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相次ぐギャル系ファッション誌の休刊を考える。

相次ぐギャル系ファッション誌の休刊を考える。

■子ども人口の減少

今日は5月5日、子どもの日です。総務省が発表した資料によると、4月1日現在の子どもの人口は1633万人で、前年より16万人減少しております。これで、子ども人口は33年連続して減少しているというわけです。また、子ども人口の総人口に占める比率は12.8%で、こちらは40年連続して減少しています(下表、参照)。 いずれにしてもこれは子ども人口の減少に歯止めがかかっていないことを示すデータといえます。

表2 男女、年齢3歳階級別こどもの数  (平成26年4月1日現在)

出所:統計局

次に、子どもの年齢別に総人口に占める割合を見ていくと、12から14歳は2.8%、9から11歳が2.6%、6から8歳が2.5%となっております。3年毎に子ども人口を見ても、減少傾向がはっきりとしめされています。子どもマーケットが確実に縮小しつつあるのです。その影響を具体的に見てみることにしましょう。

■相次ぐギャル系ファッション誌の休刊

5月5日の日経MJを読んでいると、興味深い記事が目につきました。「ギャル系休刊相次ぐ」という見出しの記事です。記事の内容は、女性ファッション誌「egg」は7月号で休刊、「小悪魔ageha」も休刊となったというものでした。調べてみると、この雑誌を刊行していた出版社フォレストは約30億円の負債を抱え倒産し、4月15日付で事業を停止しています。帝国データバンクによると、今後は債務調査を進めるとともに、出版物等のコンテンツ売却の検討を進めるとしています。

詳細はこちら。http://www.tdb.co.jp/tosan/syosai/3901.html

■ギャル系ファッション誌

「小悪魔ageha」は2006年に創刊され、2009年にはギャル系雑誌として一世風靡したこともありました。ピーク時は約30万部を発行するほどの勢いだったようです。ところが全盛期の誌面構成を担当していた名編集長が2011年11月に去ってからはこの雑誌の衰退がはじまったと分析されています。

衰退に至る過程についての詳細はこちら。http://gigazine.net/news/20140416-infor/

小悪魔ageha 8月号の画像(プリ画像)

上の写真が「小悪魔ageha」の表紙です。表紙のキャッチコピーを見ると、「7日間で脱でぶ子」「あのコの整形級メイク全プロセス」といった具合に、ファッション以外に美容、体型改善など、身体、ファッションともに美しくなるような情報が満載されています。一時は、人気のギャル系ファッション誌だったといわれています。ギャル系ファッション誌とは、ギャル系ファッションを中心に掲載している雑誌を指します。この種の雑誌を見て、中学高校生は自分のファッションをチェックし、コーディネートをチェックします。いってみれば、中高生のファッションの指標になるような雑誌でした。購買数が上がり、多くの中高生が読むことになれば、そこに掲載されたファッションやファッション小物は彼女たちの目に留まり、購入される可能性も高くなります。当然、広告価値も高いはずでした。それがなぜ、次々と休刊に追い込まれているのでしょうか。

■なぜ次々と休刊に追い込まれているのか

5月5日付の日経MJS紙で、長田真美記者は以下のように分析しています。

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ギャル系雑誌が相次ぎ休刊になっている要因の1つにスマホの普及がある。

若い女性は雑誌に頼らず、ファッションやメークなどの最新情報をインターネットを通じて収集するようになった。大洋図書の担当者は「読者モデルのブログなどを見ることで満足している人も増えているようだ」と推測する。

出版科学研究所の調べによると、2013年の雑誌(コミック含む)の市場規模は8972億円で、ピークだった1997年と比べると、約6割に縮小。なかでも女性ファッション誌の落ち込みは特に大きい。

スマホで得られる以上の情報を提供できるかどうかが雑誌の存続を左右しそうだ。

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長田記者はギャル系ファッション誌が相次いで休刊に追い込まれている実態を報告し、その要因としてスマホを挙げています。たしかに、近年のスマホの普及を考えると、その可能性もあります。でも、はたしてそれだけなのでしょうか?

■スマホが原因?

インターネットでファッション誌を見ることができるようになると、たしかに一部の読者はネットに流れ、もはや雑誌を購入しなくなった可能性はあります。ですが、雑誌とインターネットとは本質的に異なります。雑誌は寝転がっても読むことができますが、パソコンの場合、それができません。スマホならできますが、スマホの画面は小さすぎて、ファッションを見るには不向きです。また、雑誌の場合、ページを飛ばして読むこともできますが、スマホの場合、それが非常に難しい。ですから、ファッション誌が提供していたような情報をインターネットで得ることができるようになったから、雑誌が売れなくなったとは思えないのです。

■読者モデルのブログ

大洋図書の担当者は「読者モデルのブログなどを見ることで満足している人も増えているようだ」と推測していたそうです。読者がネットに流れたのだとしたら、それはおそらく、ネットがファッションに関してこれまでにない楽しみを提供できるようになったからなのでしょう。それが読者モデルのブログでした。ですから、雑誌を購入しなくてもブログを見るだけで満足できるヒトが増えてきたからこそ、雑誌が売れなくなってきたのだという担当者の推測に私は納得できます。

ギャル系ファッション誌の読者モデルは同年齢の読者にとって憧れの的です。そのモデルがファッションに関する情報をブログで提供してくれるとしたら・・・、それこそ、これまでにない魅力的なコンテンツになったに違いありません。しかも、ブログならスマホでも十分に楽しめます。いつでもどこでもスマホなら読者モデルのブログを読むことができます。もちろん、画面が小さくてもファッションやファッション小物の値段のチェックぐらいはできるでしょう。

■子ども人口減少も要因の一つ

雑誌全般に衰退傾向が続いています。とはいえ、とくにギャル系の休刊が相次いでいる背景には何か別の要因もありそうです。中高生という狭いターゲットを対象にしているのがギャル系ファッション誌です。そこに多数の雑誌が乱立していたというのも一つの要因でしょう。さらに、ギャル系ファッション誌の市場が縮小していたというもの大きな要因ではなかったかと思うのです。さきほど総務省統計局の発表した子ども人口の構成表をみると、12~14歳、9から11歳、6から8歳、というように3歳刻みで見ると、総人口の占める比率は年齢が低くなるほど低くなっています。つまり、ギャル系ファッション誌の対象人口が年々減少しているという実態があるのです。ターゲット年齢を狭く設定した市場では、人口減少は直接市場に反映されると推測されます。したがって、ギャル系ファッション誌の相次ぐ休刊の要因の一つに、子ども人口の減少があると考えられます。5月5日の子どもの日もだんだんさびしくなっていくような気もしますが、気のせいでしょうか。(2014/5/5  香取淳子)

 

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