ヒト、メディア、社会を考える

八重桜とコロナ変異株に見るしたたかな生存戦略

八重桜とコロナ変異株に見るしたたかな生存戦略

■入間川遊歩道
 2021年4月16日、久しぶりに入間川遊歩道に行ってきました。といっても、ほぼ2週間ぶりです。新緑の季節になると、遊歩道の風景は目まぐるしく変化します。

 案の定、桜は散って葉だけになり、前回、見たときとは全く異なった風景が、目の前に広がっていました。


(図をクリックすると、拡大します)

 早緑の葉が風にやさしくなびいているのを見ると、葉桜も悪くないなという気がしてきます。

 葉桜に覆われた遊歩道の先の方に、ピンクの花が咲いているのが見えます。


(図をクリックすると、拡大します)

 どう見ても、桜には見えませんでしたが、近づくと、どうやら八重桜のようです。厚ぼったくて、強靭で、どう見ても、この花には桜のイメージはありません。存在感が強すぎるのです。まるで牡丹のようでした。


(図をクリックすると、拡大します)

 さらに近づいていくと、満開の花弁の量と質感に圧倒されます。潔さの象徴のようなソメイヨシノとは違って、濃厚で生命力旺盛、なんともいえないしたたかさがあります。

 通り過ぎようとして、ふと、木の下で立ち止まってしまいました。

 見上げると、幾重にも重なった無数の花弁に覆われ、空が見えなくなっているほどでした。八重桜は豪華絢爛、見ていると、知らず知らずのうちに、気持ちが華やいでいくのが感じられました。


(図をクリックすると、拡大します)

 つい2週間ほど前に見た花とは、花弁の様相が全く異なっています。あまりにも違っているので、違和感を覚えたほどでした。

■八重桜
 たった一本なのに、際立った存在感を放っている桜木でした。通り過ぎて、振り返ってみると、改めて、この木が異質だということがわかります。


(図をクリックすると、拡大します)

 前回、見た桜はソメイヨシノでした。そよ風が吹いただけで、さらさらと花弁が舞い、散っていきます。そこには、パッと咲き、パッと散っていく潔さがあって、かつて多くの日本人が共有していた精神を連想させてくれました。ソメイヨシノ特有の淡白でさらりとした美しさが、遊歩道の両側に満ちていたのです。

 ところが、目の前で咲き乱れている花は、一見、桜とは思えないほど濃厚な印象です。八重桜と思い込んでいましたが、とたんに、確信が持てなくなってきました。

 気になって、スマホで調べてみると、カンザンという名称の八重桜でした。江戸時代にオオシマサクラを基にして作られたサトザクラの一種なのだそうです。

 さらに調べると、この桜の特徴は八重咲で、花弁は20枚から50枚、花と葉が同時に咲くと書かれていました。たしかに、どの花も花弁がいっぱいで、遠くから見ると、ふんわりと丸く、もこもこした感じです。花の量には圧倒されますが、葉もしっかりと付いています。

 それにしても、びっしりと隙間なく花が生い茂った姿がなんと逞しいことでしょう。見るからに儚げなソメイヨシノとは違って、生命力の強さが感じられます。

 そのまま遊歩道を歩いていくと、また、異なる花弁をつけた桜の木に出会いました。


(図をクリックすると、拡大します)

 こちらも花弁が多く、もこもこした感じです。白に近い淡いピンク色の花が、無数に咲き乱れ、辺り一帯を明るくしています。こちらもしっかりと葉が付いています。

 立ち止まって、スマホで調べてみると、イチヨウ(一葉)という名の八重桜でした。江戸時代以前からある栽培品種で、サトザクラの一種だそうです。花と葉が同時に開き、花弁の色は淡紅色ですが、花弁の内側が白いので、開花が進むと、白く見えるようになると書かれていました。目の前で咲き誇っている花の様相、そのものです。

 白っぽい色彩のせいか、こちらの方が多少はソメイヨシノに近い気がします。

■八重桜とソメイヨシノ
 わずか2週間ほどえ、入間川遊歩道の主役が入れ替わっていたのです。ソメイヨシノはすっかり花を落とし、葉だけになっていました。その代わりに、八重桜が咲き、早緑で覆われた川辺を、華やかに彩っていたのです。

 ぼんやりと眺めているうちに、不意に、変異という言葉、多様性という言葉が脳裏をかすめました。

 ソメイヨシノが先なのか、八重桜が先なのかはわかりません。ただ、異なった品種が存在することによって、桜という種そのものが、長く生き続けているのではないかという気がしてきたのです。
 
 スマホで調べると、カンザンという品種は、欧米で最も普及している日本原産の桜だそうです。寒冷地でも生育が良好で、花が大きく花弁の濃い紅色が、欧米人の美的感覚に合っているため、広く育てられているといわれています。

 イチヨウ(一葉)という品種は、オオシマザクラを基に生まれた日本原産の八重桜だと書かれていました。カンザンにしろ、イチヨウにしろ、サトザクラ群に属する日本原産の八重桜だったのです。

 一方、日本のイメージとして定着しているソメイヨシノは、江戸時代後期に開発された品種でした。昭和の高度成長期に、日本各地で植えられた結果、現在では、日本の桜の90%を占めるようになり、日本のイメージとなっていったようです。

 興味深いことに、亜種に見えたカンザンやイチヨウが日本原産のサトザクラの系統をひき、日本古来の品種と思えたソメイヨシノが江戸時代後期に開発された品種でした。

 帰宅して調べてみると、日本の桜は、ヤマザクラ、オオシマザクラなどの10種を基本に変異種を含めると、100種類以上が自生しているそうです。そこからさらに、さまざまな品種が開発され、合わせて200種類以上もあるといわれています。

こちら → https://gardenstory.jp/plants/42373

 種類の多さが桜という種そのものを長く生き続けさせてきたのかもしれません。品種が多いということは、多様な環境に適応できるということが示されており、桜の生存戦略の一つといえるでしょう。

 毎年、時期になれば、桜前線が報道されます。不思議なことに、南北に長い日本列島、どこでも桜が見られるのです。各地の環境に適して変異した品種、あるいは、人工的に開発された品種のおかげで、桜は長く生き残ってきたのでしょう。


(2021年版 お花見ガイドより)

 種類が多ければ、適応できる環境も広がり、長く生存し続けられるようになることがわかります。

■大阪府、緊急事態宣言の発令を要請
 2021年4月21日、朝起きて日経新聞を広げると、真っ先に、「大型商業施設も休業」という大文字のタイトルが目に飛び込んできました。その横に「大坂、緊急事態を要請」という副題も見えます。第1面です。

こちら → https://www.nikkei.com/article/DGKKZO71207890R20C21A4MM8000/

 連日のコロナ感染の拡大に歯止めのかからない大阪府が根を上げ、4月20日、政府に緊急事態宣言の発令を要請したのです。飲食店に対しては3案(①全面休業、②土日祝日休業、平日午後8時まで、③酒類提供を自粛し、午後8時まで)を検討し、大型商業施設にも休業を求める方向で政府と協議すると書かれていました。

 吉村知事は、「人と人との接触をできるだけ減らすために必要な措置を取る」とし、デパート、テーマパーク、ショッピングセンター、映画館、地下街など大勢の人が集まる場所を閉鎖する必要があるというのです。

 大阪府では、すでに「まん延防止等重点措置」が実施されていますが、その効果が弱く、より強力な防止対策が必要だと判断したからだそうです。気になるのは、大阪に引き続き、東京都も要請の方向で準備に入り、兵庫県も最終調整を進めているということでした。

 コロナ感染騒動から1年以上経ちました。政府をはじめ各自治体には、感染に関するさまざまなデータが集積しているはずです。ところが、いまなお、感染者数だけを根拠に、人の流れを止める方向でしか対策が練られていないように見えます。それが不思議ですが、さらに、多くの人々がそれに同意し、異を唱えないのが不可解です。

 そもそも、なぜ、大阪で突出して感染者数が多いのでしょうか。

 そのことの解明もないまま、徒に人の流れを止めても、それほど効果は期待できないのではないかという気がします。感染者はどういう経路で感染したのか、どういう行動をしたから感染したのか、といったような感染のメカニズムを明らかにし、その結果に基づき、人の流れを規制するというのが筋ではないかと思うのです。

 人が密集している場所といえば、満員電車、パチンコ店などが思い浮かびますが、果たして、そこから感染者が出たのでしょうか。

 私が知っているかぎりでいえば、カラオケ、ジム、居酒屋等の飲食店です。対面で長時間、マスクを外して、人と人がコミュニケーションを交わす場所で感染者が多数、出ています。つまり、人と人が密集し、滞留時間が長く、対面でマスクを外して接触するという条件が重なった場所で、感染が起きているのです。

 感染者が急増しているからといって、闇雲に人の流れを止めて解決するものではないと思うのは、その点なのです。

 感染経路や感染メカニズムを踏まえ、人の流れに関するデータを考え合わせて、対策を練らなければ、有効な結果が得られないのではないかという気がしてなりません。

 むしろ、人の流れを止め、経済活動を滞らせることによって、自殺に追い込まれる人が増えるのではないかと心配です。

 過去一年間のコロナ禍で、飲食、アパレル、サービス関係の仕事をしている人々の多くが職を失い、生活に苦しんだあげく、中には命を絶ってしまった人もいました。

 職を失い、生活費が尽きたところで、死を選択せざるを得なくなった人が多いとすれば、産業をつぶすようなことはしてはならず、感染防止策と併せて、生活をしのぐための経済支援をする必要があるでしょう。

 実際、昨年の自殺者数はリーマン・ショック以来の多さでした。

■新型コロナ死者数よりも多かった自殺者数
 警視庁と厚生労働省は2021年1月22日、2020年の自殺者数は前年比750人増(3.7%増)の2万919人だったと発表しました。これまで10年連続で減少していたのに、リーマン・ショック直後の2009年以降、11年ぶりに自殺者が増加したといいます。


(日経新聞2021年1月22日より)

 このグラフを見ると、2月から3月にかけて上がり、一旦下がって、6月から上がり始め、10月でピークになり、減少に転じています。国民全員に一時金が配布され、事業者への支援金が支給されたせいか、生活費が尽き、命を絶つ決意をするまで、多少、引き延ばされたのかもしれません。

 興味深いのは、男性は11年連続で減少しているのに対し、女性は2年ぶりに増加したということです。人口10万人当たりの自殺者数は0.8人増えて、16.6人でした。さらに、年齢別でみると、数として最も多いのは40代ですが、増減率でみると、20代が17%増(329人増)と最も高かったそうです。コロナ禍で倒産に追い込まれたのは飲食、アパレル、旅行などの業界でしたが、いずれも若い女性が多く働いている職場です。

 一方、厚生労働省は2021年2月22日、人口動態速報を発表しました。それによると、2020年の死者数は138万4544人で、前年に比べ、9373人も減少していました。


(2021年2月22日、日経新聞より)

 死因別にみると、大きく減少しているのが、呼吸器系疾患の肺炎でした。やはり呼吸器系疾患のインフルエンザも4番目に大きく減少しています。反対に、増えているのが、老衰、新型コロナ、がんという順でした。

 三蜜を避け、マスクを着用するといった新型コロナに対する防止策が、他の呼吸器系疾患の発生を抑制していたと考えられます。新型コロナによる死者数は約3500人でしたが、呼吸器系疾患による死者数はなんと約1万6000人も減少したというのです。

 コロナ禍にあえいだ2020年、世界各国で死者数は増えました。ところが、日本では減少しており、コロナ感染者数も人口規模からいえば、驚異的に少ないのです。

 なぜ、日本で感染者数、死者数が少ないのでしょうか。そのことに着目し、様々な角度から分析して感染対策を練り上げるという発想も必要でしょう。せっかく世界に稀なデータを持ちながら、日本政府はなぜ、欧米と同様、三蜜回避、人の流れを止めるという対策しか思いつかないのでしょうか。

 米テレビのCBS NEWSは、日本の自殺者がピークに達した2020年10月、次のような報道をしています。

こちら →
https://news.yahoo.co.jp/articles/468823530bb795058b5d12e78a29eb6889f409c1?page=1

(source: https://www.cbsnews.com/news/japan-suicide-coronavirus-more-japanese-suicides-in-october-than-total-covid-deaths/)

 このニュースばかりではなく、Bloombergニュースでも、日本ではコロナ禍によりメンタルヘルスに問題が生じ、自殺が増えたと解釈されています。そのようなケースもあるでしょうが、20代女性の場合、コロナ禍で職を失い、生活費を捻出できなくて自殺に追いやられたケースが多いのではないかと思われます。

 それだけに、感染者数が増えたからといって、安直に人の流れを止める方向に舵を切るのはどうかと思います。過去一年の不幸なデータを踏まえれば、できるだけ産業を潰さないような形で、感染を防ぐ方法を考える必要があると思うのです。

 感染対策として、もちろん、ワクチン接種も必要です。ところが、治験が十分でないワクチンを投与された結果、さまざまな副反応が報告されています。

■ワクチン接種
 朝読んだ記事には、感染対策として、「封じ込めのカギを握るのはワクチン接種だ。変異型の感染力が高くても人の免疫力が高まれば発症を抑えられる。海外では接種が先行している国で感染の拡大を押さえられている例がある」と書かれていました。

 感染対策の一環として、すでに高齢者や医療従事者を中心に、ワクチン接種は始まっています。

 ところが、2021年4月8日、アストラゼネカとオックスフォード大学が共同開発したワクチンで19人が死亡し、100万人に約4人の割合で血栓を発症するリスクがあると発表されました。

こちら → https://www.jiji.com/jc/article?k=2021040701380&g=int

 英政府は30歳未満には別のワクチンを投与するとし、18歳未満を対象にした治験を一時中止しました。一方、同記事には、WHOの諮問委員会がアストラゼネカのワクチンと血栓との因果関係について、「確証はない」と強調したことも記されていました。製薬会社に配慮したのかもしれません。

 薬害エイズ、子宮頸がんワクチンをはじめ、数多くの薬害を経験してきた日本では、ワクチン投与に関し、慎重で臨んでほしいと思います。英政府のように、リスクがあると判断すれば、自国が開発したワクチンでも即刻、使用をやめ、治験を中止するといった英断が必要でしょう。
 
 また、2021年4月14日には、ワクチンを投与された後、死亡した女性が報道されていました。

こちら → https://www.yomiuri.co.jp/national/20210414-OYT1T50205/

 医療従事者だから、この女性は早期にワクチンを投与されたのでしょう。基礎疾患はなく、副反応を疑う症状もないまま、接種後、10日ほどで亡くなっています。死因は脳内出血だったといいます。

 やはり、ワクチンを2回接種した女性の医療従事者が感染したことが報告されています。

こちら → https://www.yomiuri.co.jp/national/20210412-OYT1T50018/

 これについて、厚生労働省担当者が、「ワクチンを接種して感染リスクを低くすることができるが、ゼロにできるわけではない」と述べたことが記されています。

 さらに、次のような報道もありました。

 2021年4月14日21時04分の『Newsweek』日本版によると、人口の4割がワクチン接種を済ませているにもかかわらず、ミシガン州で爆発的に感染者が増えているというのです。

こちら → https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/04/post-96075.php

 感染力の強い英国型変異ウイルスN501Yが、その原因だといいます。

 しかも、このウイルスに感染すると、死亡率も高いという報告もあります。

こちら → https://www.tokyo-np.co.jp/article/98385

 英エセスター大学が3月に発表した報告によると、変異型と従来型の感染者、それぞれ約5万5000人について調べたところ、死者は変異型が227人、従来型が141人だったということです。その一方で、ロンドン大学はこれとは違う結果を発表しており、治験が十分でないまま投与されているワクチンの現状が示されています。

■日本型対策は考えられないのか?
 日本の場合、感染者数は圧倒的に少なく、死者も少ないといわれています。なぜそうなのかということを明らかにすれば、そこからヒントを得て、有効な感染対策を立てることもできるのではないでしょうか。

 過去一年のコロナ経験を振り返ってみれば、日本の場合、世界各国に比べれば、感染者数は少なく、死者数も少ないことが判明しました。

 コロナ禍で各国では死者数が増えていたというのに、日本だけが減少していたのです。しかも、大幅に減少したのが呼吸器系疾患による死でした。明らかに新型コロナへの感染対策が他の呼吸器疾患に効いていたのです。

 第4波が到来した現在、感染者の大半は英国型変異株によるものだといわれています。しかも、こちらは感染力が強く、重症化しやすいとも報道されています。ですから、2020年の従来株に有効であったものが、この変異株にも効くかどうかはわかりません。

 ただ、未知のウイルスに対し、日本人はかなり抵抗力を持っていました。問題は、その従来株から派生した変異株にも有効なのかどうかです。

 それを把握するには、なによりもまず、今回、なぜ、大阪で感染者が激増しているのか、感染者の特性、感染経路などを明らかにする必要があります。そうした上で、従来株と比較し、英国型の変異株に対する対策を練り上げるのを優先すべきだと思うのですが・・・。

 ところが、長崎大学は興味深い研究成果を発表しています。「5-ALA」と呼ばれるアミノ酸が新型コロナウイルスの治療薬として期待できるというのです。

こちら → https://www.nagasaki-u.ac.jp/ja/about/info/science/science225.html

 長崎大学では、試験管で培養したコロナウイルスに「5-ALA」を投与すると、増殖が抑制されることを確認しました。この方法は、すでにサプリメントとして使われているので、安全性が高く、安定的に、適切な価格で供給することができるメリットがあるといいます。すでに使われているサプリメントを利用するので、室温での安定性が高く、経口で投与できます。安全でしかも利用しやすいメリットがあるのです。

 まだ治験が十分ではなく、安全性が確認できていない現在のワクチンよりも、すでに安全が確認された薬剤を利用するメリットは、はるかに大きいといえるでしょう。

■八重桜、コロナ変異株に見る生存戦略
 ふと、先日、入間川で見た八重桜を思い出しました。スマホで撮影した写真を探していると、別の角度から写した写真が見つかりました。


(図をクリックすると、拡大します)

 手前に枯れた桜の木が見えます。その背後に無数の花を咲かせた八重桜の木が見えます。カンザンです。

 枯れる木と旺盛な生命力をみせつけている木が、ともに一枚の画面に写っています。どちらも桜木です。両方の桜木を見ているうちに、ふと、最近、猛威を振るい始めたコロナ変異株が重なって見えてきました。

 そして、最近、読んだ記事を思い出したのです。

こちら → http://jsv.umin.jp/news/news20210225.html

 2021年2月時点で、「高い感染効率やワクチン効果への影響が懸念されている変異株は、以下の3系統変異株である」とし、①英国型変異株、②南アフリカ型変異株、③ブラジル型変異株が挙げられています。

 ウイルスの特性として、「ウイルスの生存は宿主集団における効率的な増殖と伝播に依存する」とされています。そして、そのウイルス側の長期生存戦略は、「宿主免疫反応からの逃避」であり、その逃避法としてもっとも有効なのは「遺伝子変異」である、と書かれていました。

 ヒトから見れば、感染力が強くて重症化しやすい、やっかいな変異株です。ところが、ウイルスから見れば、必死の生存戦略の一環なのです。

 従来株よりも旺盛な感染力でヒトに脅威を与えている変異株を連想させたのが、入間川遊歩道で見かけた八重桜でした。

 カンザンというその八重桜は、実は、ヤマザクラの変異株でした。

 それが生命力旺盛に花を咲かせているのを見て、コロナ変異株を重ね合わせてしまったのです。桜もウイルスも変異することによって生き延びているのだとすれば、もはやこの勢いを止めることはできないでしょう。自然の営みの一環だからです。

 コロナ変異株も、いずれは、インフルエンザのように、ヒトがあまり気にしないで共存していかざるをえない呼吸系疾患の一つに位置づけられるようになるのでしょう。(2021/04/21 香取淳子)

« »