンジンでスタートしたグーグルですが、時代の流れに沿って、次々と技術を手に入れ、商品化してきたことがわかります。

ロボットは情報端末でもあります。ですから、インターネット経由で家電製品にリンクし、掃除機に掃除させたり、洗濯機に洗濯させることができます。使用履歴から個人の情報を集約することもできます。このようにしてロボットが消費者からデータを収集できれば、さらなるサービスを生み出すことができるでしょう。つまり、グーグルは次世代技術をベンチャー企業から次々と買収することによって、対応しようとしているのです。

グローバルな競争時代に生き残るためにグーグルは、複層的な手段を講じています。一つは自由で新しいアイデアを創出しやすく、それを事業化しやすい企業文化を醸成していることです。実際、そのような企業風土の中からベンチャービジネスを立ち上げ、成功している人々がいます。さらには、自社内では創出できないようなビジネスについては世界中に張り巡らした探索網を通してキャッチし、買収しています。科学技術に強く、製品化に長けているだけでは不十分であることがわかります。グーグルやアマゾンなどのやり方を見ていると、英語圏であり、インターネットを開発したアメリカの強さを感じずにはいられません。(2014/4/19 香取淳子)