ヒト、メディア、社会を考える

14日

学びのイノベーション:授業の電子化

学びのイノベーション:授業の電子化

知らない間に教育現場のICT化が進んでいるようです。日経新聞(2014年4月12日付)は、「タブレットや電子黒板活用」「授業分かった、9割」との見出しをつけて文科省が出した報告書の内容を紹介しています。はたしてどのような内容だったのか、文科省のホームページを参照しながら、概観してみることにしましょう。

■実証研究の報告書

4月11日、文部科学省は電子教材を使って授業する実証研究についての報告書を出しました。今回の実証研究は教育のICT化に関するもので、2011~2013年度に、小中学校の児童・生徒約5700人を対象に実施されました。この3年間に文科省は、ICTを活用した教育の効果・影響についての検証、指導方法の開発、デジタル教科書・教材の開発などを行ってきましたが、その結果についての報告です。

たとえば、ICTを活用した指導方法の開発についてはどうなのか、報告書の概要からその一端を紹介しましょう。

■ICTを活用した指導方法の開発

これについては学習場面ごとにICTの活用を類型化し、実証実験を行っているようです。

①従来型の一斉学習については、教材、教具の電子化により、わかりやすい授業が試行されています。

②個別学習については、ⅰ習熟度に応じた個別学習、ⅱ調査活動を通し、ネットでの情報収集、写真や動画による記録、ⅲシミュレーションなどのデジタル教材を活用し、思考を深める学習、ⅳマルチメディアを活用し、資料や作品の制作、ⅴ情報端末の持ち帰りによる家庭学習、などが試行されています。

③協働学習については、ⅰグループや学級全体での発表や話し合い、ⅱ複数の意見や考えを議論して、意見を整理、ⅲグループでの分担、協働による作品の制作、ⅳ遠隔地や海外の学校等との交流授業、などが試行されています。

これはほんの一端ですが、文科省は、以上のように授業のイノベーションを通して教育改革を行い、次世代を担う人材を育成しようとしているのです。内容を見ると、これまでにいわれてきたこととそれほど大きく変わることはありませんが、「思考を深める学習」が取り上げられているのは興味深いことです。

産業化社会としてくくられることの多かった20世紀とは明らかに社会の在り方が異なってきています。学びの多様性を実現するために、教育改革、とくに、指導方法の開発は重要です。

子どもたちが今後どのような社会で生きるようになるのか、それを踏まえた上での基礎学力、教養、処理能力の育成が行われなければなりません。下図は先導的な教育ICTシステムです。

■先導的な教育ICTシステム

 

上の図は、http://www.japet.or.jp/Top/Cabinet/?action=cabinet_action_main_download&block_id=12&room_id=66&cabinet_id=1&file_id=287&upload_id=1270

図にしっかりとクラウドが示されているように、このような教育システムはクラウド・コンピューティングの技術によって支えられています。クラウドなど最先端技術によって、学校間、学校と家庭などで情報を共有し、垣根の障壁を超え、シームレスに交流できるような教育体制が構想されています。

3年間にわたる実証研究の結果、授業のICT化によりとくに国語の成績の悪い層の割合が10ポイント減少されたと報告されています。子どもたちに関心をもってもられるような授業内容にすることによって、とくに国語で効果が見られたというのです。

情報技術やメディアの発達によって、今後ますます複雑で多様な社会になっていくのだろうと思われます。それだけに、社会変容に見合った教育が必要です。教育現場では実証実験をし、その結果の検証作業を繰り返しながら、より適切な内容のものに組み替えられていくのでしょう。

どうすれば、子どもたちが社会の中で自分の居場所を見つけ、自分の能力を存分に発揮して生きていくことができるようになるのか、その基盤となる能力を養成する教育システムの重要性はますます高まってくると思います。慎重で積極的、かつ的確な教育改革を望みます。(2014/4/14 香取淳子)