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万博協会に未払い被害業者を救済する気はあるのか?

万博協会に未払い被害業者を救済する気はあるのか?

■NHKが報じた万博未払い問題

 2025年7月25日、NHKが万博未払い問題を取り上げ、放送しました。NHKの取材によると、「未払い」を訴える下請け業者はアメリカやアンゴラ、ルーマニアなど7か国のパビリオンの工事で少なくとも19社に上ることが分かりました。

こちら →
(※ https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250725/k10014874011000.html、図をクリックすると、拡大します)

 このうち、セルビアが9社、ルーマニアが5社、ドイツと中国が3社、アンゴラとマルタがいずれも2社、アメリカが1社となっていて、中には複数の国の工事で未払いを訴えている業者もいます。

 前回、ご紹介したように、多くの下請け業者に代金を支払っていなかったのが、外資系元請けのGLイベンツ・ジャパン社でした。当然のことながら、NHKもこの会社に取材していましたが、返ってきたのは、次のような返答でした。

 「相手当事者の発信により万博協会や関係者等にご心配をおかけし申し訳ございません。事実に反し、誤解を与える発言が相手当事者からあったことは容認できないと考えております。当社の立場を明らかにするため、相手当事者に対してしかるべき対応を進めております」

 まず、万博協会や関係者に詫びをいれ、そして、訴えた業者に対しては、「誤解を与える発言を容認できない」とし、「しかるべき対応を進める」と脅していることに驚かされます。

 申し開きをするわけでもなければ、謝罪をするわけでもなく、GLイベンツ・ジャパン社は、逆に、被害事業者を攻撃しているのです。このような態度から透けて見えるのは、ただ、大きな相手に対しては低姿勢で詫びを入れ、小さな相手には威嚇し、支払わないという露骨な姿勢だけでした。

 前回、前々回でご紹介した被害事業者に対しても、GLイベンツ・ジャパン社は同様の態度をみせていました。おそらく、このまま強硬姿勢で押し切るつもりなのでしょうが、これでは、業者もたまったものではありません。

 被害に遭った業者のほとんどは、これまで海外の事業者と仕事をした経験もなければ、そのノウハウもありませんでした。それが、GLイベンツ・ジャパン社の仕事を請け負ったせいで、居丈高な態度で威嚇され、未払いが有耶無耶にされそうになっているのです。
 
 被害事業者たちは現場で、何度も設計変更させられていました。工期が迫るなか、発注書もないままに、変更工事を引き受けざるをえなかったと、彼らは口々にいいます。工事を急がされ、ようやく仕上げても、GLイベンツ・ジャパン社は、仕上がりにクレームをつけて代金を支払おうとしません。

 それでも支払いを要求すると、発注書がないこと、工事内容や仕上がり具合、あるいは、下請け業者側の落ち度を見つけ、逆に、金銭を請求してくる始末です。このような対応がわかってくると、最初から、できるだけ代金を支払わないで済ませようとしているようにしかみえません。

 しっかりとした支援体制がなければ、被害業者たちでは、対応しきれないのは明らかです。

 NHKは、被害の現状を伝えた後、なぜ、このようなことが次々と起こったのか、専門家による分析とその対策を報じていました。

■専門家の分析

 筑波大学の楠茂樹教授は、次のように分析していました。

 「資材価格や人手不足による人件費の高騰の影響で工期が短くなり、契約内容を詰められないまま工事を進めたことがトラブルにつながっているのではないか。また、発注者や元請け業者が外国の政府や企業の場合、日本の取り引きの慣行や法制度に精通しておらず、契約の考え方が下請け業者と違っていた可能性がある。コミュニケーションのギャップがあったのではないか」(※ 前掲URL)

 楠氏は、まず、資材費や人件費の高騰、工期の短縮などによる契約内容の変更を確認しないまま、工事を進めたことが原因ではないかと指摘しています。次いで、海外事業者と日本の建設業者との間に、取引慣行や法制度についての認識が異なっており、それを補うためのコミュニケーションが不足していたからではないかと述べています。

 当時、円安によって建築資材が高騰しており、働き方改革や人材不足に伴い、人件費が高騰していました。ですから、確かに、それらが未払いの一因になっていたといえるでしょう。

 楠氏はさらに、海外事業者と日本の建設業者との取引慣行や法制度の違いもまた、未払いの原因だと分析していました。この点について、日本の建設業界は当初から、強く懸念し、政府が海外事業者との間の入って欲しいと要望を出していました。

 ですから、未払い問題の原因は、楠氏の分析通りなのでしょう。

 とはいえ、楠氏が指摘した原因は、二つとも、被害業者の側に責任はありません。一つは、当時の社会状況に起因するもので、被害を受けた業者になんの責任もありません。もう一つは、海外パビリオンの建設について元々、危惧されていたことで、万博協会が間に入って、対処すべき事柄でした。

 当初からトラブルを懸念されていたのが、海外パビリオンの建設でした。

■建設業者に敬遠されていたタイプAパビリオン

 そもそも発注元の海外事業者と、パビリオン建設を請け負う国内事業者との間に、トラブルが発生することは予測されていました。

 2020年の春、日本建設業連合会(日建連)関西支社幹部が、万博協会に、海外パビリオンのタイプAの発注について建設業界の懸念を伝え、積極的な関与をお願いしたいと申し入れていたほどです(※ 梅咲恵司、『東洋経済オンライン』、2023年9月5日)。

 日建連はその後、何度もタイプAの扱いについて万博協会に申し入れをしてきました。ところが、万博協会の積極的な関与はみられないまま、日が過ぎていき、やがて工期の確保が危ぶまれるようになってきました。

 それでも万博協会は依然として対応せず、工事のスケジュール管理さえ、うまくできていませんでした。工事の遅延は必然でした。

 開催すら危ぶまれるようになって、ついに、経産省が動きました。2023年6月22日、国交省に、「建設業界に対し、海外パビリオン(タイプA)建設に協力要請をしてほしい」と依頼したのです。

 この公文書では、「施工事業者の懸念に対応すべく、2025年日本万国博覧会及び監督省庁である当省が前面にたって取り組む所存である。具体的には、受注に向けた環境整備として、関係省庁の協力を得つつ、別紙のとおり対応する」と明記されており、「施工事業者による懸念事項への対応策について」というタイトルの別紙が添付されています。
(※ https://www.jafmec.or.jp/wp_jafmec/wp-content/uploads/2023/07/%E5%9B%BD%E5%9C%9F%E4%BA%A4%E9%80%9A%E7%9C%81%E3%80%90%E4%BA%8B%E5%8B%99%E9%80%A3%E7%B5%A1%E3%80%91%E6%B5%B7%E5%A4%96%E3%83%91%E3%83%93%E3%83%AA%E3%82%AA%E3%83%B3%EF%BC%88%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%97A%EF%BC%89%E5%BB%BA%E8%A8%AD%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E7%8F%BE%E7%8A%B6%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6.pdf

 未払い被害に遭った事業者たちは、国交省の協力依頼を受け、リスクの高いタイプAパビリオンの建設を引き受けていたことがわかります。この公文書を読み、改めて、万博の開催が国家事業であり、関係省庁が連携して取り組む類の事業であることを確認できました。

 さまざまなトラブルが懸念されていたタイプAパビリオンの建設を請け負った事業者たちは、国家事業だから、代金が支払われないなどということは考えもしなかったのでしょう。

 なにしろ、「政府としてかかる環境整備に取り組むので」、「海外パビリオン建設に協力してほしい」(※ 経済産業省、20230622商局第2号、令和5年6月22日)と懇願されて、引き受けていたのですから・・・。

■どのような対策が考えられるのか?

 筑波大学の楠茂樹教授は、一連の未払い問題について、主催者の博覧会協会の対応が求められるとし、次のように述べています。

 「主催者として博覧会協会は海外パビリオンの契約や工事の状況について把握しておくべき責任がある。未払いの問題が続けば今後の解体工事や次の国際的なイベントの工事に対しても疑念が持たれてしまう。“未払いの連鎖”がどこから始まり、どうすれば断ち切れるのかを検証し、国民に伝えるべきだ」(※ 前掲URL)

 確かに、万博協会は海外パビリオンの契約や工事の状況について把握しておくべきでした。被害業者たちは告訴していますから、被害の実態及びその経緯はいずれ、裁判の過程で明らかになっていくでしょう。

 特筆すべきは、海外パビリオン未払い問題のほとんどが、海外事業者を元請けに、日本の中小事業者が請け負った案件です。前回、ご紹介したGLイベンツ・ジャパン社は、被害業者が多く、未払いの経緯を知ると、組織的な事件のようにも思えます。

 ですから、万博協会をはじめ政府は、まず、GLイベンツ・ジャパン社が引き起こしている未払い問題を精査し、被害業者に寄り添って、対応していく必要があるでしょう。被害業者を救済するには、何を優先すべきかという観点が、まず、求められます。

 すでに6月23日、被害者の会は、いくつかの要望を大阪府に提出しました。それに対し、吉村知事は国内業者については早々に対処していますが、肝心の外資系元請け事業者に対しては、民間同士のトラブルだから、「民民」で解決すべきだとし、逃げの姿勢を見せています。

 しかも、業者たちにとって最も深刻な資金の立て替え要望についてはなんら回答していませんでした。海外パビリオンの建設を請け負ったせいで、倒産の危機に瀕しているというのに、万博協会は被害の実情に合わせた救済策をなんら講じていないのです。

 未払い問題の責任の所在は、一体、どこにあるのでしょうか。

■責任の所在は?

 万博協会の組織図を見ると、事務総長の石毛博行氏を筆頭に、6人の副事務総長と1人の儀典長で構成されています。

こちら → https://www.expo2025.or.jp/association/chart/
(※ 上記URLの日本語をクリックしてください)

 彼らが16の部局を所管しており、事務分掌は次のようになっています。

こちら → https://www.expo2025.or.jp/association/chart/
(※ 上記URLの日本語をクリックし、下方にスクロールし、各局・部における事務分掌一覧をごらんください)

 未払い問題に対処するのは、おそらく、総務局になるのでしょうが、部局に担当者名が書かれていないので、誰が責任者なのかわかりません。

 そこで、万博HPに記載された6人の副事務総長について調べてみると、小野平八郎氏が総務局を担当していることがわかりました。

こちら → https://www.expo2025.or.jp/wp/wp-content/themes/expo2025orjp_2022/assets/pdf/association/kitei05.pdf

 上記の担当者別に所掌事務内容が記載された表の下に、「総務局の事務については、小野平八郎副事務総長を主担当とし、髙科淳副事務総長を副担当とする」と書かれています。「総務局長」という役名ではありませんが、総務局を管轄するのが、小野平八郎氏だということになります。

■小野平八郎氏とは?

 万博協会は、2024年3月13日、万博関連費を適切に管理するため、協会内に最高財務責任者(CFO)を新設し、万博協会の理事で、副事務総長でもある小野平八郎氏を充てると発表しました(※ 読売新聞オンライン)。

 当時、万博関連費が高騰し、問題視されていました。

 たとえば、2月の理事会で、当初、809億円と想定していた運営費を、約1.4倍の1160億円に増額せざるをえなくなっていました。そこで、万博協会は、さらなる増額を防ぐため、協会内にチェック機関である「運営費執行管理会議」の新設を決め、新たにCFOを置く方針を示したのです。

 CFOは、万博に関するさまざまなプロジェクトの調整と財務管理を所管し、その立場から、収支バランスと予算の最適配分を確認する役目を担います。さらに、理事会で予算管理や財務に関する内容を説明するほか、協会内で予算管理の会議を定期的に開いたり、局長らに収支に関する報告を求め、助言したりします。

 このような役割を担うには、財務の知識や経験が必要です。小野氏の経歴から、万博運営費の執行監視には適任だと判断され、CFOに選ばれたのでしょう。

 小野氏は、平成元年に旧大蔵省(現財務省)に入省し、予算編成を担当する主計局主計官や税制改正を担う主税局審議官、大臣官房総括審議官などを歴任し、予算管理や財務に精通している人物でした。

 万博協会の体制強化のため、副事務総長が4人から1人増員された際、5人目の副事務総長として、小野氏は2023年9月に就任していました。事務能力の高さも考慮されたのでしょう。総合戦略室や経営企画室、監査室と総務局の事務も受け持っています。

 小野氏が5番目の理事として就任した時点ですでに、建設費は暴騰していました。当初予算から相当、高騰していることを報じる記事がありました。

こちら →
(※ 2023年11月29日、読売新聞オンライン、図をクリックすると、拡大します)

 2023年10月20日、万博協会の石毛博行事務総長は、会場建設費が1850億円から最大2350億円に増える見通しを公表しました。石毛氏は今年8月まで「1850億円の枠内に収める」と言い続けていました。一転して増額を打ち出したのは約2か月後で、急激な円安を念頭に「想定外でやむを得なかった」と弁解しています。

 これに対し、大阪市とともに会場建設費の3分の1を負担する大阪府の吉村洋文知事は、「管理が甘かった」と謝罪しました。会場整備の進展を把握できていなかったことの反省から、吉村氏は新たな対策も打ち出し、万博協会に対し、理事会の開催ごとに建設工事の執行状況の公開を求め、実行を確約させるようにしました(※ 前掲URL)。

 大変な責務を担わされる恰好で、小野氏は万博協会の副事務総長を引き受けたことになります。

■小野氏は「大阪、関西万博2025」をどうみていたのか

 万博の準備に当たるよう、財務省からいきなり派遣命令を受けた小野氏は、当初、戸惑いを見せていました。

 「なぜ今日本で万博を開催するのか。多額の公費を投入してまで今更万博を主催する意味がどれほどあるのか、万博自体が「終わったコンテンツ(オワコン)」ではないのか。(中略)ともかくも2025年4月からの遺漏なき開催に向けて力を尽くしてきた」(※ 『日経研月報』、2025年2‐3月号)

 小野氏は、大阪万博の副事務総長として、開催業務を担うことになったとき、まず、万博開催の意義について思い悩みました。当時、会場建設費の高騰に対し、世間から厳しい批判が寄せられていました。しかも、小野氏は万博に対して、何の予備知識もなければ、思い入れもありませんでした。

 なぜ、この時期に日本で万博を開催する必要があるのか。小野氏は、開催意義を求めて、逡巡していたようです。さまざまに考えあぐねた結果、万博のテーマが、「いのち輝く未来社会のデザイン」であることに、小野氏は万博開催の意義を見出すようになります。

 小野氏は、『日経研月報』に次ぎのように記しています。

 「「いのち」をキーワードとして、環境の問題、高齢者や障がい者を含む多様な方々が共生できる社会、平和、そしてそうした社会を実現するツールとしての未来社会におけるさまざまな技術を紹介し、考えることが目的とされている」(※ 前掲)

 「いのち」をキーワードにした「大阪、関西万博2025」こそ、未来への希望を世界に示す機会を提供できるのではないかと小野氏は考えるようになりました。世界の人々が集い、多様な価値観が交流しあい、いのちの在り方を見直す場を提供できるからでした。

 しかも、万博は、低迷している日本経済に活を入れてくれる可能性もありました。

 万博会場では、日本の企業や海外の参加国が、最先端技術を展示し、紹介します。海外の事業者との多様なビジネスチャンスも訪れるでしょう。日本企業が海外の企業と連携しながら、日本の強みを発揮できる分野を活用していけるかもしれません。そうなれば、新たな成長エンジンとなる産業を開拓する契機にもなります。

 当初は万博事業に関わることに戸惑いを見せていた小野氏でした。

 ところが、「大阪、関西2025」の理念を知り、開催すれば、将来の日本経済の成長にも貢献できるにちがいないと確信するようになって、ようやく、本腰を入れて、万博開催に向けて尽力する気になったようです。

 いざ、開幕してみれば、下請け業者から次々と未払いの訴えが起こります。懸念されていたトラブルが発生し、万博協会が矢面に立たざるをえない事態になりました。

 2025年5月16日、第7回予算執行監視委員会が開催されました。

■第7回万博予算執行監視委員会

 2025年5月16日、経産省本会及びオンラインで、第7回予算執行監視委員会が開催されました。出席者は有識者委員5名、経産省4名、万博協会2名、内閣官房1名、大阪府・大阪市万博推進局1名の計、13名でした。万博協会からは、副事務総長の小野平八郎氏と総務局長代行兼財務担当部長の早川貴之氏が出席し、オンライン参加でした。

 議事要旨を見ると、海外パビリオンの未払い問題については次のように記されています。

 「海外パビリオンについて、ネパール以外にも、類似の未払い事案が発生しており、博覧会協会は「基本的に民民契約である」旨のコメントをしていると報じられている。しかしながら、博覧会協会は、「持続可能性に配慮した調達コード」を公表しており、項目の一つとして「公正な取引」も挙げられているところ、博覧会協会が直接的な契約主体ではないとしても、同協会には、海外パビリオンの「パビリオン運営者」に対して調達コードに沿った対応を確保する責任があると考える」
(※ https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/expo_budget_monitoring/pdf/007_gijiyoshi.pdf

 とりあえず、「(万博協会の)調達コードに沿った対応を確保する責任があると考える」と結論づけられている点は評価できるでしょう。

 ちなみに、「調達コード」の内、未払い問題に関連するのは、「4.1 国際的労働基準の遵守・尊重」、「4.6 賃金」、「4.7 長時間労働の禁止」、「4.8 職場の安全・衛生」、さらに、「(10) 運営主体等に対する追加措置」という項目が該当するのではないかと思われます。

 (10) 運営主体等に対する追加措置」は、「以下の内容を仕様書等に記載して指示しなければならない」とされており、次の4項目が設定されています。
① パビリオン直接契約事業者が調達コードを遵守すること
② パビリオン直接契約事業者が博覧会協会による調達コードの遵守状況の確認・モニタリングに協力すること
③ パビリオン直接契約事業者が博覧会協会の指定する第三者による監査を受け入れること
④ パビリオン直接契約事業者において調達コードの重大な不遵守があるにもかかわらず適切に改善に取り組んでいないと認められる場合、パビリオン運営主体等が契約を解除できること。
(※ https://www.expo2025.or.jp/wp/wp-content/themes/expo2025orjp_2022/assets/pdf/sustainability/202307_sus_code.pdf

 調達コードは、「持続可能性に配慮した調達コード(第 3 版)」というタイトルの冊子にまとめられています。ところが、これらのコードは、未払い問題の発生を阻止するものでもなければ、その解決につながるものではありませんでした。

 万博協会からは、副事務総長の小野平八郎氏と総務局長代行兼財務担当部長の早川貴之氏がオンラインでこの委員会に出席していました。議事録要旨には、万博協会の見解として、次のように記されています。

 「未払い事案については、持続可能性の調達コードにしたがって調査委員会を設置し、必要に応じて関係部局や建設許可を出している都道府県、国土交通省の協力を得ながら対応を進める体制としている。決して民間まかせにしているわけではないので、報道は誤解。ただ最終的には民間同士の契約の話であり、協会としても、関連する契約が法律に基づき適正に締結・履行されているかについて確認を行っている。」
(※ 第7回2025年大阪・関西万博予算執行監視委員会議事要旨)
 
 議事要旨の末尾に、未払い問題に対する万博協会の見解が示されていますが、「民間同士の契約の話であり、協会としても、関連する契約が法律に基づき適正に締結・履行されているかについて確認を行っている」という文言で締めくくられています。

 これでは、とても未払い問題を解決しようとする姿勢とはいえません。

■万博協会、未払い被害業者を救済する気はあるのか?

 5月16日に開催された「第7回予算執行監視委員会」では、未払い問題に対して、「民民」のことは「民民」で解決してほしいという立場をとっています。万博協会の報告および見解を踏まえたものといえます。

 吉村知事も、6月26日の記者会見で同様のことを言っていますから、「第7回予算執行監視委員会」での見解が、万博協会及び政府の未払い問題に対する根拠になっているといえます。つまり、基本的には「民民」で解決してほしいということなのです。

 とりあえず、万博の理念に沿って設定された調達コードを踏まえて対応すると述べてはいます。ところが、この文面を読む限り、確認作業を行おうとしているだけで、被害業者に寄り添った対策を行おうとしているようにはみえません。

 前回、取り上げた被害者の会は、6月23日、大阪府に要望書を提出しました。その第1番目に記されていたのが、「被害企業への早急な立て替え金の導入」です。巨額の未払いを抱えた業者の中には、資金が枯渇し、破産寸前のところもあるからでした。彼らはなによりもまず、立て替え金を要望していたのです。

 ところが、6月26日の回答では、吉村知事はそのことには触れず、「民民」での解決をというだけでした。

 2025年7月31日、ANNニュースチャンネルは、万博のアンゴラ館の工事を請け負った業者らが、元請け業者の当時の経理担当者を相手に訴えを起こしました。
 
こちら → https://youtu.be/O3fMUJKfInQ
(※ CMはスキップして視聴してください)

 原告となったのは、大阪市と神戸市の建築会社2社で、この男性に合わせておよそ5800万円の賠償を求めています。

 一方、元請け業者の大阪市鶴見区の一六八建設は、この男性を業務上横領の容疑で刑事告訴しています。ちなみに、この一六八建設は、アンゴラ館の工事を受注し、複数の下請け業者に発注していながら、合わせて1億800万円を支払っていませんでした(※ ANNニュースチャンネル)。

 この場合、告訴の相手は国内事業者なので、比較的対応しやすかったのではないかと思います。国内業者に対しては、吉村知事も6月26日の会見で、機敏な対応を見せていました。とはいえ、万博協会が有効な対策あるいは救済策を打ち出さないので、被害事業者たちは裁判に持ち込むしかなくなっています。

 問題は、多くの被害事業者を出している、外資系元請け事業者のGLイベンツ・ジャパン社です。国内事業者に対するのとは違って、告訴も大変ではないかと思います。それこそ万博協会が政府の協力を得て、対応すべき問題だと思うのですが、GLイベンツ・ジャパン社に対しては、万博協会は依然として、何ら行動をおこしていません。果たして、万博協会に未払い被害業者を救済する気はあるのでしょうか?
(2025/8/1 香取淳子)

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