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2022年参議院選挙① 有権者の魂を掴んだ参政党について考えてみる。

2022年参議院選挙① 有権者の魂を掴んだ参政党について考えてみる。

■自公政権に国政を任せられるか?

 2022年6月22日、参議院選挙が公示されました。任期満了に伴うもので、投票日は7月10日です。前回は入れたい政党がなく、仕方なく、自民党に投票しました。他の政党よりはまだましだと思ったからでした。

 ところが、その後、岸田政権になって、コロナ、ウクライナ事変、物価高など、次々と押し寄せる難題への対応に、思慮が欠け、国民への配慮が足りないことが明らかになりました。誰の目にも国益を大きく損なう対応しかできず、失望してしまったのです。

 このまま自公政権が続けば、日本がダメになってしまうのではないかと危機感を抱き始めました。

 たとえば、ガソリンの高騰です。2022年2月7日、JAF(日本自動車連盟)は政府に「当面の間ガソリン税の廃止」を要望しています。ガソリン代が上がると、輸送費が上がり、全ての物価に反映します。公共交通機関のない地方はもちろん、車がないと生活できず、たちまち家計は苦しくなってしまいました。

 ところが、政府はJAFの要望を退け、石油元売り企業への補助金を出して価格の抑制を図ったにすぎませんでした。JAFが求めたガソリン税の廃止とは、上乗せ分の1リットル当たり25.1円課税を指していますが、これがそのまま温存されたのです。

 ちなみに、消費税込み、1リットル170.9円のガソリンの場合、ガソリン本体は101.6円、ガソリン税(本則)28.7円、ガソリン税(上乗せ分)25.1円、石油税2.8円、消費税15.5円がその内訳です。なんと4割近くが税金なのです。ガソリン本体にガソリン税や石油税を加えた価格に消費税がかけられているのです。
(※ https://jaf.or.jp/common/news/2022/20220207-002

 自動車ユーザの立場から、JAFは、合理性のないこの課税形態を早急に解消してほしいと要望していたのですが、退けられました。

 これはほんの一例ですが、現政権がどちらを向いて、政権運営しているのかが端的に示されています。

 折しも6月28日、茂木自民党幹事長は、沖縄北谷町の街頭演説で、「消費税は年金、医療、介護、子育ての財源だ。(減税すると)社会保障(の予算)を3割カットしなければいけない」と語り、「現実的な与党か、現実性のない野党かが問われる選挙だ」と強調したといいます。(※ https://www.jiji.com/jc/article?k=2022062801054&g=pol

 茂木敏充氏といえば、政権与党、自民党の幹事長です。それなのに、生活に苦しむ人々への配慮がみられません。コロナ下で、多くの人々が減収に追いやられ、その後、円安、物価高が続いて、人々の生活は苦しくなる一方です。

 耐えかねて、減税を要求すれば、恫喝して黙らせようというのでは、安心して政権を任せるわけにはいきません。今回の件で、政権幹部が配慮に欠けているだけではなく、思慮も足りないことが露呈してしまいました。

 長崎での街頭演説の動画がありましたので、ご紹介しておきましょう。

■自民党の街頭演説

●茂木幹事長と自民党候補の街頭演説

 6月29日、茂木幹事長は自民党候補者応援のため、長崎を訪れています。沖縄での演説が批判されたことを気にしたのでしょう、野党が主張する消費税の減税に対し、次のように述べています。

 「年金、医療、介護、子育て支援の財源が3割不足する。この財源をどうするのかセットで出さないと責任ある提案と言えない」
(※ https://nordot.app/915049672932392960?c=174761113988793844

 確かに筋は通っていますが、国民への配慮がみられません。

 そもそも、国家予算は適切に使われているのでしょうか。例えば、コロナ予備費の12兆円の使途のうち、9割を追うことが出来ないという報道があります。
(※ https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA143WV0U2A410C2000000/

 これでは、政府に対する信頼が失墜してしまうのも当然です。予算がどのように使われたのか、果たして、必要な支出だったのかどうか精査する必要があるでしょう。残念なことに、現政権に対しては、予算の策定、執行に透明化を求めなければならないほどになっているのです。

 さて、長崎での街頭演説の様子をユーチューバーが撮影していました。テレビでよく見かけるような短い映像です。

こちら → https://youtu.be/FjeXdZ7KR30
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 このユーチューバーは、茂木幹事長や自民党候補について、興味深い見解を述べています。商店街を巡ってにこやかに振る舞っているが、集まって来た人々と話し合うことはなく、意見を聞くこともなかったと、撮影しながら、述べています。

 すべてが内輪だけのやり取りだったせいか、宣伝用に作り込まれた光景に見えたそうです。だから、演説を聞いても感動することもなく、ただ、見栄えよくポーズを取っているにすぎないという印象だったと語っています。

 さらに、このユーチューバーは、集まった人々に感想を聞いてみたそうですが、多くの人が取材されたくないという態度を示し、避けようとしたといいます。

 たしかに、動画で見る限り、商店街でちょっと試食し、選挙用に見せ場を作っていただけのように思えました。

 この動画について、次のようなコメントが寄せられていました。いくつかご紹介しましょう。

 「参政党を知っちゃったから、自民党とか興味が無くなっちゃたよ」

 「山本候補者の演説はほとんど心に響きません。昔インスタントコーヒーのCMで「本物には感動がある」というセリフがありました。ある党の街頭演説動画を視聴しましたが、全ての演説動画には心を揺さぶられるような感動があります。自民党の演説は、CM的に表現すると「偽物には感動が無い」のかもしれません」

 「様子を見ると、参政党の演説に来てる人たちとの温度差の違いがすさまじいです
みんな、来させられてるだけじゃん?そして、演説がツマラナイ。。。」

 寄せられたコメントを見ていると、多くの有権者はどうやら、参政党の街頭演説と比較し、茂木幹事長や自民党の候補者の演説に中身がなく、つまらないということに気づいてしまったようです。

 果たして、参政党とはどのような政党なのでしょうか。気になってきました。

 そこで、まず、選挙ドットコムで見てみました。

こちら → https://go2senkyo.com/sangiin/20368/hirei_party/3630/candidates

 比例代表として、5人の立候補者が登録されています。なかなか興味深いボードメンバーだと思いました。実は、彼らは皆、ユーチューブで何度か見たことがある人物だったのです。識見が高く、激変する時代の動向を鋭く見抜く能力のある人々でした。

こちら →
(※ 参政党HPより。図をクリックすると、拡大します。)

 ひょっとしたら、彼らは困難な時代状況を劇的に変化させてくれる人々かもしれません。ユーチューブでちらっと見た程度ですが、世界や社会、経済や歴史に対する見識、実行力、キャリア、いずれも激変する社会に切り結んでいける能力を備えている人々ではないかと感じました。。

 一見、異端児のようにも思える人もいますが、だからこそ、これからの日本を牽引していける果敢な精神を備えているように思えました。

 とりあえず、参政党の街頭演説を見てみることにしましょう。

■参政党・神谷宗幣氏

 長崎では、ドイツ・フランクフルト在住の尾方綾子(おがた・あやこ)氏が参政党の候補者として立候補しています。神谷氏の推薦だそうです。海外居住者の視点を取り込みたいという神谷氏の意見が取り入れられて、実現しました。

 日本の中だけにいると、それこそ井の中の蛙で、日本を客観視することが難しくなります。だからこそ、海外の視点から、日本のシステム、政治、社会、経済、教育などへのさまざまな気づきが重要になります。神谷氏はそういう思いから、尾方氏に立候補を呼び掛けたそうです。

 尾方氏も、素晴らしい日本にしていきたいという思いは同じです。

こちら →
(※ 下記ユーチューブ動画を撮影。図をクリックすると、拡大します。)

 それでは、応援演説をする神谷氏を撮影した動画を見てみることにしましょう。

こちら → https://youtu.be/lWaX8lkBO3g
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 冒頭で、このユーチューバーは、何人かの参加者に何故、街頭演説に来たのかと尋ねています。

 最初に質問された女性は、ユーチューブで見て神谷氏に感動し、実際の演説を子供に聞かせたくて、子どもを連れてきたと言っていました。次の女性もやはり、ユーチューブで神谷氏を知ったそうです。長崎は自民党が強いが、参政党はこれまでにない政党だから、100%応援していると語っていました。その後、言葉を継いで、皆で参政党を守っていかなければならないとまで言っています。

 動画を通し、一部の有権者の反応を見たにすぎませんが、自民党の街頭演説に集まった有権者たちの反応とは大きく違っていました。参政党の参加者たちからは、弾むような躍動感があり、支援者ならではの熱気が感じられました。

 2時間かけて西海市から来たという高齢者は74歳でした。神谷氏が主宰するCGSを視聴しており、こういう時はなんとしてでも応援しなければと思ってやってきたと答えています。

 やはりCGSを視聴していて神谷氏を知ったという参加者は68歳、そして、37歳の男性でした。これほど歴史をよく勉強し、日本のことを深く考えている政治家はいないと評価していました。そして、実際に、勉強しはじめると、自分で考えるようになり、神谷氏の言っていることがよくわかると語っていました。

 さらには、これまでは自民党に入れていたが、参政党の党員になったとか、創価学会会員だったが、辞めて、参政党の支援をしているという人もいました。また、被爆した長崎がなぜ、アメリカに抗議しないのか、20代から何かもやもやとして気分でいたが、神谷氏の演説を聞いて、どうすればいいか気づいたそうです。だから、参政党ができたことが嬉しくて、入党したという64歳の男性は、これでようやく生き甲斐が出来たと語っていました。

 こうしてみてくると、神谷氏の演説こそが、有権者の気持ちを強く揺さぶり、これまでわからなかったことに気づかせ、そして、これからやるべきことを考えさせるきっかけを作っていたことがわかります。

■魂への働きかけ

 大勢の参加者は演説を聞いて、心の奥底に沈んでいた過去を思い出し、その過去に照らし合わせて感動し、共感することが多かったようです。演説を聞いて、すぐに入党した、寄付した、ボランティアを買って出たという人が多いのは、おそらく、神谷氏の演説が魂に響くようなものであったことが、大きく影響していたのではないかと思います。

 神谷氏はまさに、演説を通して、多くの人々の心に火を点けてしまったのです。

 近現代史を学ぶ機会を持たず、日本人はひたすら、悪いことをしてきたという罪の意識を植え付けられて生きてきました。その結果、人々は、何をすべきか、どう考えるべきかがわからなくなってしまっていたのでしょう。戦後数十年間、多くの日本人は、誇りを持って生きていくための精神的な軸を失っていたのです。

 ところが、神谷氏の演説を聞いて、人々は気づき、失っていた軸を取り戻そうという気持ちに目覚めました。先ほどご紹介した、生き甲斐ができたという男性の言葉にその思いが象徴されています。無力感に苛まれて生きていた人々が、神谷氏の演説を聞いて、心を動かされ、共に行動したくて、入党し、生き生きとした生活を取り戻しつつあるようです。

 激変する社会情勢の中で、老若男女を問わず、自分がどうこの社会とかかわっていけばいいのか、わからなくなってしまっている人が増えています。参政党・神谷氏の演説には、そのような人々の気持ちを捉え、魂を救う何かがあるようでした。

■学び、気づき、行動する

 神谷氏はユーチューバーの質問に答え、当初は30代から50代の人々が多かったが、今は60代、70代、80代にまで広がり始めていると言っていました。

 取材された高齢者の何人かは、神谷氏を知るきっかけとなったのが、CGSだと言っていました。そこで、調べてみると、CGSとは、Channel Grand Strategyの略称で、「日本人の『スイッチ』を入れる番組」で、登録者数29.3万人の教養番組でした。

こちら → https://www.youtube.com/channel/UCNkl6sk3xpHcSpIfiuV2AIA

 内容については、「政治、経済、歴史、軍事、食と健康などのテーマで、学校では教わることのないけれど、これからの日本の国策を考えていくために必要な基礎知識や教養を15分程度で配信する動画チャンネル」と概説されています。

 その番組のメインキャスターが神谷宗幣氏でした。ユーチューブを使い、一種の啓蒙活動を行っていたのです。神谷氏自身、勉強しながら、気づき、そして、行動していくといったスタイルの活動を展開していました。

 それでは、参政党は一体、どのような政策を有権者に訴えていたのでしょうか。

 取り敢えず、ホームページを見てみました。すると、参政党の政策についての動画がありました。

■政策の基本構成

 参政党は政策の基本構成として、以下のようなプランを練り上げています。

こちら → https://youtu.be/WRSEjDJpYbc
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 理念や綱領、政策については、共同代表の松田学氏を中心に策定したそうです。ですから、これについての説明も、松田氏が担当していました。

 政策の基本構成としては以下のようになっています。

こちら →
(※ 参政党HPより。図をクリックすると、拡大します。)

 どういう政党にするかというところに「日本の国益を守り、世界に大調和を生む」という理念が掲げられています。日本のあるべき理想の姿が語られていま。わからないわけではありませんが、漠然としていて、掴みどころがないという印象です。

 その理念の下には綱領が掲げられており、「先人の叡智を活かし、天皇を中心に一つにまとまる平和な国をつくる」「日本国の自立と繁栄を追求し、人類の発展に寄与する」「日本精神と伝統を活かし、調和社会のモデルをつくる」、等々、3点が示されています。

 ここでは、国家としての日本の目指す方向が示されていますが、堂々巡りになっているように思えます。これについてはまだ検討の余地があると思いました。

 現在の技術動向からいえば、今後、デジタル・エコノミーに移行していく可能性が高いでしょう。生産、流通、消費のプロセス、それぞれがデジタル化していけば、当然のことながら、人々の生活形態も変化していきます。人と人とのありかた、人と社会とのありかた、人と国家とのありかたも、生活形態の変貌に応じて国家の方向も政策も変化していかざるをえなくなるでしょう。

 上記の綱領には、そうした状況が想定されていないように思えます。状況変化を踏まえて、綱領を精査し、それ以外のものも含め、整合性をもたせなければ現実的ではないのではないかという気がしました。

 綱領を支えるための目標として10の柱が掲げられています。そして、これらの10の柱を実現していくための地域コミュニティ政策があり、未来社会モデルづくりがあるといった構造になっています。

 さらに、この地域コミュニティ政策と未来社会をつなぐものとして、デジタル革命を進め、トークンエコノミーを通した政策実現を進めていくというのが、参政党の構想です。

 このような未来に向けた国家構想に基づき、参政党が行おうとしている実践課題を構造化して示されたのが、次のチャートです。

こちら →
(※ 参政党HPより。図をクリックすると、拡大します。)

 先ほどの10の柱がここでは具体的に示されていますが、さらに検討を加え、改良していく余地があると思いました。これを見ると、まだ、さまざまな局面に対応できるものになっているとは言い難く、偏りや重複が見られます。社会を支える基本構造を設定し、今後起こりうる変化と継承すべき伝統とを加え、相互排除的に設定し直す必要があるのではないかと思いました。
 
 参政党の政策としては、選挙公報に載せられた3つの重点政策の方がすっきりとしてわかりやすいと思いました。

こちら →
(参議院議員選挙選挙公報より。図をクリックすると、拡大します。)

 これなら、誰もが理解することができ、しかも、現在、人々が懸念している事柄ばかりです。さらに、「子供の教育」、「食と健康、環境保全」、「国の守り」は相互に深く関連しており、まず、これらの課題に取り組むことが大切です。

 いずれにしても、もはや自公政権に期待することはできず、新たな問題意識を持ち、新たな政党づくりを掲げて登場した参政党に頑張ってもらうしかなさそうです。とはいえ、HPで掲げられた政策については議論の余地がありますし、登場したばかりで、すぐには日本の制度改革にはつながらないでしょう。

 ただ、参加型の政党を目指し、実践しているところに、現状を打破できる新しさがあり、未来に向けた可能性が感じられます。今回の参議院選挙では、まず、少しでも多く議席を獲得することに専念すべきでしょう。それが達成できた暁に、党勢を拡大し、社会の抜本的な制度改革に挑んでもらえればいいと思っています。(2022/6/30 香取淳子)

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