Google第1四半期決算、メディアはどう伝えたか
2014年4月16日、グーグルの第1四半期決算が発表されました。興味深いことに、同じ決算内容なのにメディアによって力点の置き方が異なるのです。どう違っているのかを見てみることにしましょう。
■新聞
目についたものだけ、記事タイトルと発信者を拾ってみましょう。
●朝日新聞:「米グーグル、広告好調で過去最高益に 1-3月期決算」ニューヨーク=畑中徹
●日経新聞:「米グーグルの1~3月期、純利益3%増 ネット広告好調で」NQNニューヨーク=増永裕樹
●日経産業新聞:「グーグル、純利益3%増 1~3月 四半期で最高3520億円」シリコンバレー=小川義也
●読売新聞:「グーグル最高益更新もスマホ普及で広告単価下落」
日本のマスメディアが概してこの決算報告についてプラスの側面にウェイトを置いて報じていることがわかります。読売新聞だけが、マイナス面も追加していますが、こちらは発信者の名前がないので、通信社からの情報かもしれません。
それでは、ネットメディアはどうでしょうか。
■ネットメディア
●ITmedia:「Google、純利益は過去最高だが売上高は伸び悩み」 佐藤由紀子
●Reuter:「米グーグル第1四半期売上高は予想下回る、広告料低迷で」 ロイター
●THE WALL STREET JOURNAL:「グーグル第1四半期、増益もクリック単価低下‐時間外で株価下落」ROLFE WINKLER AND JOHN KELL
●Bloomberg:「米グーグル:1-3月期売上高は予想下回るー広告単価が低下」
ネットメディアも日本で目につくものだけを取り上げましたので、片寄りが大きいと思いますが、ロイターとブルームバーグはマイナス面に力点を置いた記事タイトルになっています。ITmediaとウォールストリートジャーナルはプラス面、マイナス面から捉えた記事タイトルでした。
いずれの記事も出典はGoogleが4月16日に発表した第1四半期の決算報告です。
Google Financial Tables balance sheet Q1 2014 の詳細はこちら。 http://investor.google.com/earnings/2014/Q1_google_earnings_tab0.html
同じソースからのニュースなのに、なぜ、このような違いが生まれたのでしょうか。
そこで、内容との関連を見ると、ポジティブな部分を強調した見出しは一般紙で見られ、内容量も少なかったのに対し、ネガティブな部分を強調した見出しは経済専門メディアで見られ、内容量も多いという特性が見受けられました。
経済専門メディアの場合、収支のバランスだけではなく、決算発表後の株価の下落なども取り上げていますから、そちらに引きずられてネガティブな見出しになった可能性があります。
■メディアの観点から見たグーグル決算発表
メディアという観点からグーグルの決算発表を報告していたのが、日経産業新聞(2014/4/18)とITmedia(2014/4/17)でした。
日経産業新聞は、株価の下落にも触れながら、モバイル向け広告がパソコン向けよりも広告単価が安いので、クリック数が増加しても収益力は相応に高まることはないという分析をしており、専門的でありながら、わかりやすかったです。しかも、最高事業責任者への電話取材で、モバイル機器には位置情報などパソコンにはない付加価値があるとし、中長期的にはモバイル広告の単価はパソコンよりも高くなるべきだという見解を引き出していたことは大変興味深く、考えさせられました。
ITmediaは、グーグルの四半期の売上高の推移をグラフ(下図)で示し、グーグルの躍進ぶりをわかりやすく表示しているのが特徴です。
これを見ると、ネット広告、Google直営サイトからの収入、クラウドサービス等その他の事業、とも前期比減となっていることがわかります。2012年以降の流れとしてはすべての部門で収益を拡大させており、今後もこの傾向が続くことが予想されます。
■グーグルの多様な事業展開
検索エンジンサービスを展開してきたグーグルがいつの間にか、クラウド事業に基づく教育支援事業、OSの開発、等々、多様な事業を展開するようになっています。今期の決算ではモバイル機器のネット広告の収益性が問題になりましたが、それも、CEOがいうように、将来的には位置情報という付加価値をもつモバイル機器の広告優位性が高まってくるのかもしれません。いずれにしても、領域を超えた事業展開をするグーグルの動きには目が離せません。(2014/4/20 香取淳子)