■失職させられた斎藤元彦氏
風邪をひいて発熱し、寝込んでいる間に、早や年末を迎えてしまいました。人々を熱狂させた知事選後、あっという間の1か月半でした。
開票日、当選確実の速報が出たときの、斎藤事務所前の様子です。
こちら →
(※ Youtube 映像より。図をクリックすると、拡大します)
押しかけた人々で通りが塞がれてしまっています。誰もがスマホを事務所前に向け、歴史的瞬間を収めようとしています。当選を決めた斎藤知事が出てきて、挨拶するのを待ち構えているのです。
大勢の県民にとって、今回の選挙は特別の意味がありました。
自分たちが選んだ知事がいつの間にか、パワハラ疑惑、おねだり疑惑で連日、テレビの餌食になっていたのです。テレビばかりではありません。週刊誌も同様の報道を繰り返し、斎藤知事はまるで稀代の極悪知事のような扱いを受けていました。
元西播磨県民局長が告発文書をマスコミ等にばら撒いたからでした。
この文書は誹謗中傷にあたるとし、知事はこの元県民局長を3か月の停職処分にしました。弁護士の意見を聞いたうえでの客観的な措置だったのですが、知事側と元県民局長との間に亀裂が生じ、6月13日、県議会は百条委員会を設置することにしました。
7月19日の百条委員会で申し開きをすることができたのですが、7月8日にこの元県民局長が自ら命を絶ってしまいました。これを受けて、県労組は知事に辞職を要求し、マスコミによる知事バッシングはさらにひどくなっていきました。
一連の流れを整理すると、以下のようになります。
こちら →
(※ 2024年7月19日、日経新聞。図をクリックすると、拡大します)
その後、9月19日には全会一致で不信任決議が可決されました。86人全員が不信任決議案に賛成し、斎藤知事は「知事失格」を宣告されることになったのです。すると、斎藤知事は、県議会を解散するのではなく、自動的に身分を失う「失職」を選択し、新たに出直し選挙に打って出たのです。
結果は、投開票日早々に当確がでるほどの勝利でした。
選挙期間中の熱気を思い返すと、当然の結果なのかもしれません。ただ、終盤になって、各組織が稲村を支持するようメンバーに要請を図り、兵庫県市長会有志の22名が共同で記者会見を開き、反斎藤を表明するほど露骨な動きを見せるようになっていました。
街頭での人気は高くでも、膨大な組織票に勝利することができるかどうか、危ぶまれていたのです。
■県民 vs 既得権益層
今回の知事選で大きな役割を果たしたのが、立花孝志氏だったということは前回、ご報告しました。
「なぜ、元西播磨県民局長は百条委員会に出席する前に命を絶ったのか」、「なぜ百条委員会は結論を出す前に全会一致で知事不信任案を可決してしまったのか」、「なぜ、自民党、立憲民主党、その他大勢の議員が知事失脚に加担したのか」。
思い返せば、不思議なことは多々ありました。ところが、誰もそれを口に出せなかったのです。それほどテレビや週刊誌、新聞等から反斎藤の報道が垂れ流されていたのです。立花氏はそれを「テレビは洗脳の道具」だと言い放ち、公開討論の場で、集まった人々に向かって、テレビに騙されるな、事実を見ていこうと訴えました。
それがユーチューバーたちのカメラで捉えられ、拡散されていきました。
立花氏にはNHK党所属の国会議員から情報が入ってきますし、兵庫県議会、あるいは、関係者からさまざまな情報がもたらされていました。それを集まった群集の前で、披露するのです。その場で質問があれば、応え、誰もが、兵庫県政について考え、意見表明できる場に変換されていきました。
今回、立花氏は当選することを目標にせず、立候補していたので、そのようなことが可能になったのです。これが、県民の目を開かせるきっかけとなったように思えます。日を次いで、討論会への参加者が増えていきました。
まさに政治の原点のようなやり取りが各所で展開されていきました。その光景をユーチューバーたちが撮影し、放送しますから、否が応でも県民の目に留まります。テレビや新聞ではない情報源からの情報を得て、県民は考えるようになります。
果たして、何が正しいのか?
結局、総合的に判断し、合理的ではないことには裏があると判断せざるをえなくなったのでしょう。
立花孝志氏もまた、公開討論の場でさまざまな事実を明らかにしていきました。結局、斎藤元彦氏は、県民のために政策を刷新し、さまざまな改革をしようとしていたのではなかったかということに気づくようになったのです。
もちろん、それまで目にしていた情報とは違っているので、県民としては、そのための検証もしていかなければなりません。SNSから情報を得、それまで得ていた情報と照合し、最終的に整合性があるかないかで判断するようになっていったのではないかと思います。
さまざまな情報を前にして混乱する県民に対し、立花孝志氏は、絶妙な対立軸を設定し、提示しました。
すなわち、「県民 vs 既得権益層」という対立軸です。
■誰が県民のための政治をしてくれるのか
今回の選挙は、税金を納めている「県民」と、その税金を何らかの形で給付してもらっている「既得権益層」との間の戦いだという枠組みをわかりやすく提示したのです。
斎藤元彦氏を知事の座から失脚させようとしたのは、天下りを禁じられた高齢幹部たち、あるいは、その予備軍であり、県庁建て替えで莫大な資金を手にすることになる事業者、あるいはその関係者であり・・・、といった具合に、それまでの兵庫県政がいかに無駄なところに税金を投入していたかが次々に明らかにされていきました。
県民全体が潤うように税金が使われているわけではなく、特定の層に利益が落ちるような政策を続けることによって、兵庫県の財政がきわめて悪化していたことも明らかになりました。
選挙の前に知るべき候補者に関する情報が、今回の選挙では、SNSを経由して、県民に届くようになっていったのです。
読売新聞社が11月17日に行った出口調査によると、前知事の斎藤元彦氏の県政を評価する人が7割を超え、そのうちの6割強が斎藤氏に投票しました。投票の際に最も参考にした情報として、「SNSや動画投稿サイト」をあげた人の9割弱が斎藤氏を支持したことがわかりました。
こちら →
(※ 読売新聞 2024年11月17日。図をクリックすると、拡大します)
この図を見ると、71%の投票者が斎藤氏の県政を支持していることがわかります。一方、県政を評価しない投票者のうち大半が稲村氏に投票しています。稲村氏は終盤になって労組や各組織が支持を表明し、最後は市長会の22名から支持を取り付けていた候補者です。自民党、立憲民主党、その他さまざまな党派、いわば既得権益層が支持していた候補者です。
興味深いことに、支持政党別に投票先を見ると、斎藤氏は各政党支持者から満遍なく投票されていることがわかります。
この図からは、今回の選挙は、「個人vs 組織」、「県民 vs 既得権益層」という対立軸の下、県民が動いていたことがわかります。
■斎藤元彦氏の政策
斎藤氏は11月17日に投開票する兵庫知事選で、斎藤元彦前知事は10月23日、選挙戦に向けて政策を発表しました。政策全体については、「これまで進めてきた改革、兵庫の躍動を止めないというのが大きなテーマ」と説明し、「未来を担う若者が輝く兵庫」「誰もが活躍できる兵庫」「安全安心に暮らせる兵庫」「県政改革等が進む兵庫」の4つの柱を建てています。(※ https://news.kobekeizai.jp/blog-entry-17979.html)
当選後、改めて、これらの政策について説明がされました。まず、第1番目の取り組みとしては、若者に向けた政策です。
こちら →
(※ https://www.youtube.com/watch?v=h6RMR6EtLBQ&t=28sより。図をクリックすると、拡大します)
県立大学の授業料等の無償化、県立高校の環境整備、毎年100人の高校生チャレンジ留学、不妊治療支援特化条例の制定、等々の政策を行うとしています。これらはほんの一例ですが、まずは少子化対策としても、子どもたちの未来に向けた取り組みとしても画期的なものだといわざるをません。
県立大学の授業料等が無料になれば、優秀な学生が県内に残り、県のために働いてくれる可能性も期待できます。また、家庭に頼っていては、日本の子どもたちが海外に留学する機会も持てない可能性がありますが、高校生の段階で世界向けたチャレンジ留学を支援するということも日本の未来と考え合わせた政策といえます。
そのための財源を確保する手段として、斎藤氏は次のような方針を明らかにしています。
こちら →
(※ https://www.youtube.com/watch?v=h6RMR6EtLBQ&t=28sより。図をクリックすると、拡大します)
1000億円かかるとされていた県庁舎の建て替えをコンパクトなものにする、効果の検証されない海外事務所の閉鎖、約1500億円の隠れ借金への対処、等々の行財政改革を通して財源をできるだけ増やし、それを必要なところに振り分けていくとしています。
■なぜ、このような政策を掲げる斎藤氏が失脚させられたのか?
まず、1000億円もかかるとされた県庁舎の建て替えです。ここには多くの事業者、県庁の職員、政治家等が関係していました。
実は、この県庁舎の建て替えは、前政権の井戸知事の時代に計画されていたものでした。
こちら → https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/PPP/news/091801298/
1000億円もかかる県庁舎は、公共建築物で最近、トラブル続きの隈研吾氏の設計によるものでした。実際、隈研吾氏のコンセプトイメージに合わせ、建物内外を緑化する方針だったようです。
こちら →
(※ 前掲。URL。図をクリックすると、拡大します)
全国でいま、隈研吾氏のデザインで建築された多数の県庁舎、市庁舎、美術館、博物館等で次々とトラブルが発覚しています。数年で木材が腐食し、見た目が悪いばかりか、安全面でも危惧されているというものです。
木材のために定期的に修理のために数億円かかり、地方自治体などの財政を圧迫しているのが実情でした。それを兵庫県も踏襲していたのです。
隈研吾氏の建築物は自治体や地方の事業者にとって継続的な収益が期待できる仕様だったからにほかなりません。兵庫県も他の自治体と同様、県議会、県庁内、政界財界にこの利権に群がろうとする勢力がはびこっていたのでしょう。
実際、斎藤氏が下野していた期間、副知事の服部洋平氏が知事職務代理者に就任していました。その間に、この県庁舎案は元に戻されていたのです。斎藤氏が選挙で勝利しなければ、兵庫県民は巨額の建築費に悩み、定期的に負担せざるをえない巨額の修理費に悩ませられ続けていたことでしょう。
斎藤氏は知事に選ばれると早々に、県庁舎案の白紙撤回を明言しています。
(※ https://www.youtube.com/watch?v=FEAuVS0ca8g)
斎藤氏が知事になる以前の兵庫県の財政状況はひどいものでした。
こちら →
(※ http://daishi100.cocolog-nifty.com/blog/2024/10/post-c3c51d.html。図をクリックすると、拡大します)
一連の事象からは、斎藤元彦氏は、前政権の腐敗ぶりにメスを入れようとしたので、失脚させられたことは明らかです。
■兵庫県庁舎建設スケジュール
なぜ、百条委員会が調査が終わるのを待つ前に全会一致で斎藤知事の不信任案を決議してしまったのか、合理的な説明もないまま、失職させてしまったことの理由もわかります。
県庁舎のスケジュールを見ると、今年中に斎藤知事をやめさせなければ、隈研吾案の建築が不可能になってしまうからでした。
隈研吾事務所が提示したスケジュールがあります。
こちら →
(※ https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/PPP/news/091801298/。図をクリックすると、拡大します)
これを見ると、2021年から2025年度中に、「本体・整備の完了」そして、「解体」にまでこぎつけなければならないことになっていたのです。
そのために、選挙では既得権益層が斎藤氏をさまざまに妨害し、当選した後も。妨害を続けています。それほど既得権益層にとって、県庁舎の建設はおいしい事業だったのでしょう。繰り返し、斎藤氏を誹謗中傷し、当選してからも、執拗に妨害工作を行っています。
それだけ兵庫県の政財界が腐食していることの証ともいえるでしょう。
立花孝志氏のような破壊力のある政治家が登場しなければ、これほどの闇が暴かれることはなかったでしょうし、県民が政治を身近なものとして真剣に考えることもなかったでしょう。
前回もいいましたが、今回の選挙で多くの県民が、「立花さんありがとう!」といい、「斎藤さんごめんなさい!」と訴えていました。
テレビや新聞、政財界の人々の言うことだけを聞いていれば、県民にとっての政治ではなく、一部の利権者にとってな政治しか行われないのは必至でした。
まだまだ目が離せません。既得権益層が、斎藤氏の失脚を願って、さまざまな仕掛けを用意しているに違いありませんから・・・。いずれにしても、今回の兵庫県知事選挙は、興味深く、身近に感じられるものでした。
なにより兵庫県民の政治に対する意識が高くなっているのではないかという気がします。
(2024/12/31 香取淳子)