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ICT「4つの波」の時代、到来か

2020年はICT「4つの波」の時代へ?

いつの世もメディアの開発が人々の生活に大きな変化を与え、社会を変容させてきました。ICTの進化は「ドッグイヤー」だといわれていたのが懐かしくなるほと、最近はそのスピードが速くなりました。東京五輪が開催される2020年はいったいどのような社会になっているのでしょうか。日経産業新聞(2014/4/23)は『日経コミュニケーション』2014年1月号から、2020年を予測した記事を紹介しています。

■4つのICTに席巻される市場

日経コミュニケーション編集部は、総力を結集して情報を収集し、分析した結果、2020年にはICTにおける4つの波が日本社会を大きく変容させていると結論づけています。トフラーの「第三の波」をもじったものなのでしょうか、「4つの波」とネーミングしていますが、この概念には縦断的な歴史的社会的視点が含まれていません。どうやら技術のカテゴリーを指すようですが・・・。どういうことなのか、見ていくことにしましょう。

■2020年の市場はどうなるか

日経コミュニケーション編集部は社会変革をもたらす4つのICTとして、「スマートデバイス」「スマートマシン」「ソーシャルパワー」「バーチャリゼーション」などをあげています。そして、それらのICTが2020年の市場を席巻するとしています。日経コミュニケーションが概念化した仕組みは以下のようなものになります。

図1 2020年、「スマートデバイス」「スマートマシン」「ソーシャルパワー」「バーチャリゼーション(仮想化)」の4つの波が既存マーケットを飲み込む

 

 

 

 

 

 

 

 

資料:日経新聞電子版2014年3月26日

■4つのICTとは何か

それでは、4つのICTとは具体的にどのようなものを指すのでしょうか。

①スマートデバイスは、スマートフォン、タブレット、ウェアラブル端末など。

いまでもそうですが、利用者の可処分時間を奪ってしまうほど身体密着型のメディアです。今後、注目すべきものとしては、眼鏡型端末だとされています。グーグルをはじめ多くのICT企業がこの端末の開発に取り組んでいるようです。というのも、この種の端末が利用者の視線を完全に奪ってしまえるからだそうです。

一方、センサーの集合体ともいえるスマートデバイスは、利用者の行動を予測可能あものにしる「ビッグデータ」をも生み出します。ですから、これらのビッグデータを活用したビジネスは今後、既存市場に大きな影響を与える可能性があるというのです。

ちなみに、グーグルは以下のような眼鏡型端末を開発しています。

Google Glass with frame.jpg

資料:http://www.google.com/glass/start/

いずれにしても、この種のスマートデバイスは、クラウドと大容量で低遅延のネットワークの普及、そして、半導体のさらなる小型化、省電力化などに伴い、2020年ごろにはデバイス市場で大きな存在感をしめしているのではないかと日経コミュニケーション編集部は予測しています。

②スマートマシンとは、自律的に学習し推論する機械を指すといいます。たとえば、米IBMが開発した質疑応答システムの「ワトソン」があります。これはヒトの言葉を理解し、瞬時に的確な回答を打ち出せるといいます。このマシンは2011年に米国のクイズ番組でクイズ王を破ったほど賢いといいます。すでに医療分野やコールセンターなどでの応用が始まっているといわれています。

実際、Carl Weinschenk は、「スマートマシンは、今後、ビッグデータ活用時代になると、もっと普及するだろう」と述べています。

詳細はこちら。 http://www.itbusinessedge.com/blogs/data-and-telecom/smart-machines-becoming-more-common-in-our-data-run-world.html

スマートマシンは膨大なデータから学習し、パターン認識や推論といった側面ではすでにヒトの能力をしのぎつつあるといわれています。

ですから、スマートマシンがさらに賢くなっていけば、ヒトの定型業務は奪われてしまいかねません。ますます、ヒトは今後、どうあるべきか、教育の在り方が問われていくことになりそうです。

③ソーシャルパワーとは、利用者同士の緩やかなつながりが、社会システムに大きな影響を与えるようになった社会的動きのことを指します。

たとえば、米ベンチャー企業が開発したAir bnb など、利用者同士をマッチングさせるサービスが代表例だといいます。Air bnb は2008年にサンフランシスコで起業したベンチャー企業です。使用していない不動産などをパーティや宿泊のために賃借するオンラインプラットフォームを提供しています。2012年11月までに192カ国、3万都市、25万件の目録が登録されているようです。

サービスを利用する場合、ユーザー登録、オンラインプロフィールの作成が必須で、プロフィールには過去の貸借に関するレビューも含まれるといいます。

元々、インターネットは需要と供給のマッチングサービスに適しているといわれていましたが、このサービスなどはその典型です。

詳細はこちら。https://www.airbnb.jp/

④バーチャリゼーション(仮想化)とは、一台のハード機器を仮想的に分割したり、複数の機器を統合したりできる仮想化技術のことを指すようです。そしていま、この技術がICTのあらゆる部分で利用されるようになってきているといわれています。

たとえば、グーグルは、クラウドサービスのネットワーク仮想化基盤として「Andromeda」を米国内の2つのゾーンに投入した結果、クラウドのネットワークスルートップが向上したことを報告しています。

詳細はこちら。http://googlecloudplatform.blogspot.jp/2014/04/enter-andromeda-zone-google-cloud-platforms-latest-networking-stack.html

■「4つの波」に乗れるかいなか。

こうしてみると、仮想化技術があらゆる領域に浸透していけば、利用者の利用環境はもちろんのこt、業界の構造も変容せざるをえません。

日経コミュニケーション誌の堀越功記者は、「2020年には通信インフラやデバイスを支える要素技術は、現在から一変している安納聖が高い。いち早く変化に気づき、対策を取って動き出すプレイヤーがチャンスをつかみ取れる。座して待つだけの人には、過酷な未来が待っている」と指摘しています。

昨今の急速なICTの進化を見ていると、おそらく堀越記者が指摘するような変化が2020年には訪れているのでしょう。ただ、技術は技術だけで進化はできません。利用者がいて初めて技術が進化し、ヒトの生活を変容させていくのだと思います。ですから、ICTの4つの波は先導的な役割を果たすことは確かだと思いますが、むしろ、社会変革のキーになるのは、どれほど利用者が使いやすいデバイスの開発がされるのか、サービスの開発がされるのかが重要だと思っています。

それにしても、この領域でもグーグルは最先端を走っていました。追っかけを止めるわけにはいかなくなりました。(2014/4/24 香取淳子)

 

Googleはイノベーションを促進するか?

Googleはイノベーションを促進するか?

安倍政権は成長戦略の一つとして、起業の開業率を現在の5%弱から倍に引き上げることを目標にしています。とはいえ、閉鎖的な日本の企業風土を見ると、それが可能なのかどうか、はなはだ心もとないといわざるをえません。これまでに何度か若手起業家が華々しくデビューしたことがありましたが、すぐに潰れてしまいました。日本には起業家を育てる風土はなく、志を持った人々にとって起業しやすい環境とはいえないのが実情です。そんな中、米グーグル出身の若手日本人が次々と起業をしているというのです。

■Google出身の若手起業家、次々と誕生

日経新聞(2014年4月18日付)は米グーグルの日本法人出身の起業家が増えていると報じていました。美容院やヨガ教室を対象に、スマホで予約を受けて管理するサービスを始めたクービック社長の倉岡寛氏、クラウド・コンピューティングを活用した会計サービスを展開するfreee CEOの佐々木大輔氏、広告関連技術のフリークアクト設立した佐藤祐介氏、ネットを通じだチケット販売・イベント管理サービスを手掛けるイベントレジストCEOの平山幸介氏、等々(下図、参照)。29歳から40歳の若手です。いったい、なぜ、グーグルはこれだけの人材を輩出することができたのでしょうか?

 

上記資料:日経新聞(2014年4月18日)より

 

■起業はGoogleの企業文化が生み出した?

この記事を書いた日経新聞の奥山和行記者は、グーグルでは起業が身近だったことに加え、グーグルの企業文化が新たな事業を興すことを後押ししたと分析しています。グーグルには、技術者が働きやすく、彼らの意欲を喚起する仕組みに大きなコストと時間を費やす企業文化があったというのです。さらに、規模の急拡大や海外対応に備えたサービスの開発がいわば前提となっているのが、グーグルの特徴だったといいます。たとえば、クービックはサービス開始直後から日本語に加え、英語と韓国語に対応していますし、イベントレジストは当初からインドネシア語を含む5か国語に対応しているようです。

■Google出身起業家の特徴

上図をみてもわかるように、グーグル出身の起業家が立ち上げているのはインターネットをベースに海外展開を目指す企業だという点に特徴があります。そもそもグーグル自体が、検索エンジンやクラウド・コンピューティング、ソフトウエア、オンライン広告などのインターネット関連のサービスや商品を提供する米の多国籍企業ですから、そこから巣立った彼らがそのような志向性を持つのも当然といえば当然のことです。そして、そのような彼らが起業したビジネスで成功を収める確率が高いということは、彼らが持つ能力や価値観、視点がいまの時代にきわめて適合的だということを示しています。

■デジタルエコノミー時代の競争

2014年3月14日、国際シンポジウム「デジタルエコノミーにおける競争政策」が開催されました。登壇者からの指摘が興味深く、考えさせられました。印象に残ったところをかいつまんで紹介することにしましょう。

たとえば、仏トゥルーズ大学のクレメール教授は「デジタルエコノミーでは起業の規模が大きくなると効率も大幅に向上する」と述べています。また、米ボストン大学のライスマン教授は「デジタル産業に移行したことで、規模の経済が働きやすくなり技術革新も激しくなった」と述べています。両者とも、デジタルエコノミーの時代には規模の経済が大きく働くようになるといっているのです。ですから、米グーグル出身の起業家たちはいずれも規模の急拡大に耐えるシステム、多言語に対応したサービスを構築したのでしょう。

クレメール教授はデジタルエコノミーでは技術革新が激しく、企業の独占はあまり長く続かないと述べ、AOLの例をあげています。私もAOLメールを使っていたことがありましたが、一時、AOLが市場を独占していたことは確かです。ところが、その後の技術革新の波に乗り切れず、独占的地位を失ってしまいました。このようにデジタルエコノミーの時代では、企業が安定して独占的な地位を占めることは難しく、競争が熾烈なものになっていくのは必至なようです。

■日本の国際競争力は?

IMD(経営開発国際研究所)の2013年世界競争力年鑑によると、日本の総合評価は24位でした。それ以前も、22位(2008年)、17位(2009年)、27位(2010年)、26位(2011年)、27位(2012年)といった具合で、予想していたよりはるかに低いものでした。(以上のデータは http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_6019129_po_074406.pdf?contentNo=1 )日本の科学技術力は世界のトップレベルだと思っていただけに、ちょっとショックでした。

ところが、研究開発投資や人材などの科学インフラの項目では日本は2位にランクされているといいます。ですから、かなり改善の余地があることは事実でしょう。とくに、企業の大学教育への評価、起業家精神などについては順位が低いといわれていますから、日本の強みを生かせるようにきめ細かく対応していく必要があるのでしょう。

■世の中のニーズとのマッチング

気になるのは、東京大学名誉教授の畑村洋太郎氏の指摘です。彼は日経新聞(2014/4/18付)で「日本には今、技術がないのに、あるかのようなイリュージョンをみんなが持っている」と指摘しています。個々の技術はあるが、世の中の要求に対応する技術がないというのです。日経新聞編集委員の賀川雅人氏は中国などの追い上げ等を踏まえ、「日本の強みを生かせないままの失速が懸念される」とし、「日本は産学連携を強化してきたが依然不十分で、一層加速する必要がある」と結論づけています。

個別にみると、日本の科学技術に優れた側面はありますが、総合的な競争力という点では評価が落ちるのです。ニーズに対応しようとする姿勢が希薄なのでしょう。その点で、米グーグル出身の起業家たちは世の中のニーズを踏まえているだけではなく、さらに、急拡大への対応、多言語への対応なども基本要素としてサービスの構築を考えています。ビジネスとして成功するのも当然だという気がします。

■世界のベンチャーに目を向けるGoogle

グーグルは自身の体質を強化するために、世界のベンチャーに目を向けているようです。イスラエルのベンチャー企業Wazeを買収しました。この企業はスマホ向け地図アプリなどを開発しています。グーグルはこの企業が開発したアプリ利用者が提供するデータに基づき、渋滞情報などを効率的に更新していく技術に自社との親和性を感じたからだといわれています。

Peter CohanはグーグルがWazeを買収した理由を四つあげています。すなわち、①Waze利用者の参加、②フェイスブックやアップルからWazeの囲い込み、③グーグルマップにはない特色がWazeにはある、④グーグルマップの代替としてWazeを利用、等々です。

 

FAIRFAX, CA - DECEMBER 13:  The Google Maps ap...

上記の写真:http://www.forbes.com/sites/petercohan/2013/06/11/four-reasons-for-google-to-buy-waze/

■グローバルな競争時代に生き残るための次世代技術

時代の潮流に乗っているグーグルは、競争力を維持するために世界に目を向けています。自社に必要な技術をもつベンチャー企業を買収するだけではなく、次世代につながる技術にまで手を伸ばそうとしているのです。なんとグーグルは2013年末にかけて8社のロボットベンチャーを買収したというのです(日刊工業新聞2014/4/18)。ロボットが次世代技術だとみなしているからでしょう。検索エンジンでスタートしたグーグルですが、時代の流れに沿って、次々と技術を手に入れ、商品化してきたことがわかります。

ロボットは情報端末でもあります。ですから、インターネット経由で家電製品にリンクし、掃除機に掃除させたり、洗濯機に洗濯させることができます。使用履歴から個人の情報を集約することもできます。このようにしてロボットが消費者からデータを収集できれば、さらなるサービスを生み出すことができるでしょう。つまり、グーグルは次世代技術をベンチャー企業から次々と買収することによって、対応しようとしているのです。

グローバルな競争時代に生き残るためにグーグルは、複層的な手段を講じています。一つは自由で新しいアイデアを創出しやすく、それを事業化しやすい企業文化を醸成していることです。実際、そのような企業風土の中からベンチャービジネスを立ち上げ、成功している人々がいます。さらには、自社内では創出できないようなビジネスについては世界中に張り巡らした探索網を通してキャッチし、買収しています。科学技術に強く、製品化に長けているだけでは不十分であることがわかります。グーグルやアマゾンなどのやり方を見ていると、英語圏であり、インターネットを開発したアメリカの強さを感じずにはいられません。(2014/4/19 香取淳子)

 

Google :日本の大学教育に参入

Google :日本の大学教育に参入

このブログでは今月に入ってから、次々とGoogleが様々なレベルで日本の教育に参入していることを報告してきました。就学前児童に対するもの、義務教育レベルの子どもたちに対するもの、通信制高校レベルの生徒に対するもの、いずれも、クラウド・コンピューティングシステムを使って、オンライン教育を実施するものでした。

「iPadとアプリゼミ」(4月11日)、「学びのイノベーション」(4月14日)、「Google:日本のICT教育支援」(4月15日)、「Google Appsで全面ネット制高校」(4月16日)、等々。

まだ始まったばかりなので、どのような結果を生むのかはわかりませんが、子どもについて実証研究を行ったところ、子どもたちが自発的に授業に参加している、楽しみながら学習に取り組んでいる、等々のpositiveな反応、国語については施行後の成績が上昇したという結果が得られています。

この流れでいえば、大学教育に取り込まれるのは時間の問題でしたが、案の定、今年の4月から京都大学でGoogleが関与するedXを使ったシステムでオンライン教育が行われました。

■MOOC と大学教育

いわゆるMOOC (Massive Open Online Courses) と呼ばれるオンライン教育システムの中で大学教育を対象にしたものとしては、Coursera や edX があります。大学講義系のMOOCは、大学としてプラットフォームに参加し、プログラムを提供しているので、基本的に教授が自分でコースを開設することは難しいといわれています。

日本の大学でMOOCに最初に参画したのは東京大学で、Courseraのプラットフォームで行いました。2013年9月に第一弾として「From the Big Bang to Dark Energy」、その後、第二弾として「Conditions of War and Peace」が提供されました。

東京大学によると、このオンライン授業は、「世界150ヵ国以上から8万人以上が登録し、約5400人が修了」したということでした。2014年度はさらに、経済学分野、情報学分野の2講座を新規に設定し、Courseraで開講する予定なのだそうです。

この記者発表ではさらに、東大では、このMOOC提供の取り組みを進展させるために、ハーバード大学とマサチューセッツ工科大学(以下MIT)が出資して設立されたMOOCプラットフォームのedXと配信協定を締結し、2014年秋から提供することを伝えています。

詳細はこちら。 http://www.u-tokyo.ac.jp/public/public01_260218_j.html

この記者発表では東大が2014年からedXでオンライン授業を開始することが明らかになりました。2013年に東大はCourseraでオンライン授業を開始したにもかかわらず、2014年からはedXでも始めるというのです。

■京都大学で始まったMOOC:edX

2014年4月10日から京都大学で生命科学のオンライン講義が開始されました。edXをプラットフォームにしたオンライン講義は日本ではこれが初めてです。提供されるのは、京大の上杉志成教授による「生命の科学」という授業でした。

講義の詳細はこちら。

https://www.edx.org/course/kyotoux/kyotoux-001x-chemistry-life-858#.U1D2rSyKDuh

英語を聞き取りにくい学生のために字幕付き、速度調節といった補助機能も装備されていたようです。そのせいか、受講学生の反応もよく、「How exciting!」 とツィッターで書いているほどです。

このedXは、米ハーバード大学、米マサチューセッツ工科大学が設立した非営利組織が運営するものです。米カリフォルニア大学バークレー校、米ジョージタウン大学がすでに講義を提供していますが、アジアでは京都大学、北京大学、精華大学、ソウル大学などが参加しています。

大学教育に向けたMOOCのプラットファームとしては、Coursera と edX があります。これらがどのように違うのか、見てみることにしましょう。

■Coursera と edX

北海道大学の重田准教授によると、Courseraの受講者が400万人以上、 edXの受講生は120万人だそうです。設立されて間もないにもかかわらず、大規模な人数の参加がみられます。なぜ、急激に普及してきたのでしょうか。

Kisobiファウンダーの浦部洋一氏はその原因を以下のように考察しています。

*********

・大学の授業内容を、誰でも受講可能にしている。

・基本的いん、無料で受講できる(修了認定証などは有料の場合がある)

・講義画面を公開するだけではなく、レポートを提出したり、コミュニティで議論したり、実際のクラスに近い仕組みを提供している。

・多くの大学が参加しており、講義の種類と量が増えている。

・インターネットの高速通信や、ノートPC、タブレット端末の普及、などオンライン学習に適したインフラが整ってきた。

・クラウドなどのIT技術の進化により、動画の配信やWebサイト運営のコストが大幅に下がった。

・MOOCsベンチャーをVCが支援しており、各社サービスが充実している。

*********  以上。 詳細はこちら。 http://kisobi.jp/online-learning/3604

このように利点は多いのですが、浦部氏は次のようにMOOCsの課題を指摘しています。

********

①ビジネスとして成立するのか?

②MOOCsの授業の学習効果は低いのではないか?

******* 以上。   詳細はこちら。 http://kisobi.jp/online-learning/3604

まだまだ始まったばかりのMOOCsであるが、世界の著名大学がこの方向で動いているので、日本の大学もこの流れに乗らざるをえなくなると思います。日本でもまずは東大、京大といったトップ校から開始されています。

京都大学の授業に対する学生の反応から明らかになったように、字幕や速度調節など、英語を聞き取りにくい学生のための補助装置が装備されているようです。ですから、今後、この流れは加速していく可能性があります。

デジタル教材の無料公開、デジタル教材を使った教育環境、等々が教育の機会均等に大きく貢献することは確かです。しかも、これはグローバルな展開が可能です。環境整備が整えば、意欲の有無が学習機会の多寡にこれまで以上に大きく影響してくるでしょう。いよいよ大学教育のグローバル化の時代を迎えたのです。(2014/4/18 香取淳子)

 

Google Apps で全面ネット制高校

Google: 全面ネット制高校

■全面ネット制高校の誕生

産経新聞(2014年4月15日付)は、クラウド・コンピューティングなど最新のインターネット環境を全面導入した初の通信制高校が4月下旬に授業を開始すると報じています。今月開校した通信制のコードアカデミー高等学校が、米グーグルのアプリを使ってほぼすべての学習を行うというのです。

「大好きなインターネットで未来を開く」というキャッチフレーズで生徒募集をしているコードアカデミーは、長野市にある学校法人信学会が、企業向け教育ベンチャーの協力を得て設立した広域通信制・単位制課程普通高校です。この高校では、ソフトのプログラミングが必須科目になっているといいます。

コードアカデミー高等学校の詳細はこちら。 http://www.code.ac.jp/

■Google Apps とは?

前回、取り上げたのは義務教育課程の小中学校に対するICT支援でしたが、今回取り上げるのは、通信制高校に対する支援です。

授業では、情報共有のためにグーグルのソフト「Google Apps」の教育機関版を採用するのだそうです。このソフトを使い、テキストや動画を含む教材や課題、レポート提出はもちろん、複数の生徒との質疑応答もネット上で行うといいます。テレビ会議システムを使って、ライブ授業や面接指導も行いますから、一般的な通信制高校では難しかった対面指導も可能だといわれています。

GoogleAppsはGoogleのオンラインアプリケーションパックです

上の図はGoogle Appsの概念図です。メール、カレンダー、ドライブ、ドキュメント、サイト、グループ、トークなどこれまでにグーグルが進化させてきたソフトを組み込んだ統合システムだということがわかります。クラウド・コンピューティングシステムを使って、きわめて生産性の高い仕事ができるシステムを構築しているのです。

Google Appsについての詳細はこちら。 http://www.appsupport.jp/googleapps/

■反転授業とは?

具体的な進め方としては、生徒がパソコンやタブレット端末、スマートフォンで年8回の課題を受け取り、必要に応じて教師とやり取りしながら、解答を送信します。その際、いま注目されている「反転授業」が試行されるといいます。

反転授業とは、これまでのような説明型の授業をオンライン教材にして事前学習の宿題にし、説明型の授業では授業の後で宿題にされていた演習や応用課題を教室で、対面で行う学習形態のことをいうようです。

実際の授業時間では、対面であることを活かし、個々の生徒に教師が説明をしたり、普段解けないような難しい問題に挑戦する時間にしたり、グループ学習やアクティブラーニングを行ったりするといいます。

反転授業についての詳細はこちら。http://flit.iii.u-tokyo.ac.jp/seminar/001.html

■新しい試みは常に周縁から

このような形態の授業を通信制高校で4月下旬から実施するというのです。画期的なことだといわざるをえません。新しいことは周縁から生まれるといいますが、この試みも長野県の学校法人が通信制高校の場で試行されるようです。チャレンジ精神のあふれた高校生が新しい形態の授業を通して、次代を担う情報技術をしっかりと身につけ、社会をリードしていってもらいたいと思います。(2014/4/16 香取淳子)

 

Google : 日本のICT教育支援

Google : 日本のICT教育支援

情報機器の進化に合わせ、社会が大きく変化しています。それに対応して、教育内容、方法、教材も変えていこうというのが、最近の文科省をはじめとする一連の動きです。今回はNPO法人CANVASのプログラムを紹介することにしましょう。

■PEG、東京大学でキックオフイベント開催

2014年2月8日、東京大学でPEGのキックオフイベントが開催されました。PEGとは、Programming Education Gatheringの略で、6歳から15歳の子どもを対象にプログラミング学習を普及させていくことを目的にしたプロジェクトです。その主体は子ども向け参加型創造・表現活動の全国普及・国際交流を 推進するNPO法人CANVAS です。CANVASがGoogleと連携し、「コンピュータに親しもうプログラム」を立ち上げたのです。

詳細はこちら。 http://www.canvas.ws/programming/event.html

ちなみにGoogle はこの2013年10月29日、日本のICT教育を支援するため、「コンピュータに親しもう」プロジェクトを開始すると発表しています。GoogleがRaspberry Piを5000台提供し、CANVASと協力して1年で2万5000人以上の児童・生徒の参加を目指すというのです。

詳細はこちら。http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20131029/514542/

■Raspberry Pi

ここでは、Raspberry Pi や Scratch を使ったワークショップが中心になっています。義務教育の場である小中学校にはパソコンが配備されているというのに、なぜ、パソコンではなく、小型のPCボードであるRaspberry Pi を使うのでしょうか。

Raspberry Pi - Wikipedia

上の写真がRaspberry Piです。非常にシンプルなカード・サイズのコンピューターで、誰でも簡単にプログラムすることができるといわれています。それにしてもなぜ、すでにパソコンが配備されているのに、Raspberry Piなのでしょうか。

■なぜ、Raspberry Pi なのか

このPEGのワークショップを監修している阿部和弘氏に対するインタビューをみてみることにしましょう。

阿部氏はこれまでにRaspberry Pi 上でScratchを動かすワークショップを数多く実施してきたそうです。その阿部氏が経験を踏まえ、子どもたちがプログラミングを継続して学習するには、現状ではRaspberry Pi が最も適していると判断しているというのです。

彼はその理由として以下の5点を挙げています。

**********

①コスト:Raspberry Pi は他のデジタル機器に比べ非常に安価。高機能版でも3000円代から入手可能。

②基盤むき出しで提供されている:基盤がむき出しになっているので、教育向き。

③地デジ対応TVに接続して使用可能:家庭の地デジに接続可能なので、学校だけではなく、家庭でも使用できる。

④Raspberry Pi にはGPIO(汎用入出力)があること:GPIOはきわめて原始的な入出力端子なので、LED(発光ダイオード)、センサー、スイッチなどをつないで電子工作が容易にできる。

⑤自らプログラムを書けること:Raspberry Pi では子ども自身がプログラムを書いて何かを作り出す環境が整っている。Scratchなどが用意されており、それらを使ってモノ作りを体験できる。

****** 以上。

詳細はこちら。http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Interview/20140304/541114/

■主体的に学ぶとは?

たしかに、これまでの情報機器は与えられたアプリケーションを消費するだけでした。義務教育の段階で、自分でプログラムを作る機会が与えられれば、子どもたちは能動的に情報機器を活用するようになるでしょう。それこそが情報社会に適応していくための教育といえます。

阿部氏はこうも述べています。

**********

Raspberry Pi のように子どもたちが主体的に扱えるデバイスを使えることが大事だと考えている。

理想的には一人一台ということが重要だ。自分のものになれば、だれにもじゃまされずに使えるし、愛着もわく。自分のRaspberry Pi を使って何かを作ろうというモチベーションになる。

子どもにRaspberry Pi を与えるというのはLinuxワークステーションを与えることと同じであり、スキルさえあれば何でもできる。

ネットにつながってなんでもできるRaspberry Pi をもらうということは、自由を得るだけではなく相応の責任を負うことにもなる。

だからこそ、はじめは保護者やファシリテーターの目の届くところで使ってもらう必要がある。危険なものを子どもから取り上げるのではなく、その扱い方をきちんと身につけてもらおうとしている。

********* 以上。

詳細はこちら。http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Interview/20140304/541114/

このように阿部氏は、Raspberry Pi を教育で活用することの意義を説明したうえで、これを提供する先は、「Raspberry Pi を使って何かできないだろうか」という意欲を持った組織だと言明しています。

■情報(情報機器等)を生産することを学ぶ

21世紀に入って早14年目になってしまいました。この間の情報革命は驚くほどの勢いです。使い勝手がいい状況で消費者の前に登場してくるので、その仕組みがわからないまま、日々、私たちはスマホやタブレットに接触しています。

いまや仕組みがわからないまま使っていることにさほど危機感を覚えず、新しい機器の操作に慣れようとしています。はたして、それでいいのでしょうか。それこそ、情報(情報機器等を含む)を生産できる側と、ただ消費するだけの側とに分離してしまっているように思えます。

それがおそらく新たな格差の根源になっていくのでしょう。だとすれば、それこそ義務教育の段階から情報(情報機器等を含む)を生産できる能力を養うことが重要なのではないかと思います。(2014/4/15 香取淳子)

学びのイノベーション:授業の電子化

学びのイノベーション:授業の電子化

知らない間に教育現場のICT化が進んでいるようです。日経新聞(2014年4月12日付)は、「タブレットや電子黒板活用」「授業分かった、9割」との見出しをつけて文科省が出した報告書の内容を紹介しています。はたしてどのような内容だったのか、文科省のホームページを参照しながら、概観してみることにしましょう。

■実証研究の報告書

4月11日、文部科学省は電子教材を使って授業する実証研究についての報告書を出しました。今回の実証研究は教育のICT化に関するもので、2011~2013年度に、小中学校の児童・生徒約5700人を対象に実施されました。この3年間に文科省は、ICTを活用した教育の効果・影響についての検証、指導方法の開発、デジタル教科書・教材の開発などを行ってきましたが、その結果についての報告です。

たとえば、ICTを活用した指導方法の開発についてはどうなのか、報告書の概要からその一端を紹介しましょう。

■ICTを活用した指導方法の開発

これについては学習場面ごとにICTの活用を類型化し、実証実験を行っているようです。

①従来型の一斉学習については、教材、教具の電子化により、わかりやすい授業が試行されています。

②個別学習については、ⅰ習熟度に応じた個別学習、ⅱ調査活動を通し、ネットでの情報収集、写真や動画による記録、ⅲシミュレーションなどのデジタル教材を活用し、思考を深める学習、ⅳマルチメディアを活用し、資料や作品の制作、ⅴ情報端末の持ち帰りによる家庭学習、などが試行されています。

③協働学習については、ⅰグループや学級全体での発表や話し合い、ⅱ複数の意見や考えを議論して、意見を整理、ⅲグループでの分担、協働による作品の制作、ⅳ遠隔地や海外の学校等との交流授業、などが試行されています。

これはほんの一端ですが、文科省は、以上のように授業のイノベーションを通して教育改革を行い、次世代を担う人材を育成しようとしているのです。内容を見ると、これまでにいわれてきたこととそれほど大きく変わることはありませんが、「思考を深める学習」が取り上げられているのは興味深いことです。

産業化社会としてくくられることの多かった20世紀とは明らかに社会の在り方が異なってきています。学びの多様性を実現するために、教育改革、とくに、指導方法の開発は重要です。

子どもたちが今後どのような社会で生きるようになるのか、それを踏まえた上での基礎学力、教養、処理能力の育成が行われなければなりません。下図は先導的な教育ICTシステムです。

■先導的な教育ICTシステム

 

上の図は、http://www.japet.or.jp/Top/Cabinet/?action=cabinet_action_main_download&block_id=12&room_id=66&cabinet_id=1&file_id=287&upload_id=1270

図にしっかりとクラウドが示されているように、このような教育システムはクラウド・コンピューティングの技術によって支えられています。クラウドなど最先端技術によって、学校間、学校と家庭などで情報を共有し、垣根の障壁を超え、シームレスに交流できるような教育体制が構想されています。

3年間にわたる実証研究の結果、授業のICT化によりとくに国語の成績の悪い層の割合が10ポイント減少されたと報告されています。子どもたちに関心をもってもられるような授業内容にすることによって、とくに国語で効果が見られたというのです。

情報技術やメディアの発達によって、今後ますます複雑で多様な社会になっていくのだろうと思われます。それだけに、社会変容に見合った教育が必要です。教育現場では実証実験をし、その結果の検証作業を繰り返しながら、より適切な内容のものに組み替えられていくのでしょう。

どうすれば、子どもたちが社会の中で自分の居場所を見つけ、自分の能力を存分に発揮して生きていくことができるようになるのか、その基盤となる能力を養成する教育システムの重要性はますます高まってくると思います。慎重で積極的、かつ的確な教育改革を望みます。(2014/4/14 香取淳子)

 

iPadと「アプリゼミ」

iPadと「アプリゼミ」

■タブレットを活用した授業

タブレットを活用した授業を進める小中学校が増えてきているといいます。

毎日新聞電子版(4月1日付)は、多摩市立愛和小学校(旧東愛宕小学校)では新1年生に、通信教育アプリの「小学1年生講座」を授業外学習ICT化の一貫として導入すると報じています。そして、松田校長の話として以下のような話を伝えています。

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アプリゼミに取り組んでいる時間に1年生の教室に入ると「先生、見て!」とあちらこちらから声がかかります。アプリゼミは結果がすぐ可視化されるので、自身の頑張りや結果を認めて欲しいのだと思います。すごいね! と返答すれば、満面の笑みが返ってきて、そしてすぐさま次の課題に真剣に取り組み始めます。さらに子どもたちは学習結果を競いながらもお互いをリスペクトする関係性を構築することにもつながっており、驚いています。

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■iPadで引き出す子どもたちの積極性

iPadを使うと、子どもたちは授業に積極的に参加するようになり、主体的な行動を取るようになるばかりか、子ども同士が互いに競い合いながらも尊重しあうという関係を築きあえるようになると、愛和小学校の校長はその効果を報告しています。

iPadの機能からいえば、おそらくその通りなのでしょう。iPadには2,3歳の幼児さえ関心を抱くことを私は経験しています。i-phoneほど小さくなく、画面を触るだけで操作できる情報端末だからでしょう。まだ文字も数字もわからない年齢の子どもの情報欲求、探究欲求を喚起するのです。

実際、私がiPadを持っているのを見つけると、幼児はすぐさま近寄ってきて、触ろうとします。自由に触らせておくと、教えもしないのに、自分で画面をいじりながら、タップすれば画面移動できることを見つけてしまいます。直観的に操作できるというiPadの特性がその年齢の子どもをも引き付けてしまうのでしょう。だから、自分で実際にさまざまに操作することができますし、その過程で使い方をマスターしてしまうのでしょう。そうだとすると、小学校1年生という低学年でiPadを導入した授業があってもいいのではないかと思います。

■愛和小学校の事例

実は、この小学校では2013年10月から、児童1人に対し1台のiPadを貸与し、授業で活用していました。そして、2014年2月13日にはiPadを使った「授業外学習」を報道陣に公開しております。ですから、iPadを使った学習については6カ月ほどの試行期間を経ていることになります。さらに、2014年3月下旬に小学校1年生向けコンテンツの評価テストを行った上で、4月から本格的に導入しているのです。

2014年2月13日に公開した授業外学習では、通信教育アプリ「アプリゼミ」の国語と算数を取り入れ、授業を行いました。「アプリゼミ」というのは、DeNA(プラットフォーム事業とソーシャルゲーム事業を展開している会社)が開発した児童向け学習アプリです。教育とエンターテイメントを融合させ、子どもが楽しみながら自発的に学習に取り組めることをコンセプトに教材を開発したそうです。

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上記は「アプリゼミ」に収録されているコンテンツです。文字や数字、物事の関係性、物事の仕組み、等々を子どもたちが楽しみながら学ぶことができる内容になっています。まさにテレビ番組『セサミストリート』のタブレット用アプリ版といえるものです。

■『セサミストリート』の場合

『セサミストリート』は、ジョンソン政権の時代に開発された就学前の児童を対象にした教育プログラムです。

当時、アメリカでは少年非行が社会問題化していました。いくつもの研究が行われた結果、学校教育になじめなかった子どもたちが非行に走りやすく、その後も犯罪を繰り返すようになるということがわかってきたのです。つまり、子どものときに学校教育についていけず、その後、適切な高等教育を受けられないと、正規の職業に就くことができず、貧困に陥りやすくなります。その結果、犯罪に手を染めるようになりがちだという非行発生のメカニズムがわかったのです。

さらに調べると、非行に走った子どもはすでに小学校段階で学校教育に馴染めなくなっていることもわかってきました。つまり、小学校に入学する段階ですでに家庭環境の違いから学習能力に格差が生じていたのです。そこで、1964年、ジョンソン政権の時代に、「ヘッドスタートプログラム」が政府支援の下で開始されました。どうすれば、あらゆる家庭の子どもたちが「ヘッドスタート」(頭を並べて、いっせいに)学校教育に入っていけるのか。課題解決につながる実践的な研究が求められました。非行、貧困という社会問題を解決するために、さまざまな領域の研究者が関わり、大がかりなプロジェクトが展開されました。

その成果の一つが『セサミストリート』です。どの家庭にもあるテレビを使って就学前教育を行い、家庭環境の差なく、スムーズに子どもたちを学校教育に馴染めるようにするために開発された番組です。ですから、番組を見ていれば、子どもたちが文字、数字、物事の関係、仕組み、等々を自然に、確実に習得できるように制作されています。子どもたちが飽きないように、それぞれのシーンは短く、リズミカルに構成され、人形やアニメーション、自分たちと似たような年齢の子どもたちを使ってわかりやすく伝わるように工夫されています。

■子どもの自発性、主体性を中心にした教育

1980年代初に幼児とテレビの研究をしていた私は、この番組の開発に関わったハーバード大学のジェラルド・レッサー教授と久留米大学で開催された小児科学会のシンポジウムでご一緒したことがあります。子どもたちが自発的に学ぼうとする意欲を喚起するには、子どもたちが面白いと感じる内容と表現様式にしなければならないという、教育の受容者の側に立った視点が印象的でした。

就学前、あるいは就学時点で、確実に基礎学力を身につけさせようとする点で、幼児や小学生向けの「アプリゼミ」はこの『セサミストリート』に似ているように思えます。また、自発的に取り組めるよう、子どもの関心をよび、興味を持続できるような方法で情報を提供し、教育効果を高めようとしている点でも、共通していると思います。

このようなiPadを導入した授業への取り組みについて、松田校長は、「iPadを利用することで、基礎学力の向上を図るとともに、共同学習をする力やプレゼンテーション力を伸ばせる」と述べています。(『ITメディア』2014/02/14)

■タブレットによる授業方法の多様化

前回、このメディア日誌ので取り上げたように、子どものiPad使用については懸念する人々も存在します。ですが、今回取り上げたように、積極的に学習の場に取り入れようとする動きもあります。

さまざまなメディアが日常生活の中にあふれている現在、従来型の授業では子どもたちが満足しなくなっているのではないか、という思いから、子どもが自発的に取り組める授業が週に一つぐらいあってもいいのではないかと私は考えています。今後、さらに複雑になっていく社会を生きるようになる子どもたちこそ、多様な物差し、多様な人々との出会い、多様な学びの場を経験することが大切なのではないかと私は思っています。(2014/4/11 香取淳子)

 

すでに、クラウドコンピューティングの時代?

すでに、クラウドコンピューティングの時代?

■XPを使い続ける企業

今朝(3月26日)、興味深いニュースを見つけました。大阪信用金庫が3月上旬、大阪や兵庫の取引のある会社1277社に対して調査を行ったところ、いまだにXP を使用している会社が46%、そのうち、このままXPを使い続けるとした会社が53.5%にも及んでいることが判明したというのです。おそらくそれらの企業では新しく設備投資をするだけの財政的な余裕がないのでしょう。すでにWindows8になっているというのに、まだXPを使い続けざるをえないというのです。

詳細はこちら。http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140325-00000094-zdn_n-sci

■クラウドコンピューティングの恩恵をうける豪中小企業

一方、オーストラリアのACMA(The Australian Communications and Media Authority) は3月25日の短報で、オーストラリアでは中小企業がクラウドコンピューティングの恩恵を受けていることを明らかにしています。2013年6月期に実施したクラウドコンピューティング市場に関する調査結果に基づいた報告です。

私もよくわからないまま、パソコン、i-phone、i-padにクラウドをインストールしています。そして、写真だけはどのメディアでも共有できるようにしていますが、実は使い方もよく知りません。いったい、クラウドコンピューティングとは何でしょうか。Wikipediaを見ると、クラウドコンピューティングについて次のように説明しています。

*「クラウド」は「雲」の意味でコンピューターネットワークを表す。従来より「コンピュータシステムのイメージ図」ではネットワークを雲 の図で表す場合が多く、それが由来となっている。

Wikipediaではこのように説明し、クラウドコンピューティングのイメージ図として下記の図をあげています。

■クラウドコンピューティングのサービス内容

これをみると、クラウドコンピューティングで提供されるサービスは大きく分けて3種類あることがわかります。上から順にApplication、Platform、Infrastructure です。図をみると、クラウドコンピューティングがこれらのサービスを「雲」の外にあるパソコン、スマートフォン、タブレットなどを使って利用することができる仕組みであることがよくわかります。

ACMAは、2014年3月25日の報告で、オーストラリアではクラウドコンピューティングが実際に軌道に乗り始め、デジタル経済の中で重要な役割を果たしつつあると述べています。2013年6月期の調査によって、オーストラリアでは18歳以上の1400万人(全人口の80%に相当)が積極的にクラウドコンピューティングを活用していることが明らかになったというのです。これは年初比11%増に当たるといいます。また、44%の中小企業(90万社)がこの一年間、積極的にクラウドコンピューティングを活用していたと報告しています。

一般にもっとも多く利用されているのが、webメールで、前年比16%増の70%でした(下図)。そして、このwebメールこそが中小企業でもっとも多く利用されているサービスだというのです。それ以外に多く利用されているのは、ソーシャルネットワーク(62%)、オンライン上の写真保存(47%)、オンラインで文書を作成したり、共有する(40%)、オンラインでビデオを保存(12%)、オンラインでデータのバックアップ(9%)、オンライン上にファイルを格納(8%)、等々でした。

 

 

詳細はこちら。http://www.acma.gov.au/theACMA/engage-blogs/engage-blogs/researchacma/Cloud-computing-whats-all-the-fluff-about

利用者のもっとも大きな懸念はセキュリティ(52%)だそうです。中小企業が積極的にクラウドコンピューティングを活用することのメリットは、サービスに簡単に便利にアクセスできるという点で、これは36%を占めます。

一方、デメリットとしては、彼らの仕事内容に適していないというもので、これは48%を占めていました。ただ、人材、財政基盤とも大企業に比べて脆弱な中小企業にとって、クラウドが役立つ日も近いのではないかという気がします。

■中小企業にとっての利用価値

たとえば、ブランドデザイン委員会副委員長 上島 茂明氏はすでにクラウドは中小企業にとって利用価値があると指摘しています。そのメリットとして、①導入コストが安い、②導入スピードが速い、③モバイルコンピューティングとの親和性が高い、④企業の継続性対策として有効、等々をあげています。(http://www.itc-chubu.jp/directors/2012/07/post-8.html

もちろん、クラウドを活用するには、メリットだけではなくさまざまなリスクがあり、デメリットもあることに留意しなければならないでしょう。それでも、ITによって業務形態が大幅に変化している現状を見れば、導入しないことのデメリットの方が大きいのではないかと思ったりします。意思決定にスピードが要求され、次々と新しいITツールが開発されている時代です。クラウドでITインフラを安価に構築できるのなら、それに越したことはないでしょう。

それにしても、今日は興味深い一日でした。XPを使い続けざるをえない企業がまだ多数あることを知った反面、オーストラリアではクラウドコンピューティングをデジタル経済の中心的な役割を担いつつあるということも知りました。ITによる社会変革がまだまだ継続しているのです。となれば、いつでも、どこでも使えるという機能、データ保存、共有といった機能をもつクラウドは今後、さらに進展していくような気がします。安全性が確保されていけば、それこそ中小企業や個人事業者にとってきわめて有用なメディアになっていくでしょう(2014/03/26 香取淳子)