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進化したタンポポ、夏目漱石、生存戦略

進化したタンポポ、夏目漱石、生存戦略

■道端で見かけたタンポポ
 2021年5月5日、スーパーに行く途中、道端でタンポポが咲いているのを見かけました。狭い空き地にひっそりと、草むらの中に紛れ込むようにして咲いていたのです。


(図をクリックすると、拡大します)

 花を咲かせているタンポポはわずか三つでした。それ以外は、綿毛が密で球形になったもの、まばらになったもの、綿毛がすっかり飛び散ったものなど、ヒトでいえば、老年期、終末期にさしかかったタンポポばかりでした。

 すべてが花を咲かせた状態だったら、どれほど見応えがあったでしょう。見えている茎の数からいえば、開花期には,30本ものタンポポが咲き乱れていたはずです。コンクリートの建物と道路の間に囲まれた殺風景な空間がいっとき、黄金に輝く華やかなステージになっていた様子が目に浮かびます。

 行動を制限され、鬱々と過ごしていた人々はきっと、煌めくタンポポの花に元気づけられたにちがいありません。なにしろ、ここのタンポポときたら、のこぎり型のギザギザの葉を大きく広げて、他のタンポポと距離を取っているのです。その様子はまるで三蜜を回避し、ソーシャルディスタンスを確保しているかのようでした。

 しかも、群れて咲いているのです。ヒトになぞらえれば、仲良く集い、コミュインケーションを楽しんでいるようにも見えます。コロナ下でこのタンポポ集団は、どんな環境下でも生を謳歌できることを示してくれていたのです。

 そう思うと、このタンポポ集団がたとえようもなく愛おしくなってきました。

 そもそも、この道は普段は滅多に通らないのですが、この日、たまたま通りかかったにすぎません。このところ「Stay Home」とやらにも飽き飽きしていました。運動不足を解消するにも、気分転換を図るにも、散歩ぐらいしか方法はなく、普段は行くことのない、この道を通ってみたのでした。

 その途上でたまたま、見かけたのが、このタンポポです。すでに盛りを過ぎていましたが、黄色の花からは元気をもらい、ふわふわした綿毛からはどこへでも飛んでいける自由を感じさせてもらいました。その途端、どんよりとした鬱々とした気分が晴れ、思ってもみなかった気分転換ができたのです。

■タンポポの不思議
 タンポポは地面スレスレに花を咲かせています。うっかりすると、ヒトや犬に踏みつぶされてしまいそうなほど低い位置でした。

 見ているうちに、タンポポの花には茎がほとんどないことに気づきました。平べったい黄色の花が、緑の葉の上にべったりと張り付いているのです。おそらく、そのせいで、地面に這いつくばっているように見えたのでしょう。

 見渡すと、辺り一帯は雑草が生い茂っています。その草むらの中で、黄色の花はひときわ輝いて見えました。鮮やかな黄色が目に眩しく、強く印象づけられます。まるでその存在を誇示しているかのようでした。

 これだけ存在感が強ければ、地面すれすれの低い位置で咲いていても、決して踏みつけられることはないでしょう。交通信号に採用されているように、赤や黄色は人に注意喚起を促す色です。しかも、黄色は赤よりも明度が高く、草むらで見るとなおのこと目立ちます。人目を引く鮮やかな黄色の花弁は、開花期のタンポポが生き残っていくための防衛機構の一つといえるのです。

 さらに近づくと、綿毛のタンポポが見つかりました。まだ風に吹き飛ばされておらず、完全な球形をしています。


(図をクリックすると、拡大します)

 花を咲かせているタンポポのすぐ傍で、綿毛になったタンポポが風に揺れています。すっくと佇む白い綿毛のタンポポの下に、黄色の花がそっと顔をのぞかせています。見比べてみるまでもなく、老いた綿毛のタンポポの方が、花を咲かせた若いタンポポよりも茎が長いのが、ちょっと不思議なでした。

 なぜなのでしょうか。

 一般に、ヒトもその他の植物も老いると縮み、小さくなるはずです。それなのに、タンポポは老いている方が縮みもせずに茎が長くなっており、背丈が高くなっているのです。気になって、周囲を見渡してみましたが、どれを見てもやはり、花を咲かせている方が綿毛よりも茎が短いことがわかりました。


(図をクリックすると、拡大します)

 この写真では、さまざまな形状のタンポポを見ることができます。球形の綿毛、ほとんど綿毛が飛び散ったもの、花の咲いたもの、そして、花が萎れて縮み、茶褐色になったもの、といった具合です。

 タンポポにもライフサイクルという概念があるとすれば、空き地のわずかな一角で、4つのライフステージのタンポポをまとめて見ることができたといえるでしょう。

■タンポポのライフサイクル
 タンポポには、一般の植物と同様、タネ、発芽、成長、開花、タネ分散の5段階があります。先ほどご紹介したタンポポはこの5段階のうち、開花(黄色い花)、タネ分散(綿毛)の時期に相当します。

 それでは、先ほどの写真に戻ってみましょう。

 長い茎の先に寝そべっているように見えるのが、まさにいま青春を謳歌している黄色の花です。その上に、綿毛をみごとに膨らませ、完全な球形になっているタンポポが見えます。よく見ると、白い綿毛が隙間なく、密集しているのがわかります。

 その右側のタンポポは、ほとんど綿毛が飛び散り、無残な姿を晒しています。種子をまき散らしてその使命を終え、末期を迎えているのです。

 さて、球形をした綿毛の下には、黄色の花が二つ、地面近くに咲いており、さらにその下に、花弁が褐色になったタンポポが二つ、葉陰に隠れているのが見えます。こちらはほとんど見落としてしまいそうなほど、縮んで小さくなっていますが、よく見ると、これも茎が長く横に伸びています。

 つまり、この一角では、①開花、②タネ分散の2ステージについてそれぞれ二つの段階があることが示されていました。すなわち、①開花ステージでは、花が咲き、枯れるまで、②タネ分散ステージでは、球形の綿毛からまばらな綿毛までです。それぞれ、段階を経て変化し、終末を迎えることが示されているといえます。

 開花期で興味深いのは、①花が開いた状態のものよりも、花が枯れて褐色になっているものの方が茎が短いこと、②両者ともに茎が横に伸びていることでした。このことからは、老いるにつれ、背が低く、茎が横たわっていくことがわかります。

 一方、タネ分散期のタンポポの場合、完全な綿毛と、綿毛がほとんどまばらになったものとに、茎の長さに変化はありません。こうしてみてくると、茎の長さは、タンポポのライフサイクルと密接な関係があるのではないかと思えます。

 そこで調べてみると、とても興味深い記事がみつかりました。

■ライフステージによって変化する茎の長さ
 「タンポポ(蒲公英)の綿毛のできるまで過程」というタイトルの記事によると、タンポポは、花が咲き終わると、茎は地面に横たわり、茎を通して根や葉から花に養分を送ります。その後、2週間ほど経って綿毛が膨らむころ、再び、茎が立ち上がるというのです。(※ https://santa001.com/)

 Wikipediaでも、同じような説明がされていました。タンポポの茎は分岐せず、花が咲き終わると、一旦、倒れますが、その後、花が咲いていたときよりも茎の丈は高くなると書かれています。

 これらの説明を総合すると、タンポポが茎の長さを変える要因は、老化であり、ライフサイクルに合わせた営みだということがわかります。

 さらにWikipediaの説明を読み進めると、タンポポは50㎝以上もの長さで、太いゴボウのような根をもっていると書かれていました。草丈は15㎝しかないのに、根は長いものでは1メートルにも及んでいるというのです。

 この説明からは、太く長い根がタンポポの茎の自由な動きを支えていることがわかります。しっかりと大地に根を張っているからこそ、タンポポの茎は、花が咲き終わると倒れ、綿毛が膨らむと長く伸びるという柔軟な動きができるのです。

 それではなぜ、開花期は茎が短いのでしょうか。

 タンポポといえばこれまで、地面近くに咲いている小さな花というイメージでした。実際、ここで咲いているタンポポの花も茎が短く、地面に這いつくばっているように見えます。


(図をクリックすると、拡大します)

 Wikipediaには、開花時のタンポポの茎の短さについても説明がありました。茎が短く、のこぎり状の葉が水平に広がっているのは、花や茎が踏みつけられたり、折られたりしても、容易に、再生できるからだそうです。

 つまり、茎が短く葉が水平に広がっているのは、開花期に身を守るための防衛メカニズムの一環だといえるのです。

 花弁が縮み、褐色になっているこのタンポポは、すでに花を咲かせる使命が完了しています。そこで、次のステージに備えて横に寝そべり、綿毛が膨らむのを待っているのでしょう。その姿はまるで妊婦がしずかに横たわり、胎児に栄養分を送っているかのようでした。

 タンポポの逞しさと賢さに感心してしまいました。

 用意周到な生き残り戦略がライフステージごとに組み込まれているからこそ、他の植物なら生きていけないような厳しい環境下でも繁殖していけるのでしょう。改めて、環境への柔軟で最適化された対応が生存戦略には不可欠だと思いました。

 翻って人間社会はいま、コロナ禍で、飲食、旅行、アパレル、エンタメなどの業界が大きな打撃を受けています。外出自粛、三蜜回避を要請された結果、これまで事業を支えてきた環境が激変してしまったのです。

 対応しきれずに廃業に追い込まれた事業者が多々ある一方で、この艱難辛苦を乗り越え、新たな事業スタイルを模索している事業者もあるようです。何もコロナ禍に限りません。5Gの普及にAIの進化、データドリブン経済の浸透など、今後、どの業界にも大きな変化が訪れることは明らかです。

 事業者ばかりではなく、現代社会を生きる人々もまた、タンポポのように逞しく、賢い対応力が求められる時代に突入したのでしょう。

 そんなことをぼんやりと考えているとき、興味深い新聞記事に出会いました。

■環境激変に耐えられるか
 2021年5月15日、日経新聞コメンテーターの梶原誠氏は、「30年後、その会社はあるか」というタイトルの記事を寄稿しています。

 記事の冒頭で梶原氏は、2021年5月1日に開催された米バークシャー・ハザウェイのオンライン株主総会で、同社会長のカリスマ投資家ウォーレン・バフェット氏のスピーチを引用しています。

 バフェット氏は、GAFAMが牽引する世界時価総額上位20社を示し、「30年後、何社が残っていますか?」と問いかけ、32年前の1989年の上位20社を提示したそうです。その結果、この32年間で、世界時価総額の上位20社は大幅に変化していました。日本企業、米国のエクソン、IBMなどがランキングから消え、代わりにGAFAMやテンセントなどの中国企業に置き換わっていたのです。

 バフェット氏はこのデータを踏まえ、企業間競争がいかに厳しいかを訴えたといいます。

 梶原氏は、このバフェット氏の警告を踏まえ、実例を紹介しながら、生き残りのためには何が必要なのかを説明しています。

 判断基準にしたのは、投資信託「コモンズ30ファンド」(30年間成長できる日本企業)に採用された銘柄の2019年末と2021年4月末のデータです。この2時点の業績を比較し、上昇に転じた銘柄の特徴を分析して、以下のようにまとめています。


(2021年5月15日日経新聞より。図をクリックすると、拡大します)

 この表で示されたSociety(社会)、Agility(俊敏)、Technology(技術)、Overseas(海外)、Resilience(復元)、Integration(融合)は、梶原氏が抽出した、上昇に転じた企業の成長要因です。上から順にみていくことにしましょう。

 たとえば、医薬品メーカーと医師をオンラインでつなぐエムスリーは、62位から26位に急上昇しています。逼迫する医療需要に応えた業務が、業績向上に寄与しています。この場合、社会的要請に対応できていることが成長要因になっていると梶原氏は分析しています。

 佐川急便を傘下に持つSGホールディングスは、176位から97位に上昇しています。コロナ下での海外での荷動き低迷を見越し、それまでの統合計画を断念しました。その決断を評価し、梶原氏は激動の時代には臨機応変に即時対応できる能力が必要だと指摘しています。

 半導体の検査装置で独占的なシェアを握るレーザーテックは、258位から86位に上がりました。政府が推進しようとしているDXにもデータセンターにも高性能の半導体が必要になるからです。今後の社会に不可欠な技術が成長要因になっているといえます。

 そして、部品メーカーのシマノは、83位から68位に上昇しています。海外売上高比率が約90%にも上っているからでした。人口減が進む日本では海外市場の重要性が今後、ますます高まるでしょう。海外市場の開拓は成長には不可欠の要因といえます。

 生理用品・紙おむつなどを販売するユニ・チャームはコロナ下でマスクを手掛け、58位から57位にランクアップしました。ランキング上位を保ち、わずかながらもアップしています。環境の変化に素早く対応した結果だといえるでしょう。梶原氏はこれをResilience(復元)力が寄与したと考えます。

 日本電産は、企業成長の原動力として、M&Aを積極的に展開しています。

こちら → https://www.nidec.com/jp/corporate/about/ma/

 「回るもの、動くもの」に特化してM&Aを行い、技術や販路を育て上げるために要する時間を買うという戦略の下、手っ取り早い成果につなげています。このような買収戦略によって日本電産は、27位から13位に上昇しました。

 梶原氏は、上記の6企業が採った戦略の特徴をそれぞれ、Society(社会)、Agility(俊敏)、Technology(技術)、Overseas(海外)、Resilience(復元)、Integration(融合)と表現し、これらの特徴を備えた企業こそ、今後、激変する環境下で生き残る可能性が高いと指摘しています。

 社会が変化すれば、社会的ニーズも変化します。その変化を見逃さず、朝令暮改といわれようと気にせず、迅速に適応していくことが必要になります。それには社会が求める高度な技術を装備することが不可欠ですし、収益を安定させようとすれば、国外を視野に入れた販売戦略も必要です。環境の変化で業績が悪化しても、臨機応変に対応していく野生の回復力が求められますし、自前ではできないことはM&Aで補うことも必要になります。

 こうして企業の生存戦略の一端を見てくると、改めて、タンポポの巧みな生存戦略に感心させられます。

■環境に最適化された生存戦略
 先ほど、タンポポの茎の長さがライフステージによって変化するといいましたが、実は、葉の形も生息場所によって変化します。たとえば、日陰では、太陽の光をできるだけ多く取り込むため、葉の数は少なく、葉の面積を増やすためにタンポポの葉特有の切れ込みも少なくなっています。

 逆に、日当たりのいい場所では、切れ込みを深くし、葉が重なっても下の葉にも太陽光が射し込むような工夫がされています。より多くの太陽光を浴びるために、環境に応じて葉の形状を変化させているのです。

 さらに、綿毛の段階で背が高くなるのは、広範囲に飛散できるようにするためでしたが、綿毛の構造もまた、できるだけ空中に長く滞在できるような構造になっていることが明らかになっています。

こちら → https://www.discoverychannel.jp/0000038949/

 身体の構造を環境に適合させることによって、タンポポはより多く、より広範囲に、種子をまき散らす工夫ができているのです。

 タンポポがどれほど賢い植物であるか、どれほど巧みな生存戦略を展開しているかがまとめられているので、ご紹介しましょう。

こちら → https://geolog.mydns.jp/www.geocities.jp/tampopo7007/kasikoi.html

これを見ると、タンポポが開花の終了から種子の実りを経て、種子の拡散に至るまで、環境要因を踏まえ、用意周到な戦略を練って生き延びていることがわかります。ライフサイクルに応じて身体の形状や構造を変化させるだけではなく、季節のもたらす気候の負荷を回避し、他の草花との競争を避けることによっても生き残りを図っているのです。

 そんなタンポポのしたたかさを、明治の文豪、夏目漱石はしっかりと見抜いていました。

■夏目漱石が捉えたタンポポ
 私は最近、夏目漱石を読み返しています。物事の本質を見抜き、的確で簡潔な表現力で構築された世界に魅力を覚えるようになったからでした。

 はたして、漱石はタンポポをどう捉えていたのでしょうか。ふと気になって、調べてみると、次のような句があることがわかりました。

 「犬去つて むつくと起る 蒲公英が」(夏目漱石)
(https://sosekihaikushu.at.webry.info/200912/article 18.htmlより)

 この句には見慣れない語句、「蒲公英」が含まれていますが、これはタンポポの漢語表記で、「たんぽぽ」と読みます。中国で使われている漢語表記をそのまま和名「タンポポ」に当てはめたもののようです。

 漱石は『明暗』を執筆していた際、漢詩を書くことを日課にしていたほどですから、タンポポも漢語表記の方が馴染み深かったのでしょう。改めて、漱石にとって漢詩は、小説と同様、思想を表現する手段だったことがわかります。

 この句も、漢詩の好きな漱石らしく、無駄な字句を省き、簡潔で本質を突いた表現が印象的です。

 この句はとても素直に、犬が立ち去った後、タンポポがむっくりと起き上がる様子が捉えられています。タンポポが擬人化されており、犬が立ち去るのをしっかりと見届けてから、注意深く身を起こしている様子がありありと目に浮かびます。「むつくと」という表現になんともいえない愛らしさとユーモアが感じられ、気持ちが和やかになります。

 一見、日常的な光景を綴っただけのように見えますが、タンポポの生態を知らなければ、「むつくと起る」というような表現はできません。タンポポの茎は開花期を過ぎれば横倒しになり、綿毛ができると途端に起き上がって茎丈が高くなることを漱石は知っていたのです。博学に支えられたスケッチの確かさが秀逸です。

 ありふれた光景の中で、漱石が目を止めたのは、したたかさに生き抜くタンポポの野性味でした。

■変化に適応し、高度に進化したタンポポ
 タンポポは寒帯から熱帯まで幅広く、さまざまな気候の下で生息しているといいます。しかも、路傍、空き地、畑地、牧草地、芝地、樹園地、川岸など、生息場所を選びません。日本では、沖縄から北海道まで全国各地でタンポポを見ることができますが、その多くは西洋タンポポ(外来種)と在来種との雑種だといわれています。

 外来種の侵入が確認されたのは1904年、北海道で食用や飼料として輸入された栽培種からだとされています。

こちら → https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/80640.html

 今では、全国のタンポポの約8割が、外来種の西洋タンポポか、在来種との雑種だといわれています。在来種のタンポポは、外来種の西洋タンポポに席巻されながらも、交配して雑種となって生息範囲を広げ、生き残ることができたのです。

 こうしてみてくると、日本で生息していた在来種は外来種と交わることによって遺伝子が強化され、より多様な環境で生きられるようになったことがわかります。これも進化の一形態といえるのかもしれません。

 Wikipediaによると、タンポポは非常に進化しており、植物進化の系統ではトップグループに属するといいます。進化を重ね、さまざまな環境やライフステージに最適化させた生存戦略を編み出す一方、外来種との交配によって遺伝子を強化していったからでした。こうしてみてくると、生存戦略とは、より確実に子孫を残すための繁殖戦略だともいえるでしょう。

 コロナ禍に右往左往していても始まりません。気候変動、技術の進化、エネルギーの変化、世界的な人口増と先進諸国の高齢化、等々。社会を激変させる要因は次々に控えています。新型コロナは、今後はさらに大きな変化が押し寄せてくる前触れに過ぎないのではないかと思います。

 危機にどう対応するか、どのように生き延びるか、激変した社会に適応できる柔軟性をどう身につけていくか、したたかなタンポポを見倣う必要があるのかもしれません。(2021/5/30 香取淳子)

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