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消費行動

スマートシニアが消費市場を変える?

■スマートシニアが急増している?

4月30日夕刊の日経新聞で、スマートシニアが急増しているという興味深い記事を読みました。シニア層のインターネット利用率が急増しているというのです。

東北大学特任教授の村田裕之氏はネット時代の高齢者像として15年前からスマートシニアという概念を提唱していたそうです。スマートシニアとは、ネットを通して多様な情報に接し、スマートな(賢い)シニアのことを指すのだそうですが、それが近年、急増しているというのです。

■総務省の通信利用動向調査

総務省の通信利用動向調査によると、シニア層のネット利用率は2001年から2012年までの11年間で、60~64歳が19.2%から71.8%、65~69歳が12.3%から62.7%、70~79歳が5.8%から48.7%に急上昇しています。とくに増加率の大きいのが60歳代で、70歳代になるとやや落ちています。

シニアのネット利用率

 

出所:日経新聞(2014/4/30夕刊)

さらに、いまネットを活用している60歳以下の世代がこれからどんどん高齢者になっていきますから、この傾向は今後ますます強まるでしょう。つまり、これからの高齢者はネットを自在に活用するスマートシニアが中心になっていくことを想定しておく必要があるのです。

■消費行動の変化

村田氏は、「私の研究の基づく予測では、2025年には83歳で要介護者とそうでない人が半々で、ネット利用率は45%に達する。10年後には後期高齢者でも日常的にネットを利用することが当たり前になると思われる」とし、「今後、高齢者の消費パワーへの注目が高まるにつれ、流通業にとってスマートシニアへの対応は重要性を増すだろう」と結んでいます。

若い世代と同様、高齢者も価格に敏感になり、ネットで商品を比較しながら購買行動を取るようになるでしょう。ネット通販を利用することも増えるに違いありません。

少子高齢化の進行にともない、今後、高齢者の単身世帯の増加、限界集落の増加が必至と予測されています。日常の買い物にも不自由するようになれば、高齢者もネット通販での購入が不可避になるでしょう。

■テレビ通販からネット通販へ

14年ほど前に私は吉田秀雄記念事業財団の助成を得て、高齢者の消費行動について調査をしたことがありました。調査の結果、高齢者はテレビで視聴したことを信じやすく、テレビを通してモノを購入することが多いことが判明しました。興味深かったのは、通常のTVCMは高齢者にはあまり効果がみられなかったことでした。15秒や30秒では短かすぎてよく認識できていなかったのでしょう。高齢者が好んでいたのは、商品を手に取って説明する、効能を詳しく説明する、タレントや権威ある人が勧める、といったような方法で商品情報を提供するスタイルのCMでした。イメージ情報ではなくしっかりと商品情報を伝える形式のCMが高齢者に訴求力を持っていました。

■スマートシニアの消費行動

調査の結果、わかったことは、高齢者は全般に商品について実用的な情報を欲していたということです。このような志向性を考えると、高齢者がネットを利用できるようになると、すぐに消費行動にネットを活かすようになるでしょう。ネットでは詳細な商品情報を入手できますし、価格を比較し、商品の評判を知ることもできます。ほとんどの高齢者が限られた収入しかない年金生活者です。合理的な消費行動によって節約も可能になることがわかれば、ネットを利用した消費行動は今後ますます増大するでしょう。

■スマートシニアが消費市場を変える?

今後、ボリュームゾーンになっていくのが、高齢者層です。スマートシニアといわれる高齢者が増えれば、市場も大きく様変わりするに違いありません。メーカーにとっては商品の質的向上、合理的な価格設定が必至となりそうです。(2014/5/1 香取淳子)